土地活用で介護施設を検討している方の中には、建築費がいくらかかるのか把握できていない方も多いのではないでしょうか。
介護施設での土地活用で収益性を高めるためには、建築費を把握しておくことが必要です。
この記事では介護施設の建築費に関する基本知識や介護施設の種類、構造別のメリット・デメリット、業者選定のポイントなどをわかりやすく解説しています。
この記事を読めば、介護施設の建築にかかるコストや建築費を抑えるためのポイントがわかります。ぜひ最後までご覧いただき、建築費のコストについて理解を深めましょう。
介護施設の建築費に関する基本知識
建築費とは特定の建築工事における建設業者の工事原価のことで、建築コストとも呼ばれています。
建物を構成するためにはコンクリートや鉄骨、断熱材、電気設備、衛生設備などが必要です。また、建築現場での労働力にかかる費用も含まれ建築士や大工、電気工事士、設備工事士などの賃金や労働時間に関わる費用も含まれます。
介護施設の建築費とは
介護施設の建築費はさまざまな項目が存在するため、各項目の費用を積み上げて計算していくことが必要です。その中で工事費は大きく2つに分かれています。
2つの分類
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正しく建築費を把握するために、詳しく解説していきます。
直接工事費
直接工事費とは施工対象に直接かかる費用で材料費や労務費、機械費のことです。
項目 | 内訳 |
材料費 | 工事を行う際に使う材料の費用 |
労務費 | 施工に必要となる人件費 |
機械費 | 機械の整備や修理費、運転のための労務費、償却費 |
間接工事費
間接工事費とは工事施工に対して間接的にかかる費用のことで、共通仮設費や現場管理費、一般管理費の3つに分かれます。
項目 | 内訳 |
共通仮設費 | 工事のために仮設する足場、養生、管理事務所、詰所、看板といった設備 |
現場管理費 | 工事現場を管理するための人件費や保険料、通信費 |
一般管理費 | 本社や支店での経費・人件費 |
それぞれの項目の違いを理解し、建築で発生する費用には何があるかを把握しておきましょう。
介護施設の種類
高齢化社会の進行に伴い介護が必要な人のニーズに応じたサポートの提供が必要です。
さまざまな介護施設が存在するため、ここでは代表的な施設を紹介します。
6つの介護施設
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それぞれ詳しく解説します。
有料老人ホーム
有料老人ホームとは、高齢者が暮らしやすいように配慮された「住まい」のことです。
利用者様が快適に暮らせるよう、民間の企業がサービスを提供しています。
有料老人ホームには「住宅型」「介護付」「健康型」の3種類があります。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、自宅での生活が困難になった高齢者が安心して生活できるように食事や入浴、生活支援等のサービスを提供する施設のことです。
病院や特別養護老人ホームと異なり個々の住戸が確保されている点が特徴で、自宅のようなプライベートな空間でありながら、必要なサポートを受けられる環境が整っています。
介護付有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームとは、高齢者が自分の生活リズムを保ちつつ、医療や介護の支援を必要に応じて受けられる施設のことです。
食事・介護・医療サービスなどを一定の費用で提供し、必要なときには24時間体制でのサポートをしてくれます。
「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた、介護サービスの提供基準を満たした施設だけが「介護付き」と表示できます。
健康型有料老人ホーム
施設健康型有料老人ホームは、家事サポートや食事などのサービスが付いた高齢者施設です。身の回りのことは自分でできる、介護を必要としない自立した高齢者向けの施設になります。
介護が必要となった場合は原則退去となり、介護付き有料老人ホームへの転居が必要です。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは「特養」とも呼ばれ、常時介護が必要で在宅での生活が困難な高齢者に対して、生活全般の介護を提供する施設です。
入居対象者は65歳以上かつ要介護3以上の高齢者で、日常生活の介助を行うとともに、健康管理やリハビリが実施されています。
サービス付き高齢者住宅
サービス付き高齢者向け住宅は民間企業が運営しており、介護施設ではなく住宅として扱われる住まいです。外出や外泊もできるケースが多く、のんびりと老後を暮らしたい方に向いている施設だと言えるでしょう。
2011年に「地域包括ケアシステム」拡充の施策として創設され、年々増加傾向にあります。サービス付き高住者住宅には「一般型」と「介護型」があり、一般型で介護を受ける場合は、外部事業者による居宅サービスの利用が必要です。
認知症グループホーム
認知症グループホームは民間企業やNPOが運営しており、要支援2以上および要介護1以上かつ認知症の症状がある高齢者が入所する施設です。
認知症グループホームは、認知症の方が1ユニット 5人から9人程度の少人数で共同生活をおこない「入浴や食事」「排せつなどの介助」を専門職員からサポートを受けながら共同生活をする施設になります。
ケアハウス
ケアハウスとは社会福祉法人や地方自治体、民間事業者などによって運営され、家庭での生活が困難な60歳以上の高齢者が、低料金で食事や洗濯などの介護サービスを受けられる施設です。
ケアハウスは「軽費老人ホームC型」と呼ばれ、軽助成制度があるので低所得の高齢者も入居できます。
一般型と介護型で入居条件が異なるため、確認しておきましょう。
入居条件
一般型 | 60歳以上(夫婦の場合、どちらか一方が60歳以上) |
介護型 | 65歳以上で要介護度1以上 |
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すための施設になります。
医師による医学的管理の下、看護・介護といったケアだけでなく作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーションや、栄養管理・食事・入浴などの日常サービスまで併せて提供する施設です。
介護老人保健施設の利用対象者は、病状が安定していて入院治療の必要がない要介護度1〜5の方で、リハビリテーションが必要な方になります。
構造別のメリット・デメリット
建物構造は、建築コスト・建物の耐久性・管理のしやすさなどに関わる非常に重要な要素です。各構造のメリットやデメリット、特徴をしっかり把握しておきましょう。
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄筋コンクリート造に用いられる素材に鉄骨を埋め込んだ構造です。
メリット・デメリット
メリット | ・耐用年数が長い。(47年) ・耐久性が高い。 ・柱や梁を小さくして、居住面積を広げることも可能。 |
デメリット | ・材料費が高い。 ・工事期間が長い。 ・他の構造に比べ設計上の制約があり、自由設計が難しい |
鉄骨鉄筋コンクリート造は鉄骨造と鉄筋コンクリート造の弱点を補った高性能の構造になります。
鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造は、鉄筋とコンクリートを組み合わせて固めた素材による構造です。
熱に弱く錆びやすい一方、引張力の強い鉄筋と熱に強い引張力の弱いコンクリートを一緒に使うことで、それぞれの弱点を補った強固な構造になります。
メリット | ・耐用年数が長い。(47年) ・耐久性や耐震性に優れている。 ・機密性が高い。 ・火災に強い。 |
デメリット | ・建築コストが高い。 ・地盤を強化する工事が必要。 ・解体費用が高い。 |
鉄骨造
重量鉄骨造は厚さ6mm以上の鋼材を使った構造です。
軽量鉄骨よりも強度があるため、3階建て以上のマンションやビル、大型店舗などに用いられています。
メリット | ・広い空間を確保できる。 ・耐久性や耐震性が高い。 |
デメリット | ・地盤補強工事にかかる費用が高い。 ・軽量鉄骨に比べて、建築費用が高い。 |
木造
木造は建物の柱や梁などの主要な部分を木材で作った構造です。
戸建住宅やアパート、福祉施設に多く用いられており、戸建て住宅の92.5%は木造が占めています。
メリット | ・材料費が安価。 ・軽量かつ耐震性能が高い。 ・通気性が高い。 |
デメリット | ・耐用年数が短い。(22年) ・害虫被害を受ける可能性がある。 |
構造によってメリット・デメリットが異なるため、介護施設の種類によって使い分けが必要です。
介護施設の建築コスト
介護施設の建築コストは年々増加傾向にあります。
コストが上がる理由としては建築資材や人件費の高騰があげられ、直近では2020年に発生したコロナ禍や2021年のウッドショック、2022年のウクライナショックも要因です。
構造によってもコストが大きく異なるため、それぞれの費用について把握しておきましょう。
㎡単価の推移
介護施設の㎡単価は2010年度を底に上昇傾向が続いています。
出典:独立行政法人福祉医療機構
ユニット型特別養護老人ホームの平米単価の推移も福祉施設の推移と同様に、全国平均および首都圏のどちらも2010年以降上昇傾向です。
全国平均は309千円となり前年度から3千円低下、首都圏は325千円と前年度から5千円低下するも依然として高い水準で推移しています。
出典:独立行政法人福祉医療機構
部材や人件費等の高騰により、今後も建築コストが上がることが想定されるでしょう。
構造別比較
2022年の全国における福祉介護施設の建築費を構造別に見てみると、鉄骨鉄筋コンクリート造が138.8(万円/坪)、鉄筋コンクリート造が105.4(万円/坪)、鉄骨造は95.5(万円/坪)です。
一方で木造の場合は70.4(万円/坪)と最も低い水準であることがわかります。
出典:建築着工統計調査(国交相)に基づいて作成(2022年時点)
全構造平均の坪単価は90.3(万円/坪)です。鉄骨造の95.5(万円/坪)と木造の70.4(万円/坪)の間に位置しており、介護施設の7割以上が鉄骨造、または木造で建設されていることが影響しているためと考えられます。
介護施設の構造別の割合
構造 | 割合 |
鉄骨造 | 45% |
木造 | 31% |
鉄筋コンクリート造 | 22% |
その他 | 2% |
出典:建築着工統計調査(国交相)に基づいて作成(2022年時点)
介護施設の建築費を抑えるポイント
介護施設の建築費を抑えるには、建築のどの項目にどのくらいコストがかかっているのかを把握することが大事なポイントになります。
建築費を抑える一番の要素として、その介護施設に適した構造を選択することが必要です。
鉄筋鉄骨コンクリート造や鉄筋コンクリート造は単価が高いため、その構造で建築する必要があるのか、土地活用業者に確認しましょう。
タカオでは創業45年の豊富な実績から、介護施設を検討しているお客様に最適なプラン提案が可能です。
無駄な設備を省く
介護施設の建築費を抑えるには、無駄な設備を省く必要があります。
コストが抑えられる設備
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同じ用途の製品でもメーカーにより価格が異なるため、必要な仕様なのかをしっかり把握しましょう。
介護施設の資金調達先
介護施設の代表的な2つの資金調達先をご紹介します。
2つの資金調達先
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それぞれ解説します。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、国が100%出資する金融機関で「国民生活金融公庫」「農林競業金融公庫」「中小企業金融公庫」「国際協力銀行」などの政策金融機関が統合されて発足した機関です。
地域の身近な金融機関として、創業者や小規模事業者に向けた事業資金の融資ほか、教育ローンなどの教育資金融資を行っています。
日本政策金融公庫からの融資は「無担保、保証人なし」や返済期間を長めに設定できる点などの条件がメリットです。
デメリットとしては金利はやや高く審査が厳しい傾向にあり、繰り上げ返済が不可能な点や担当者が選べないことも挙げられます。
銀行
銀行は企業や施設に向けたさまざまな融資プログラムやサービスを提供しており、介護施設提携ローンや高齢者施設サポートローン、有料老人ホーム向けの融資を行っています。
実績のない土地所有者が金融機関から融資を受ける場合、信用保証協会という公的機関に保証人になってもらい、金融機関から融資を受けられます。
土地活用業者は多くの銀行との取引実績があるので、融資条件の良い銀行を紹介してもらうことも可能です。
業者選定方法
業者選定をする際には押さえておくべきポイントがあります。
3つのポイント
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それぞれ詳しく解説します。
専門業者
土地活用の方法によって業者選定は大きく異なります。介護施設の場合は建築や設備の基準が厳しく設定され、建築する施設によって適している構造体が異なるため、専門性のある業者に依頼しましょう。
ワンストップでサポート
土地活用業者を選定する際は、ワンストップでサポートしてくれる会社選びが大事です。事業計画の提案だけでなく、引き渡しをした後の物件の管理やメンテナンスしてくれる会社を選ぶことで、長期に渡り安定した経営を進められます。
業者選びは建築面だけではなく、将来に渡り支えてくれる会社を選びましょう。
資金調達に強い
土地活用は多くのケースが金融機関から融資を受けて進めることになります。土地活用業者は複数の金融機関との取引があるため、融資打診の際に一番条件の良い融資先を紹介してくれます。
個人で問い合わせをするよりも、金利などの条件も有利なものを引き出せる可能性があります。
資金調達に強みを持っているかどうかも、業者選定を進めるうえで重要なポイントです。
まとめ
今回は介護施設の建築費に関する基礎知識や構造別のメリット・デメリット、介護施設の建築コスト、業者選定方法について解説しました。
介護施設の経営を成功させるためには、建築コストの中身を把握しておくことが必須です。
建築コストは年々増加傾向にあり、今後も価格が上がっていくことが想定されるでしょう。
タカオでは投資コストを抑え、運営者様目線でのプラン提案が可能です。介護施設の経営に困ったことがあれば、土地活用のプロであるタカオにぜひご相談ください。