介護施設を経営するうえで、どのくらいの収益を得られるのか、どんなメリット・デメリットがあるのかイメージしづらい人もいるでしょう。
介護施設を経営しても、正しい知識が無ければ収益は得られません。この記事では、介護施設の経営を検討している方へ、収益の概要や経営するうえでのメリットデメリットを解説していきます。
この記事で、介護施設を経営した際の収益のイメージ、開業から経営までの手順やポイントを掴めるので、最適な施設経営を始められるでしょう。
介護施設経営はどのくらい儲かるのか
介護施設を経営するうえでの収入、支出をまとめました。また、経営した際の年収モデルの例を記載しているのでぜひ参考にしてみて下さい。
介護施設の収入
介護施設での収入は以下のような項目があります。
収入項目 | 目安金額 |
一時入居金 | 0~数千万円 |
家賃 | 5~30万円 |
食費 | 4~10万円 |
管理費 | 3~20万円 |
介護報酬 | ※介護保険収入がある場合 |
他サービス費 | ※介護保険外のサービスを行う場合 |
上記の一時入居金は、老人ホームへ入居する際に入居者から支払われる入居時の収入です。一時入居金の金額設定は施設によってさまざまですが、多いところでは数千万円となるので大きな収入源となるでしょう。その他の家賃や食費は介護施設の月額利用料として支払われる毎月の収入です。
介護施設の支出
一方で、介護施設を運営する際の主な支出は以下の項目です。
- 家賃(地主から建物を賃貸している場合)
- 人件費
- 備品、設備費
- 求人費
経営を維持していくためには人件費や施設維持費等を含めた管理費が発生します。また、職員の人手不足が生じている場合は、求人にかける費用も逃れられません。十分な従業員を抱えることは、求人費の削減にも繋がるのです。
介護施設経営者の年収例
老人ホームを経営した際の例を以下の条件でシミュレーションしていきます。
- 入居者:50人
- 月額利用料:20万円
- 一時入居金::0円
- 管理費用:1ヶ月の収入の20%
1ヶ月の収入は入居者×月額利用料となります。また、今回は一時入居金は0円と想定して行います。
1ヶ月あたりの収入は50人×20万円=1000万円 となり、管理費は収入の約20%と考えるので、1000万円×0.2=200万円 が管理費です。したがって収入の1000万円から200万円を差し引いた800万円が手取りとなり、ここへ介護報酬やサービス料が追加されるので、更に増収となります。
介護業界の経営状況
現在の介護業界の経営状況について解説していきます。
倒産件数は増加
現在、介護業界では倒産企業が増加しています。老人福祉・介護事業において2022年には倒産件数が143件となりました。この倒産件数は前年比76%増加しており、過去最多です。
出典:株式会社東京商工リサーチ
少子高齢化社会に伴って需要が増加していると見られますが、入居者の獲得競争が激化することによる倒産企業は増加しているのが現状です。
人手不足の深刻化
介護業界の企業倒産が増加した要因のひとつに人手不足が大きな問題とされています。介護業務の給与水準が低いこと、業務内容がハードであることなどの理由から介護職を目指す人材が減少しています。また限られた介護人材の獲得競争も人手不足の要因と言えるのです。
介護施設経営のメリット
介護施設を経営していくうえでのメリットを収益面、今後の将来性などを含めて解説します。
収益が見込める
老人ホームの経営のメリットは大きな利益を生み出せることです。賃貸マンション経営と異なり、限度世帯数が多いことがあげられます。施設の利用者をより増やすことができれば利益の拡大が期待出来るでしょう。また、大きな土地を利用することができればより施設利用者を増やすことができ、収益に繋がります。
補助金の交付を受けることができる可能性がある
日本の少子高齢化社会が進むなかで、国としても施設の解説に助成金や補助金を交付する動きがあります。しかし、国の介護の指針と施設から在宅というなかで、全ての施設に適用されるわけではありません。適用されるのは在宅扱いとなるサービス付き高齢者住宅となります。
将来的な需要が見込める
日本は現在少子高齢化がますます進み、今後高齢者の介護需要は増える予想となっています。現状介護業界での課題も多々ありますが、需要がなくなる見込みは少なく将来性が期待できるでしょう。
介護施設経営のデメリット
介護施設を経営していくうえでのデメリットを3つ紹介します。経営に際して慎重に検討する部分なども参考にしてください。
まとまった初期投資が必要
介護施設を経営するにあたって、まとまった初期投資が必要となります。大きな土地が必要なため土地の購入、また施設の構造が特殊なため建築コストが高くなりがちです。初期投資が膨大なので投資費用の回収に時間がかかってしまい、その間に経営が失敗してしまった場合、大きな損失になるリスクがあることを認識しましょう。
転用が難しい
不動産運用にて経営する施設がうまくいかなくなった場合、他の方法にて転用する場合があります。しかしながら介護施設は、建物が通常と異なり別用途への転用が難しいのが現状です。他にも別の経営者に売却する方法がありますが、賃貸マンションほどの見込みは薄くなかなか買い手もいません。
人材確保が難しい
介護業界にて人材確保が困難になっていることは大きな問題となっています。介護業界が人材不足のため人材の競争率が激しい点や人材流出などでなかなか定着できないことがあります。
介護施設経営には「介護福祉経営士」の資格がおすすめ
介護施設経営において特定の資格や免許は必須ではありません。しかし、介護福祉経営士の資格を所持している経営者が多いことも事実です。この介護福祉経営士とは、介護施設を運営するうえで人材管理・育成、経営に必要な知識を得ることのできる資格となっています。
介護施設経営を始める流れ
介護施設の開業に際しての手順を解説していきます。
1.介護施設の種類を決める
介護施設を開業する際にまず、施設の種類を検討します。施設の種類は以下になります。
施設の種類種類 | 概要 |
在宅介護 | 利用者が可能な限り自宅にて自立生活が行えるように支援する。 |
老人ホーム | 介護レベルに関わらず高齢者を対象とした施設。介護付きや住宅型などいくつかの種類がある。 |
デイサービス | 利用者が施設へ通い、サービスを受ける。介護サポートを受けながらも他の高齢者との交流を行える。 |
訪問介護 | 利用者宅へ看護師やホームヘルパーが訪問し、医療介助やサービスを行う。 |
デイケア | 利用者がなるべく自宅で過ごせるように、生活に必要なリハビリテーションを行う。医師のほかにも理学療法士などがサービスを提供する。 |
グループホーム | 認知症の利用者を対象とした専門的なケアサービスを行う。 |
上記の介護施設の特徴を理解して、どのようなコンセプトにするのか検討しましょう。
2.法人を立てる
介護施設経営で事業を始める際、法人を設立させる必要があります。法人にも営利目的の株式会社や合同会社。ほかにも、非営利の形態となるNPOや一般社団法人があるため、自分に合った法人形態を見極めましょう。
3.土地を探す
介護施設を建設するうえで、土地選びもかかせません。施設利用者の獲得、雇用する従業員を考慮した立地を調査して探しましょう。立地が悪いことや駅から遠い場合は、雇用が難しいことも考えられます。
4.必要設備を揃える
開業する施設に必要な設備を揃えましょう。基本的な事務所や休憩スペース、相談室がありますが、施設の種類によって必要な設備も変わってきます。たとえばデイサービスの設備基準は、食事をする一人当たりの面積は3㎡以上となっています。開業する施設、設備基準を把握することが大切です。
5.人材を揃える
介護施設運営には以下の資格を取得している人材が必要となります。
資格の種類 | 業務概要 |
ケアマネージャー | 施設利用者やその家族と相談しながらケアプランを作成する。 |
サービス提供責任者 | ケアマネージャーが作成した計画を基に内容をより具体化させる。利用者やその家族に説明と共に同意を得る。 |
介護職員 | 高齢者や介護を必要とする人の食事や排せつ、身の回りを支援する。 |
生活相談員 | 施設利用者とその家族、ケアマネージャーとの連絡や調整窓口を行う。また、利用者の苦情等の相談窓口も行う。 |
介護福祉士 | 介護職分野における専門職であり、利用者の支援や介助までさまざまなサポートを行う。 |
ソーシャルワーカー | 精神的、身体的に障害を持つ利用者からの福祉に対する相談について助言を行う。 |
精神保健福祉士 | 精神的に障害を持つ利用者からの生活相談を受けたり社会支援を行ったりする。 |
6.申請を行う
介護事業を始めるに伴い、介護保険事業者として国から指定されなければなりません。この指定されることを指定申請と呼び、都道府県や市区町村へ事業者指定申請を行う必要があるのです。また、指定の基準には以下の3つがあります。
- 設備基準
- 運営基準
- 人員基準
上記の3つを満たさないと、指定が受けられない、指定が取り消しとなるのでしっかり確認しましょう。
介護施設経営を成功させるポイント
経営を成功させるポイントについて解説します。
労働環境を整える
労働環境を整えることは、施設経営の成功に重要なポイントとなります。介護業界では人材不足・流出が問題となり、人材確保・定着させるための環境整備は必須です。福利厚生の充実や賃金・業務のバランスの調整。他にも、社内コミュニケーションをこまめに取り信頼関係、社員の意見の抽出などさまざまな観点から社内整備をしていきましょう。
IT化による業務効率化
ITを導入し、業務の効率化を図る施設が増加しています。代表的な例の一つとして、見守りシステムがあります。見守りシステムは訪問せずとも、離床しているのか、睡眠しているのかなど利用者の様子を把握できるようになります。このシステムがあることで、業務負担が大きい夜間等の見回り回数の削減ができるのです。
人材育成の充実
人材育成を充実させるには、社内教育制度の見直しと優秀な人材の確保が必要になります。社内教育制度を見直し、研修やOJTを通して社員の技術力、モチベーションを向上させましょう。その結果施設のサービスが向上し、集客も増え利益の向上に繋がるはずです。
介護施設経営で新たな収入源を作ろう
介護施設経営は需要が今後も伸びていく事業となります。
課題等も多いですが、ポイントを理解しながら適切に解消していけばうまく軌道にのり、大きな収益を生み出せるでしょう。
介護施設の経営を始める際は、介護事業へのノウハウを持つプロへぜひご相談ください。