遊休地を相続したけれど、使い道がわからない。面倒なのにそのままになっているという人はいませんか?遊休地をそのままにしていると、ただ所有しているだけで税金が発生してしまいます。また、周辺地域の治安悪化や住民とのトラブルにもつながりかねません。
この記事では、遊休地の活用方法を決める上で大切なポイントや、遊休地活用のメリットとデメリット、タイプ別の遊休地活用方法とその選び方について紹介しています。
遊休地を活用する方法を知りたい、あるいは活用したいけれど何となくそのままになっている人に役立つのでぜひ参考にして下さい。
遊休地とは
利用されないままの状態にある土地のことを遊休地といいます。文字通り「遊ばせている土地」「休ませている」ことからこのように呼ばれています。
遊休地の活用を決める3つのポイント
遊休地の活用を決めるポイントを3つ紹介します。
土地の法規制
土地の所有者であれば、どんな建物を建てて良いわけではありません。例えば自宅のすぐ隣に大きな工場や商業施設があったら、非常に住みにくく感じるのではないでしょうか。
都市計画法※では、地域ごとに用途地域を決めることで住環境に配慮しつつ、商業、工業なども効率的な街づくりが行われるよう、地域ごとに活用できる用途を制限しています。
※都市計画法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的として必要事項を定めた法律のこと。
このように土地には、利用上の法規制があるので、考慮しながらご自身にあった遊休地の活用を検討する必要があります。
広さ
なぜ土地の広さが遊休地の活用に重要なのでしょうか。
例えば、有料老人ホームは、入居者1人あたりの床面積が13平米以上と定められています。そのため、遊休地を有料老人ホームとして利益を出すために、多くの入居者が住めるようにするには、広い面積の遊休地が必要になります。
このように遊休地の広さは、業態によっては収益性にも影響を与えうる重要な要素と言えます。
賃貸需要
広い土地があり、法規制を守った上で遊休地に建物を建設したとしても、賃貸需要がなければ運営が長続きしないので有効活用とは言えません。遊休地の活用を検討する際は、立地や地域特性を理解して、需要のある活用方法を選びましょう。
遊休地を活用するにあたってのメリット・デメリット
遊休地は実際のところ活用したほうがよいのでしょうか?遊休地を活用した場合のメリットと、活用しなかったときのデメリットを考えてみましょう。
メリット
遊休地を活用するメリットは以下の3点です。
活用の収益で税金の負担を軽減できる
遊休地を所有しているだけでも固定資産税はかかります。また、有効活用して収益を出すことで固定資産税の支払い分を補える可能性があります。活用方法次第では大きな収益を生むかもしれません。
周辺環境の治安向上と近隣住民との関係性向上にもつながる
遊休地を活用すると、周辺環境の悪化防止と、近隣住民からの関係性向上につながります。理由については、この後のデメリットの章で詳しく解説します。
地域貢献や社会貢献ができる
少子高齢化の影響により、高齢者施設の需要は慢性的に不足している状態です。また、待機児童の数から、保育園の不足もいまだ解消されているとは言えません。遊休地をこうした福祉施設や、保育園などに活用すると、こうした社会的問題を解決する一助になるでしょう。ひいては遊休地の活用によって、地域や社会に貢献することができます。
遊休地オーナーの社会的信用も高まるかもしれません。
デメリット
遊休地を活用しなかったときのデメリットは、次の3点が挙げられます。
管理が不十分だと近隣住民からクレームがくる
遊休地を放置しておくと、雑草などが全く手入れされずに土地が荒れてしまいます。また遊休地で管理されていない状態は、不法投棄を助長し、場合によってはホームレスの居場所になってしまうかもしれません。
そのため、遊休地を放置によって周辺環境の治安悪化を招き、周辺住民から直接、あるいは行政を通じてクレームを受ける可能性があります。
管理をするとコストがかかる
繰り返しになりますが、遊休地を持っているだけでも固定資産税の支払いが必要です。またクレームにならないよう、雑草の刈り取りや、不法投棄防止のための柵を購入するお金などもかかります。
遊休地を活用せずに放置しておくと、ただ固定資産税を払っているだけの土地にも関わらず、さらに維持管理費用を負担する形になってしまいます。
遊休地の固定資産税は住宅用の土地の6倍
遊休地は住居用の土地と比べると、固定資産税は6倍です。固定資産税が高い上に全く収益を生まない土地なので、できれば改善策を考えた方が賢明かもしれません。
遊休地の種類
土地には用途地域があることを冒頭に解説しましたが、遊休地を活かす前に、その土地がどういった目的で使える土地なのか知っておく費用があります。遊休地の種類を3つに大別し、それぞれ想定できる活用事例を見ていきましょう。
宅地の場合
宅地とは、現在建物が建っている、あるいは建物の敷地として利用できる土地のことです。アパートやマンションなどの住宅はもちろん、駐車場、病院、幼稚園、グループホーム、太陽光発電など幅広い用途に活用できます。
アパートやマンション、駐車場は立地や周辺環境の充実度が収益に影響しますが、病院やグループホームは、周囲の利便性よりも、利用者が落ち着いて過ごせるかどうかがポイントです。そのため、比較的田舎や、都市部や中心部から離れている場所、旗竿地などの変形地でも需要が見込める可能性があります。
農地の場合
農地は、農地をする以外の目的には利用できません。農地は「農業振興地域の整備に関する法律」(農地法)に基づき、他の用途への転用が禁止されている「農業用地域」や、場合によって許可・不許可が決まっている「農業白地地域」と「農業振興地域外」に分けられます。
生産性の高い優良な農地は農地法によって転用が禁止されています。しかし、市街地にある農地など、生産性の低い農地なら、都道府県知事か、農林水産大臣が指定する市区町村の長に届け出をして許可を受けることで転用が可能です。
なお、4haを超える土地は農林水産大臣と協議が必要になります。また、市街地区域内の農地は、各地の市区町村に設置された、農業委員会(ない場合は市区町村の長)へ届け出を提出することで転用が可能です。
農地だった遊休地は、近隣の農家に貸し出す、あるいは一般から利用者を募って市民農園として貸し出すなどの方法で、農地転用以外にも活用できます。
商業地・工業地の場合
商業地は店舗や事務所などの商業活動を目的として、工業地は工場での生産活動を目的として使用できる土地です。住宅は建てられないので、以下のような活用方法を検討しましょう。
● 遊興施設
● ショッピングモール
● オフィスビル
● 飲食店
● ホテル
● 倉庫
遊休地の活用法
タイプ別におすすめの遊休地活用事例を紹介します。
初心者向けの活用方法
初心者向けの遊休地活用方法は以下の4つです。
● 月極駐車場
● デイサービス
● 事業用定期借地
● トランクルーム
月極駐車場
遊休地を月極駐車場として貸し出す活用方法です。遊休地に砂利を敷き詰めたり、アスファルトを敷き詰めて、ロープで区画を整備するなど簡易的な方法でもスタートできます。ある程度のスペースがあれば狭小地や不整形地でも活用できる上、失敗しても容易に更地に戻せます。
ただし、収益性はアパートやマンションよりも低く、賃料の回収や、駐車場内でのトラブル対応などの手間がかかります。なお、管理は管理業者に依頼することも可能です。
デイサービス
デイサービスとは、日帰りの通所介護施設のことを言います。主に在宅介護を受けている要介護者を対象に、日帰りで介護サービスを提供する施設です。老人ホームのように広いスペースは必要ないケースが多く、戸建て程度のスペースでも運営できます。
事業用定期借地
コンビニや飲食店などの事業の用途のみに限定して土地を貸し出し、収益を得る方法です。土地を貸し出すだけなので、比較的低リスクで安定した賃料が得られます。契約期間は10年以上50年未満で、契約期間満了後は、更地で土地が返還されます。
トランクルーム
コンテナのような収容スペースを貸し出して賃料を得る方法です。比較的少ない初期投資で始めることができる上、不整形地や狭小地も活用できます。家に荷物が収まらない人や、企業用の備品スペース、バイク置き場など、幅広い需要が期待できます。
一方、収益性は低い傾向がある他、収納物の盗難や、災害リスクなども考慮しておく必要があります。
初期投資が少額な活用方法
初期投資が少額な活用方法は主に以下の3つです。
● コインパーキング
● 貸し農園
● 資材置き場
コインパーキング
月極ではなく、時間貸しの駐車場のことです。自身で設備を設置する方法と、土地を事業者に貸し出して、賃料のみを得る方法があります。ここでは、事業者に貸し出す方法をおすすめします。
事業者に貸し出すため、管理をする手間もない上、稼働率に関わらず安定した賃料を得られます。しかし需要は立地に依存するところが大きいので、活用できる遊休地は限定的かもしれません。
貸し農園
原則、農地は農業以外に活用できませんが、本人が農業をせず、貸し出すことは可能です。土地を細かく区切って、月額制で農園を貸し出す方法や、子どもなどを対象に農業体験を提供して、入園料や体験料を得る方法があります。
少ない初期投資で始められますが、貸し出すにしても、農業体験を提供するにしても、維持管理が必要です。
資材置き場
工事業者などに一時的に土地を貸し出す方法です。更地の状態で貸し出すので、管理コストがかからず、契約期間終了後に建物の買い取りや、撤去費用が発生することもありません。
工事業者の側に遊休地があり、工事業者の日頃の収納スペースとして採用されれば、安定した収入が得られるでしょう。
ただし、得られる賃料は少ない傾向があります。
収益性の高い活用方法5選
● 賃貸住宅
● 店舗
● オフィスビル
● シェアハウス
● ホテル一棟貸し
賃貸住宅
マンションやアパートを建設して、入居者に貸し出して家賃収入を得る方法です。遊休地の面積が狭くても、複数階の建物を建設して、多くの部屋を貸し出せるので高い収益性が期待できます。
ただし、建設コストが高額で維持費もかかる上、入居者が減少すると赤字経営になるリスクがあります。賃貸住宅は遊休地が駅や商業施設の側にあるなど、好立地にある人に向いている活用方法です。
店舗
居酒屋や喫茶店などを自身で営んだり、飲食店やコンビニフランチャイズとして経営したりする活用方法です。店舗の売上から経費を差し引いた分が利益になるため、大きな利益が期待できます。
しかし、一人でこうした店舗を維持することは難しく、人件費が発生する他、食材や材料などの仕入れコストがかかるなど、リスクも高い活用方法です。
オフィスビル
オフィス向けのビルを建設して、事業者に貸し出す活用方法です。賃貸住宅よりも高い賃料が設定できるうえ、一度入居すると、賃貸住宅よりも入居期間が長い傾向があります。
しかし初期投資が高額な上、オフィスとして需要が高いのは、ターミナル駅の周辺や商業エリアなど立地が極めて限られています。
シェアハウス
シェアハウスとは住宅を複数人でシェアする賃貸住宅のことを言います。一つの建物の中で、居住空間は個室となっていますが、リビングやキッチン、トイレなどは共同で利用する、近年急速に普及している居住形態です。
一つの物件を分割して入居者に貸し出すので、トータルとして高い賃料が期待できるでしょう。また、ひとつの物件を分割して使用しているので、一人が退去しても他の家賃収入でカバーできるというメリットがあります。
一方、入居者同士の相性が悪いとトラブルが多発する、共同で生活することを希望する入居者は稀で、入居付けが難しいなどのデメリットがあります。
ホテル一棟貸し
遊休地にホテルを建設して、一棟まるごと事業者に貸し出す活用方法です。観光地やターミナル駅周辺、出張の多いビジネス街に遊休地がある場合は需要も多く、撤退リスクは少ないでしょう。
大きな初期投資が必要なので、ホテル運営を始めるに先立って、入念な市場調査をしておくべきでしょう。
その他の活用方法2選
ここで紹介したいずれのタイプにも当てはまらない遊休地の活用方法を2つ紹介します。
● 等価交換
● 土地信託
等価交換
等価交換はまず、遊休地所有者は土地を提供し、開発者(デベロッパー)は建設した建物、あるいは建物の建設費用を出資します。そして、完成した敷地と建物に対して出資した比率に応じた所有権を持つ方法です。
単純に土地を貸して賃料を得る方法とは異なり、事業の収益のうち出資比率に応じた賃料を得ることができます。また、遊休地の用途はデベロッパーにお任せできることもメリットと言えるでしょう。
しかし、遊休地の権利を一部手放すことになる、活用方法を自身の意思だけで決められなくなるといったデメリットもあります。
土地信託
信託会社に遊休地を信託(預けること)して、運用益を得る活用方法です。等価交換と異なり土地の所有権を失うことがない上、初期費用や手間がかかりません。
信託会社が土地に建物を建設すれば、固定資産税が下がる可能性があります。ただし、建物を建設した場合、建物の固定資産税は土地の持ち主が負担することになります。
まとめ
遊休地を放置しておくと、近隣の治安を悪化させ、住民とのトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。その一方で遊休地の活用方法次第では、固定資産税を安くできるかもしれません。さらに遊休地の活用によって、固定資産税の負担を補うこともできる他、大きな収益を得ることも可能です。
しかし遊休地の有効な活用方法の選択肢は、土地の法規制や広さ、賃貸需要などに左右されます。遊休地の有効活用で失敗しないために、賢く遊休地の運用する方法を専門家に相談してみましょう。