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地域密着型通所介護とは?経営のメリットデメリットや開業方法を解説

地域密着型通所介護とは?経営のメリットデメリットや開業方法を解説

老人ホームなど多岐にわたる種類の福祉施設があるなかで、利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した生活を送れるようになることを目的とした地域密着型通所介護。比較的規模が小さいため経営を始めやすい地域密着型通所介護ですが、ポイントを抑えないと赤字経営になりかねません。

この記事では、地域密着型通所介護を経営するうえでのメリット・デメリットや開業の流れについて解説します。

この記事を読めば地域密着型通所介護の特性を理解してうまく経営するためポイントを掴み、健全な施設経営が行えるでしょう。

地域密着型通所介護とは?

地域密着型通所介護物件イメージ

 地域密着型通所介護と他の福祉・介護サービスとの違いについて解説します。

業務とサービス内容

地域密着型通所介護は小規模デイサービスとも呼び、2016年に地域包括ケアサービスとして追加されました。

【地域密着型通所介護の業務内容】

  • 体操や機能訓練のサポート
  • 食事や入浴などの身体的介護
  • 利用者とのレクリエーションを実施
  • 連絡ノートや介護記録の作成
  • 施設内の清掃や環境整備
  • 利用者の送迎

上記が主な業務内容となりますが、施設によっては看護師が常駐し、服薬サポートや健康チェックも行います。

通所介護(デイサービス)との違い

地域密着型通所介護とデイサービスの基本業務に違いはありません。地域密着型通所介護とデイサービスの違いは主に以下の3つです。

利用者定員数

デイサービスの利用者の定員は19人以上に対して、地域密着型通所介護の利用者の定員数は18人以下

地域と管轄

・事業所が所在する地域に居住している人のみ利用できる

・デイサービスの管轄は都道府県だが、地域密着型通所介護は事業所が所在する市区町村の管轄

介護費用

地域密着型通所介護は少人数にて個別ケアを行うため、デイサービスに比べて費用がやや高くなる傾向

地域密着型通所介護の経営メリット

地域密着型通所介護のメリット

地域密着型通所介護のメリットを以下4つの項目にて解説します。

【地域密着型通所介護を経営するメリット】

  • 利用者の希望に柔軟なサービス提供
  • アットホームな雰囲気の施設
  • 低コストで開業ができる
  • 今後の需要が見込める

地域密着型通所介護のメリットを把握して経営に活かしましょう。

利用者の希望に柔軟なサービスを提供できる

地域密着型通所介護は小規模でサービスを行うため、利用者一人ひとりに寄り添うことができます。大規模な施設と異なり、利用者に適した柔軟なサービスが提供できます。

例えば、利用者の家族に急遽予定が入ったため利用予定外であってもサービスを提供することが可能です。また、利用者の家族の都合で帰宅時間が変更になった場合も延長してサービス提供することも考えられるでしょう。

アットホームな雰囲気の施設を作れる

地域密着型通所介護の事業所は、古民家や空き家を改装やリノベーションをしている施設もあります。大型の事業所とは違い、自宅にいるような雰囲気で運営することができるのです。アットホームな雰囲気は利用者と職員との距離も近く、丁寧な介護サービスを提供できます。

低コストで開業できる

施設の設備面積などは職員の人数によって決まります。地域密着型通所介護では少人数のため、施設コストを抑えることが可能です。また、人員規定が大規模な施設よりも少ないため、人件費を抑えられることも大きなメリットとなります。

今後の需要が見込める

厚生労働省の調査によると、地域密着型通所介護の受給者数は増加しており、平成20年が83万人だったのに対して平成31年には157万人となりました。

また、令和3年版高齢者白書より、現在日本の高齢者が占める割合は28.8%と公表されました。令和18年には33.3%、令和47年には38.4%となる見込みで、日本の少子高齢化社会は今後も進む傾向です。

地域密着型通所介護の経営デメリット

地域密着型通所介護の経営デメリット

地域密着通所介護経営のデメリットについて以下3つの項目にて解説します。

【地域密着型通所介護を経営するデメリット】

  • 計画をしっかり立てないと利益が出にくい
  • スタッフ育成に手が回りにくい
  • 収益が大きくなりにくい

リスクを把握して対策を練りながら開業を進めましょう。

計画をしっかり立てないと利益が出にくい

経営を行うにあたっては、人件費率や稼働率を正しく判断して経営戦略や計画をしっかり立てないとなかなか利益が出ません。地域密着型通所介護は介護保険のもとで行う事業なので、介護報酬の改定によっても収益に影響が出てしまいます。

スタッフ育成に手が回りにくい

地域密着型通所介護では少ない人数で多岐に渡る業務を行うため、介護スタッフ一人ひとりに求められるスキルは多くなります。しかし、人数が少ないために研修や教育へなかなか手が回せず教育が不十分になることも考えられるでしょう。

また、経営上欠員が出た場合に大きな損失になるため、社内での働きやすい環境も必須です。

収益が大きくなりにくい

地域密着型通所介護は施設の規模が小さく、開業費用を抑えられるメリットがある一方で、利用者数の上限は少ないため事業単体では収益に上限があります。令和3年度の「通所介護の経営状況について」によると、通所介護事業者は4割近くが赤字経営との報告がありました。

しかし近年では、事業所を古民家や空き家をリノベーションし、拠点として活用する事例が増えています。低コストで開業できる古民家や空き家を活用することで、運用費削減効果が期待できるのです。

地域密着型通所介護の開業の流れ

地域密着通所介護の開業の流れ

地域密着通所介護の開業の流れについて4つの手順を解説します。

【地域密着型通所介護の開業の流れ】

  1. 法人格の取得
  2. 必要な設備を揃える
  3. 必要な人員と資格を整える
  4. 市区町村に指定申請する

それぞれの手順をみていきましょう。

1.法人格の取得

事業を始める際は法人を設立させる必要があります。法人にも営利目的の株式会社や合同会社、非営利の形態となるNPOや一般社団法人があるため、自分に合った法人形態を見極めることが大切です。

2.必要な設備を揃える

開業に必要な設備は以下になります。

食堂及び訓練室

合計した面積が定員数x3㎡以上であること。

相談室

遮蔽物等の設置により、相談内容が外に漏れないように配慮されていること。主に新規利用者の対応や会議に使用される。

静養室

部屋の大きさに規定はないが、ベッドの設置や照明が調整できるなど、利用者が落ち着いて静かに過ごせる環境が必要。

事務室

面積や大きさに規定はないが、机・椅子・書庫・キャビネットは必須。

3.必要な人員と資格を整える

開業に必要な人員基準と資格は以下になります。

必要な人員

必要な資格

管理者

1名以上

必要資格は無し

生活相談員

1名以上

社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格が必要

介護職員

利用者数が15人以下の場合:1名以上

利用者数が16人以上の場合:利用者が1名増すごとに(利用者数-15名)÷5+1

必要資格は無し

看護職員

1名以上

看護師もしくは准看護師資格が必要

機能訓練指導員

1名以上

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師(もしくは准看護師)、柔道整復師、

はり・きゅう師のいずれかが必要

4.市区町村に指定申請する

地域密着型通所介護でのサービスを提供するにあたり、開業予定の市区町村より指定地域密着型サービス事業所としての指定を受ける必要があります。この指定を受けるための手続きを指定申請といいます。市区町村によって、内容が異なる場合があるので開業する市区町村の介護保険課のホームページを確認しましょう。

地域密着型通所介護は儲かるのか

地域密着型通所介護成長イメージ

厚生労働省の「令和4年介護事業経営概状調査結果」では、地域密着型通所介護の1ヵ月あたりの平均収入は約252万円と報告されていました。

介護事業者の主な収入は介護報酬であり、介護報酬は「単位数×単価」で求められます。

基本報酬は「サービスを受ける利用者の介護度」と「サービス提供時間」によって定められ、単価は地域区分によって定められているのです。単位数が415のサービスを単価が10.9円の地域で行った場合、基本報酬は「415×10.9=4,523円」となります。

地域密着型通所介護で赤字になる原因

赤字になる原因

地域密着型通所介護で赤字になってしまう原因を以下3つの項目で解説します。

【地域密着型通所介護の経営で赤字になる原因】

  • 稼働率が低い
  • 採用費がかかる
  • 業務効率化が進まない

赤字経営となる原因を事前に理解できれば、健全な経営を行うことが可能です。

稼働率が低い

稼働率とは、事業所が利用できる最大人数に対する利用割合を指します。1日の稼働率は、1日の利用者数÷1日の利用定員数で求められます。

例えば1日の利用定員数が15名のデイサービスにおいて、実際の1日の利用者数が10名であった場合、その日の稼働率は10÷15=約66%です。

利用者が少なかったり利用者が頻繁に休んだりすると稼働率が低くなり、事業所の売上が下がってしまいます。稼働率が低い状態が長期化することで、経営状況が赤字になってしまうのです。

採用費がかかる

介護業界では、人材不足や人材が定着しないことが問題となっています。地域密着型通所介護では職員数が小規模のため、離職が発生すると職員一人ひとりの負担が大きくなります。職員の補充をすべく採用活動をしても、職員が定着しないので、採用費用が大きく掛かってしまいます。

業務効率化が進まない

近年では業務効率化に向けて、ICTにてシステムの導入を行なう施設が増加しています。しかし、経営で赤字が続く施設ではシステム導入などのコストも厳しい現状です。その結果、効率化が進まず赤字が続くといった悪循環に陥ってしまいます。

地域密着型通所介護のデメリットを理解して方針を立てよう

デメリットを理解して方針を立てよう

地域密着型通所介護の特徴、メリット・デメリット、赤字になってしまう理由など、経営するうえでの注意点を解説してきました。

開業するためのコストも低く、他の介護事業に比べて初期費用を抑えられるので挑戦しやすい事業とみられます。しかし、デメリットも多く、ポイントを抑えないと赤字に傾きやすくなってしまいます。

地域密着型通所介護よりも高い収益性に着目し検討されたい方は、多くの介護事業のノウハウをもつプロへご相談ください。

 

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