障害者グループホームは、障害を持つ方々が地域の中で自立した生活を送るための住宅です。土地活用といえばアパート・マンションを建てて運用する方法が知られていますが、障害者グループホームによる土地活用は、地域や社会に貢献しながら、収益性や運用の安定性が期待できる土地活用の方法といえます。
ここでは、障害者グループホームの特徴や、土地を活用する場合の手法のひとつ「建て貸し」のメリットについてご紹介しましょう。
障害者グループホームとは?
厚生労働省によれば、グループホームは「知的障害者や精神障害者、認知症高齢者などが専門スタッフの支援のもと集団で暮らす家のこと」と定義され、大きく下記の2つに分類されます。
<グループホームの2つの分類>
・知的障害者や精神障害者が自立して生活できるよう、支援スタッフがサポートする生活援助事業
・認知症高齢者などが症状の進行を緩和させるため、ヘルパーの助けを借りながら日常生活に近い形で集団生活を送る介護サービス
いずれも、生活に何らかの支援が必要な人をサポートするための福祉施設であり、そのうち、知的障害者や精神障害者の自立支援を行う福祉施設が、障害者グループホームです。開設・運営にあたっては、所定の申請を行って、グループホームがある所在地の都道府県知事の指定を受ける必要があります。
需要が増している障害者グループホーム
日本国内における障害者人口は、年々増加傾向で推移しています。国が区分する「身体障害」「知的障害」「精神障害」の3つの区分の障害者人口を2006年と2018年で比較すると、この12年間で、身体障害は約96万人、知的障害では約63.3万人、精神障害は約137.2万人も増えています。
■障害者人口(施設入所者や入院者を除く)の推移
身体障害児・者(在宅者) | 知的障害児・者(在宅者) | 精神障害者(外来) | |
2006年 | 332.7万人 | 32.9万人 | 223.9万人 |
2010年 | 332.7万人 | 41.9万人 | 290万人 |
2014年 | 386.4万人 | 62.2万人 | 287.8万人 |
2018年 | 428.7万人 | 96.2万人 | 361.1万人 |
※厚生労働省「平成30年版厚生労働白書」(2019年7月)
こうした社会背景から、国では「障害の有無にかかわらず、国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目指し、障害者の地域生活の支援を推進する」こととし、その一環として、障害者グループホームの整備を積極的に推し進めてきました。
その結果、障害者グループホームの利用者数は、下記のように年々増加しています。
■障害者グループホームの利用者数の推移
利用者数 | |
2010年 | 6万3,323人 |
2011年 | 7万1,866人 |
2012年 | 8万1,729人 |
2013年 | 8万8,897人 |
2014年 | 9万6,012人 |
2015年 | 10万2,288人 |
2016年 | 10万8,302人 |
2017年 | 11万4,822人 |
2018年 | 12万2,114人 |
※厚生労働省「共同生活援助に係る報酬・基準について」(2020年9月)
ただ、障害者人口の推移とグループホームの利用者数の推移を見てわかるように、障害者人口に対するグループホーム利用者数には大きな開きがあり、潜在的な需要に対して施設数が不足しているといえるでしょう。
例えば、岐阜地区のグループホームでは、入居率が約98%であるのに対して、入居希望者に対するグループホームの供給率は約3~5%と供給が追いついていません(株式会社タカオ独自調査)。
土地活用において、障害者グループホームの運営を選択することが社会貢献になる理由には、このような社会状況があります。
福祉施設として土地を活用する場合の3つの手法
続いては、障害者グループホームなど福祉施設の運営をして土地を活用するときに選択できる、「土地を貸す」「土地を売る」「土地に建物を建てて貸す」という、3つの手法を見ていきましょう。
土地を貸す
土地を貸す手法は、福祉施設の運営事業者などに対して、土地オーナーが所有している土地をそのまま貸しつけるというもの。土地を貸すだけなので、建物を建てる費用や管理・運営費などの費用はかかりません。対価として地代収入が得られ、土地を更地や空き地のままにしているのと比べて収支面でプラスにすることが可能です。
【関連記事】
土地を売る
土地を売る手法は、土地オーナーが所有している土地を、福祉施設の運営事業者などに売却して、その売却益を得るというものです。ほかの手法と比べて資産の現金化が早くできる可能性が高く、固定資産税や都市計画税などの税負担もなくなります。ただし、土地の売却後は継続的な収益を得ることはできません。
土地に建物を建てて貸す
土地に建物を建てて貸す手法は、土地オーナーが所有している土地にみずから福祉施設を建て、運営事業者などに一括借り上げしてもらって運用する手法です。
建物の建築費などの費用を負担する必要はありますが、収益性や運用の安定性に優れているとされ、地域に根づいた長期的な事業運営ができます。事業者は少ない自己資金で運営を開始でき、土地オーナーは安定した土地活用が期待できるでしょう。
障害者グループホームで土地活用をするなら、建て貸しがおすすめの理由
土地活用方法を障害者グループホームにするなら、土地に建物を建てて運営事業者に一括借り上げをしてもらう建て貸しがおすすめです。その理由として、主に下記のような点が挙げられます。
入居者が長期にわたって居住する傾向がある
障害者グループホームは、障害を持つ入居者が地域の中で暮らす生活の場なので、短期間で退去することはあまりないと考えられています。入居者が長く住むことを想定して、運営事業者が数十年単位で一括借り上げ契約をするのが一般的で、長期的に安定した収益が期待できるでしょう。
法律の整備や予算確保など国が積極的に推進している
障害者グループホームは、障害者総合支援法にもとづいて運営される障害福祉サービスのひとつです。法律の後押しもあり、その開設や運営には行政からの支援を受けることができます。
障害者グループホームをはじめとした障害福祉サービスには、国が積極的に予算を確保。障害福祉サービス関係予算額で見ると、2019年度予算案は1兆5,037億円で、10年前の2009年度予算5,989億円と比べて、約2.5倍に増加しています。
事業者は行政からの給付費や補助金をもとに運営できる
障害者グループホームを建て貸しで運営事業者に一括借り上げなどをしてもらう場合、気になるのはその事業者の収益性でしょう。その点、障害者グループホームは法律にもとづいた障害福祉サービスのため、運営収入源が安定しているといえます。
例えば、グループホームを利用する障害者の方は、必要に応じて相談や日常生活上の援助を受けますが、基本的に1割の本人負担を差し引いた金額が、代理受領方式により国民健康保険団体連合会(国保連)を経由して運営事業者に支払われる仕組みです。
このほか、自治体によっては、グループホームの新規整備や運営費補助のための事業があり、これらを活用して運営の安定化を図ることができます。
旗竿地などの変形地でも土地活用が可能
一般的に土地活用しやすい土地の形状は、「長方形の土地で短辺と長辺に極端な差がない土地」とされています。それ以外の三角形や五角形、旗竿地などの変形地の場合には、どのような土地活用をするのがいいのか悩んでいる土地オーナーも多いことでしょう。
その点、障害者グループホームであれば、地域で暮らす障害者の方々の暮らしの場であることが大切ですから、土地の形状が多少悪くてもあまり関係がありません。商業施設や駐車場、アパート・マンションと比べて、変形地の土地活用がしやすい活用方法です。
【関連記事】
障害者グループホームの建て貸しなら安定した収益性が期待できる
障害者グループホームを建てて貸す土地活用は、土地オーナーにとってもメリットがある土地活用の方法です。土地活用を検討しているなら、国の支援もあり、社会的な需要も高まっている今が好機といえるでしょう。
一方で、法律にもとづいた開設・運営が必要な福祉施設という側面から、適切な運営事業者に一括借り上げをしてもらい、収益性と社会貢献の両立が実現できるかも気になるところです。
株式会社タカオは、障害者グループホームによる土地活用のノウハウが豊富にあります。土地活用の無料相談を承っていますので、ぜひご相談ください。