介護施設や介護サービスを経営している方の中には、人材不足に頭を悩ませている方も多いでしょう。
介護事業の需要は日に日に高まっている一方で、介護業界の人材不足の問題は深刻化しています。
この記事では、介護業界の現状と人材不足の要因を解説し、人材不足に対する解決策を解説します。
ぜひ最後までご覧いただき、介護業界の人材事情について理解を深めましょう。
介護人材の現状について
少子高齢化の影響により、介護業界では人材不足が深刻化しています。
2年後には約800万人いる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、国民の約4人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎えます。
必然的に介護を受ける高齢者の数も多くなると予想され、今後さらに介護人材が必要になることは明らかです。
介護人材は2040年には280万人必要になる
厚生労働省によると、2040年には介護職員の必要数が約280万人になると試算されています。
280万人という数は2019年の介護職員数と比較すると、約69万人も多い人数です。少子化により若者の数が減っているなか、人材不足となっている業界は介護業界だけではありません。
今後、労働人口が減っていくなかでは他業種との人材の取り合いは避けられないでしょう。
そのため、介護人材の不足はより一層深刻な問題となっていくことが予想されます。
人材が定着しない要因
では、なぜ介護人材がここまで不足しているのでしょうか。
大きな要因は離職率の高さにあります。厚生労働省調査によると、離職者のうち約74%が3年未満で退職していることが分かります。
ここからは主な離職の理由4点について解説していきます。
- 職場環境が整っていない
- 将来設計が立てられない
- 職場の人間関係
- 出産・育児
離職の原因を把握して、人材不足を未然に防ぎましょう。
職場環境が整っていない
離職の大きな理由として、職場環境が整っていなかったという点をあげる方は少なくありません。
施設が人手不足のなか、業務に追われると、 職員に与えるストレスは非常に大きいと推測できます。
さらに介護事故の不安など、現場でのリスクは他の職種と比較しても高いと言えるでしょう。
そういったなかで業務フロー改善の提案などを行っても、職場環境が変わらないといったケースが起こった場合、離職を決意するというケースがよく見られます。
将来設計が立てられない
将来設計のことを考えての離職は特に男性の離職理由として多く見られます。
介護職の現状の問題点は、賃金の面やキャリアアップの道筋が少ない点です。政府主導での処遇改善の試みも進行していますが、他産業と比較した賃金の部分がネックになり離職につながっていることも多いです。
特に男性の場合は「昇給の見込みがない」「管理職につけない」といったことが分かると、家族を養うために待遇面を求めて転職を意識する傾向が見られます。
職場の人間関係
どの職場でも存在する問題ですが、人間関係による離職は介護現場における離職理由でも常に上位に位置しています。
介護施設の場合は、職員同士の協力が不可欠であり、夜勤で苦手な同僚と一緒になるというケースも少なくありません。
また、職員同士の問題だけでなく、利用者との人間関係も存在します。
人間関係は個人の相性の問題や実際に勤務してからでないと分からない部分もあるため、勤務前の段階で職場の雰囲気を入念に伝える機会を設け、ミスマッチを防ぐよう努めましょう。
出産・育児
出産後、育児を行いながら夜勤や変則的なシフトで介護の現場に入ることは難しいという判断で、離職をする方もいます。
人手不足の介護現場では、子どもの体調不良などで急に早退をすることが難しいのが実情です。
そのため、結婚、出産などのタイミングで、離職をするケースが多くみられます。
介護サービスにおける人材不足への対策
介護サービスでの人材不足をどう解消するか、どう不足を補っていくのかは、事業者においての大きな課題となっています。
- ITツールの導入で業務の効率化を図る
- 社内の相談窓口の設置
- 労働環境の再構築
人材不足を補う対策や、離職率低減に向けた上記の取組み3点を解説していきます。
ITツールの導入で業務の効率化を図る
離職率の高い介護の現場においては、職場における組織の状況・課題や人間関係が把握できていないということが起こっている場合が多いです。また、事務作業などに取られる時間も長くなりがちです。
そこでITツールの導入で業務の効率化を図ることで、組織の状況把握や生産性を高め、職場の労働環境の改善を目指しましょう。
例えば組織管理や人間関係を把握するツール、介護記録の入力と共有をスピーディーに行えるツールなど、さまざまなITツールがリリースされています。
導入初期においては操作方法などの習得に時間を要してしまうことで、従業員への負担がやや増加してしまう可能性があります。長い目で見て業務効率化や時短につながることを従業員に丁寧に説明し、導入期を乗り越えましょう。
社内の相談窓口の設置
人間関係の改善には、相談窓口の設置も有効な手段の1つです。相談窓口のない事業所では、労働条件や人間関係に関する悩みも発生しやすい傾向にあります。
職員が悩みを抱えている際に、気兼ねなく相談ができる環境は人間関係の問題解消の他にも
メリットがあると言えます。
例えば社員からさまざまな意見を吸い上げて現場に反映させることで、労働環境の改善にも活かせる可能性が高まります。
労働環境の再構築や正社員登用
現状の労働条件などを再構築することも対策の1つとなります。スキルのある職員に長期的に現場で活躍してもらうため、非正規職員から正規職員へ転換する方法などはよく見られるケースです。
パート職員から介護の現場に入り、働きながら資格を取得した方を正社員に登用するなど、キャリアパスや賃金への反映を積極的に行うことで、職員の離職を防げる可能性が高まります。
介護人材の採用方法について
実際に介護人材を採用するにはどのような手段を取ったら良いのか、悩んでいる方も多いでしょう。
採用でよく利用される5つの代表的な手法について解説を行っていきます。
- 求人サイト
- 人材紹介会社(転職エージェント)
- ハローワーク
- 自社サイト
- リファラル採用
どの手法においてもメリット・デメリットが存在するため、それぞれの特性を理解して求人の掲載を行いましょう。
求人サイト
求人サイトは登録者の数も多く、意欲の高い求職者にリーチを行うことが可能となります。
求人サイトには介護業界特化型のものもあり、介護福祉関連企業への就職を検討している方々へピンポイントで求人を行うことも可能です。
しかし登録者の多い求人サイトでは求人の掲載も非常に多いため、タイトルや原稿の内容をしっかりと検討し、求職者の目につく工夫を行う必要があります。
人材紹介会社(転職エージェント)
人材紹介会社(転職エージェント)とは、転職を希望する個人と求人を出している企業をマッチングするサービスです。求職者のスキル・経験・希望を聞き出し、最適な求人を提案します。
また、面接の手配や交渉も人材紹介会社が行ってくれます。介護事業者にとっては、適切な人材を見つける労力を軽減し、より求める人材像に適した採用を可能にしてくれるのです。
ハローワーク
ハローワークは厚生労働省が運営する施設で、職業紹介サービスへ求人を掲載することが可能です。
ハローワークへの求人掲載を行うと、施設内の求人検索機やハローワークのインターネットサービスから求人を閲覧してもらうことができます。
求人掲載が無料で行える点が大きな特徴ですが、掲載内容は限定的なことがほとんどで、効果的なアピールを行えない可能性があります。ハローワークのみで採用を行うことは難易度が高いため、他の手法と組み合わせて利用すると良いでしょう。
自社サイト
自社のサイトの採用ページに求人募集を行う方法です。転職などを行う際、多くの求職者は、企業のHPを確認します。
自社サイトには求人サイトで設定されている文字数制限などが無いため、掲載しきれていなかった情報や、事業所の魅力をしっかりと伝えることができます。
アクセスや応募数を増やすためにはサイトの検索順位を上げる工夫が必要になるため、SNSなどさまざまな経路で自社サイトへの来訪を増やすことが採用成功の鍵になります。
リファラル採用
すでに事業所で働いている職員から紹介を受けて採用を行う手法です。事業所の雰囲気や特性を理解している職員から紹介を受けるため、求職者とのミスマッチの可能性を低減することが可能です。
しかし、人材不足のタイミングに紹介を行ってもらえるかは分かりませんし、労働環境や人間関係に課題がある職場では、職員が自らの知人に事業所を紹介することはありません。
そのため、ある程度働く環境が整っている事業所において、採用手法の1つとして活用するという形がオススメです。
国や自治体の取組について
国の介護事業を管轄する厚生労働省では、介護人材不足に対する対応として、さまざまな制度を準備しています。
国や自治体の制度をうまく活用することで人材の確保を行える場合もありますので、国の方針などは定期的に確認しましょう。
介護に関する入門的研修について
多様な人材確保を目的とし、介護分野へ介護未経験者の参入を促進する取組です。
介護事業を知るきっかけをつくり、介護分野で働く不安を払拭できるよう、入門的研修実施を推進しています。
人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度について
職員の人材育成や就労環境などの改善に繋がる取組に対して都道府県が評価を行い、一定の基準を満たした事業者に対して認証を付与する制度です。
厚生労働省では、認証評価制度の運営に関する経費を支援しています。
介護現場における多様な働き方導入モデル事業について
リーダー的介護職員の育成を行うとともに、多様な働き方や柔軟な勤務形態を介護事業所への導入を進めています。
効率的・効果的な事業運営の方法について、実践的な研究を行いながら、研究成果を全国に展開しています。
介護現場における多様な働き方導入モデル事業[PDF/700KB]
介護の仕事の魅力発信などによる普及啓発に向けた取組
11月11日を介護の日と定めて介護についての理解を深め、地域社会で介護サービス利用者やその家族、介護従事者を支え合い、交流を図る取組みです。
介護の日を起点に前後1週間を「福祉人材確保重点期間」と定め、福祉介護サービスの意義への理解を深めるための普及啓発を行っています。
「介護の日」及び「福祉人材確保重点期間」の取組についてはこちら
介護人材を確保して安定した経営を行おう
高齢化が進み介護人材への需要は高まりを見せていますが、さまざまな問題で人材不足が深刻化しています。
介護事業の安定運営のためには、専門家のアドバイスが必要になる場合もあります。
株式会社タカオでは、これまで多くの介護施設の出店やサポートを行ってまいりました。
是非、お気軽に介護事業に関する悩みを専門家にご相談ください。