高齢化や人口減少の影響で、適切に管理されていない空き地が急増し、社会問題化しています。登記簿などを確認しても所有者がすぐにわからない土地も多いため、近年では国や自治体も現状の改善に乗り出しました。
そこで今注目されているのが、空き地の有効活用です。今回は、空き地の活用事例をご紹介します。
空き地を放置するデメリットとは?
空き地が増えることによるデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。国土交通省は空き地の放置によって、下記の3つの不具合が発生すると指摘しています。
周辺の環境に悪影響を及ぼす
人の目が行き届かない空き地で、立ち入りを制限する柵がなかったり、雑草が茂っていて中が見えづらかったりすると、ゴミを不法投棄される可能性が高くなります。投棄された最初のゴミを放置すると、それが呼び水となり、次から次へと不法投棄が相次ぐことも。溜まったゴミが景観を乱すだけでなく、ゴミから害虫が発生するなどして、周辺環境へ悪影響を及ぼすことも懸念されます。
地域イメージや活力の低下
空き地が多い地域は閑散とするので、道行く人に寂しい印象を与えます。寂しい地域というイメージになると、さらに人が減る悪循環に陥り、賑わいが減ってコミュニティが維持できなくなり、地域全体の活力も減退していきます。また、夜間の不法侵入を招くなど、治安の悪化につながりやすいのも問題です。
放棄宅地になり、国土が荒廃する
放棄宅地とは、所有者の積極的な利用意欲や所有意欲が失われ、適切な手続きや管理がされないまま放置されている土地のこと。この状態が長く続くと、次第に所有者の特定が困難になり、誰も手をつけられないまま荒れていくしかありません。放棄宅地が増えると、国土全体の荒廃が加速してしまいます。
国や自治体が推進する空き地対策
近年の空き地急増問題を重く見た国土交通省は、個人に委ねるだけでは適正な管理や利用を促しにくいとして、空き地の新たな活用を促進するための枠組みを採用しました。その枠組みは、下記のとおりです。
<空き地の新たな活用を促進するための枠組み>
・空き地の管理・活用に関するビジョンを策定し、行政と民間が連携し合ってプラットフォームを作る
さまざまな空き地の活用事例
前項でご紹介した国土交通省の枠組みの推進後、各地の自治体ではさまざまな空き地の活用事例が誕生しました。国土交通省が公表した「空き地対策の推進について」(2017年11月)の中で紹介されている、先進的な成功事例を見てみましょう。
飲食店やコンテナなどの成功事例
北海道帯広市では、地元の商工会議所青年部をはじめとするメンバーが発起人となり、駐車場だった土地に水道やガス、電気などのインフラと厨房設備を整備して屋台村を展開。飲食店として許可を取得し、年間3億円超の売上を記録しました。
佐賀県佐賀市も、公民で構成される佐賀市街なか再生会議が主導し、借り上げた空き地や駐車場に中古コンテナを使った図書館や芝生広場を設置する社会実験を行いました。実験後は、地元サッカーチームの拠点として利用されています。
農地・農園の成功事例
都市農地の有効活用を行う株式会社マイファームは、耕作放棄地、休耕地、遊休農地などのオーナーに対して、土地を貸し農園や体験農園として活用することを提案。農業にふれてみたい、子供に植物の育成を経験させたいといったニーズに応える体験農園を、増やす活動をしています。
オープンスペースとしての成功事例
空き地を整備して、公園や遊び場などの憩いのスペースを造り、防災拠点としても活用する取り組みが増えています。
愛知県豊田市が公民一体となり、街中の広場の有効活用を推進する「あそべるとよたプロジェクト」はその代表例。使われていなかった公共空間を、人が集まる場所へと生まれ変わらせました。
空き地は放置せずに活用しよう
「空き地を相続したものの、遠方で管理が難しい」「年をとって、これまでのように管理ができない」といった事情で、放置されている空き地は少なくありません。しかし、空き地を放置しておくことは危険です。周辺に住む人に迷惑をかけたり、地域の環境を著しく悪化させたりと、さまざまなリスクがあることを認識しておくべきでしょう。
空き地にはさまざまな活用方法が存在します。場合によっては地域の活性化に貢献できるかもしれません。長期間にわたって放置して放棄宅地になる前に、ぜひ土地活用のプロに相談しましょう。