土地活用の方法として人気がある「コンビニ経営」を考えている人は多いかもしれません。土地活用としてコンビニ経営をする方法としては、リースバック方式と事業用定期借地方式の2種類があり、いずれも初期投資が少なくて済むというメリットがあります。
しかし、アパートやマンションと比較して、節税効果が少ない、経営がうまくいかず撤退するといったリスクも考えられます。
この記事は、土地活用方法として、コンビニ経営を検討している人や何か有効な土地活用方法を探している人向けに、コンビニ経営に適した土地の要件やコンビニ経営のメリット・デメリット、注意点について解説しています。
コンビニ経営の現状
土地活用方法としてコンビニ経営を考えるうえで、まずはコンビニ経営の現状について確認しておきましょう。
一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の統計によると、コンビニエンスストアの売上高は、2020年度は新型コロナウイルスの影響で前年比を割り込んだものの、おおむね堅調に伸び続けています。
出典:一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会 コンビニエンスストア統計調査年間集計(2021年1月から12月)
一方、コンビニの店舗数については、新型コロナウイルスの影響の大きかった2020年も減少は見られません。2021年に若干、店舗数の減少が生じていますが、2021年に売上高が回復していることから、コンビニ市場自体は堅調と考えられます。
出典:経済産業省 商業動態統計 コンビニエンスストア商品別販売額等及び前年(度、同期、同月)
コンビニ経営の方法
コンビニとして土地活用をする方法には、リースバック方式と事業用定期借地方式の2種類があります。それぞれの土地活用方法の概要、およびメリットとデメリットを紹介します。
リースバック方式
コンビニで土地活用をする場合のリースバック方式とは、土地と建物をコンビニ業者に貸し付ける方式です。リースバック方式の流れは次の通りです。
1. コンビ二事業者が建設協力金を差し入れる
2. オーナー名義で店舗や駐車場を建設
3. オーナーとコンビニ業者で賃貸借契約を締結
4. コンビニ業者は賃料から、オーナーに差し入れた建設協力金を返済
5. 賃料からオーナーに差し入れた建設協力金を引いて、残った金額がオーナー収入となる
リースバック方式のメリット
土地活用を希望するオーナーは建設協力金があるため、コンビニや駐車場を建設する際の初期費用を用意する必要がありません。また建設協力金は、金利が低いか、金利がないケースもあります。
またコンビニ業者に土地を貸し出すと、その土地は「貸家建付地」として相続税評価額が下がるため、リースバック方式は相続対策にもなります。
リースバック方式のデメリット
コンビニ業者の経営状況によっては、賃料が下がる可能性があります。また建設した建物もオーナー名義であることから、土地と建物両方の固定資産税が発生します。
事業定期借地方式
事業定期借地方式は土地活用をしたいオーナーが、事業用定期借地権を利用して土地だけをコンビニ業者に貸し出す方式です。
【事業用定期借地権の概要】
● 建物の目的は事業用に限る
● 契約期間は10年以上か50年未満
● 契約の更新はない
● 必ず公正証書で契約
● 契約終了後は更地で変換する
事業用定期借地方式のメリット
オーナーは土地活用をしたい土地を貸し出すだけで、店舗の建設などはコンビニ業者が行なうので、初期費用なし、かつ低リスクで安定した賃料が受け取れます。その他、貸宅地として土地評価額の減額を受けられる、変換時は更地で変換されるなどのメリットがあります。
事業用定期借地方式のデメリット
事業用定期借地方式は、リースバック方式に比べて賃料が少ない傾向があります。また事業用定期借地方式で貸し出している土地は、貸家建付地ではなく貸宅地として評価されるため、リースバック方式ほどの節税効果が得られません。
コンビニ経営に適した土地とは?
コンビニ経営に向いている土地は、人通りが多い、またはロードサイドなど車で来店しやすい場所にある土地です。具体的にどのような場所なのか、詳しく見ていきましょう。
人通りが多い
以下のような人通りが多い地域にある土地は集客が見込めるため、コンビニ経営で成功する可能性は高いでしょう。
● 駅やバス停付近
● 学校の近く
● オフィス街
● ビジネスホテル周辺
● 繁華街付近
車で来店しやすい土地(ロードサイドなど)
郊外型のコンビニは、車での来店のしやすさがポイントになります。1,000~2,000㎡程度の広い土地があると、買い物を気軽に済ませたい人や、長距離で休憩をしたいトラックドライバーなど多くの需要を取り込むことができるでしょう。
また隣接する道路の状況も郊外型のコンビニで重要な要素です。
● 土地が交通量が多いロードサイド沿いにある
● 中央分離帯がない
● 四方から出入りできる
● 渋滞が少ない
● アウトカーブの先にある土地
コンビニ経営におけるメリット・デメリット
土地活用の方法としてコンビニ経営をするメリット・デメリットについて解説します。
メリット
コンビニ経営は、マンションやアパートよりも賃料が高い傾向があり、管理も容易というメリットがあります。メリットについてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
収益性が高い
経営状況次第ですがコンビニは家賃負担力が高いため、同じ面積ならアパートやマンションの1.5倍~2倍の収益を目指せる可能性もあります。
また郊外にある土地でも、面積や立地次第では収益性の高いコンビニ経営ができるでしょう。
初期費用が少ない
コンビニとして土地活用をする場合、事業用定期借地方式なら土地を貸すだけなので、初期費用は坪単価1.5万円~2万円程度の土地整備費程度で済みます。
またリースバック方式を利用するにしても、建設協力金をコンビニから受け取れるので、大きな負担にはならないでしょう。
管理が容易
土地活用としてのコンビニ経営は土地を貸すだけなので管理が容易です。仮に店舗の修繕が必要になったとしても、コンビニ業者が対応するため、コンビニ業者が撤退しない限りオーナーが管理することはほとんどありません。
デメリット
コンビニ経営のデメリットについても確認しておきましょう。
節税効果は期待できない
コンビニ経営は相続税対策として考えれば、アパート・マンションなどの住居に活用した場合とほぼ同様の効果があります。しかし固定資産税や不動産取得税の税制優遇という点では、住居ほどの節税効果はありません。
節税効果だけを考えれば、コンビニよりも、アパートやマンションとして土地活用をした方が有利になる可能性があります。
撤退リスクがある
撤退リスクとは競合店に客を奪われた結果、経営が成り立たなくなり、コンビニ経営から撤退を余儀なくされるリスクです。
コンビニ経営に適した立地があることから、後発で近隣に競合店が誕生する可能性は十分考えられます。コンビ二は差別化が難しい業態なので、競合が道路の向かい側にできただけでも、顧客が流れて言ってしまう可能性があります。
しかしアパートやマンションといった居住用として土地活用をしていれば、競合する物件が近くにできたとしても、すぐに入居者が退去して競合の物件に移るということはありません。
契約条件変更のリスクがある
コンビニの経営状況によっては、賃料減額など契約条件の変更を求められるリスクがあります。一棟貸しをしているような場合は、撤退されると家賃収入がゼロになるため、家賃減額を求められたら応じざるを得ないケースもあるでしょう。
コンビニ経営する前に知っておきたい注意点
土地活用としてコンビニ経営を始める前に、押さえておきたい注意点は以下の3点です。
● 競合が同エリア内にどれくらいにいるか
● 提携先のコンビニにブランド力があるか
● 建設協力金を活用した場合、課税される利益がある
それぞれ詳しく解説していきます。
競合が同エリア内にどれくらいにいるか
コンビニとして出店を計画している土地に、競合がある場合は、その立地や集客、導線、競合店までの距離なども確認しておきましょう。
競合店の商圏から離れているエリアであったり、自分が出店を予定している土地の方が利便性が高ければ出店しても集客は見込めるでしょう。
提携先のコンビニにブランド力があるか
日本国内のコンビニ店舗数の約90%がセブンイレブン、ローソン、ファミリーマートが占めており、この3社以外のコンビニと提携すると集客が見込めない可能性があります。基本的には大手コンビニ3社の中で家賃や契約期間がもっとも合う業者と契約すると良いでしょう。
建設協力金を活用した場合、課税される利益がある
リースバック方式で土地オーナーが建設協力金を受け取っていて、コンビニ業者が建設協力金の債務放棄をした場合、建設協力金(保証金)は利益とみなされて課税される場合があります。
経営不振などの理由により、コンビニ業者が撤退する店舗と債務が残ります。そうならないように、返済期間中に撤退時したときは建設協力金を放棄するという内容で契約することが可能です。
しかし実際にコンビニ業者が撤退して、オーナーが建設協力金(保証金)返済の免除を受けると、将来にわたる債務が免除されたことに伴う利益とみなされ、債務免除益として課税されてしまいます。
また債務免除益は、コンビニ業者が撤退した時点で発生するので、税負担が大きくなる傾向があります。
まとめ
コンビニで土地活用をする方法としては、リースバック方式と事業用定期借地方式の2種類があり、いずれも比較的少ない初期投資で始められます。
アパートやマンションよりも賃料相場は高い傾向がありますが、節税効果は住宅として利用するケースが低く、撤退リスクなどのデメリットもあります。コンビニ経営を始める際は、活用したい土地の立地や、提携するブランド、契約内容なども慎重に確認しましょう。