高齢化社会の進展に伴い、介護人材確保は重要な課題となっています。
介護施設を運営している方の中には、人手不足に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では介護人材確保に向けた国の取り組みや、人材確保のためのポイントについて解説しています。
ぜひ最後までご覧いただき、人材確保の具体的な方法について理解を深めましょう。
介護人材確保の現状
介護人材の量と質を確保するため、国は地域と二人三脚で「参入促進」「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」を進める取り組みを行っています。
高齢化社会の進行や介護ニーズの増加により、介護人材の需要はさらに増加すると予測され、必要性がますます高まるでしょう。
この先の介護人材の必要人数
今後の高齢者増加に向けて、多くの介護職員の人材が必要です。
令和3年7月9日に第8期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数を公表しています。
介護職員の必要数
2023年度:約233万人 2025年度:約243万人 2040年度:約280万人 |
出典:厚生労働省HP
2040年は約280万人の介護人材が必要であり、2019年と比較すると約69万人も必要数が増加する見込みです。
少子高齢化が進み、人材不足は介護業界のみならず社会の大きな問題になっており、
どのように介護人材を確保すればよいのかが今後の課題になるでしょう。
採用が困難な理由
介護業界で人材の採用が困難な理由は3つあります。
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介護福祉職の平均年収は、約339万円と他業種と比較して低い傾向にあります。給与水準が業務内容に対して割に合わないと感じる人が多く、採用が難しくなる要因の一つと言えるでしょう。
また、有効求人倍率はコロナの沈静化に合わせて、令和2年以降毎年増加傾向にあります。
今後、人材確保を円滑に進めていくには、人材を定着させるための工夫や競合他社との差別化が求められるでしょう。
介護人材の離職率が高い理由
介護労働安定センターの「令和2年度介護労働実態調査結果の概要について(P.2)」によると、介護職の離職率は14.9%で、全産業の平均離職率は15.6%という結果です。
決して他の産業に比べて高いわけではないですが、職場に定着しない主な理由として次の4つが挙げられます。
4つの離職理由
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出典:「介護労働実態調査(P.12)」
それぞれの理由を詳しく解説します。
職場の人間関係
介護業界での離職理由の第1位が人間関係になり、同僚やスタッフ間での人間関係に悩むケースが多いと言われています。
介護業界の現場では利用者やその家族、職員、連携機関のスタッフなど多くの人と関わりながら業務をしていくため、苦手な人やコミュニケーションを取りづらい人と関わる機会も多くなり、ストレスを感じる方も多いです。
離職の原因となりやすい職場の人間関係の不満については、普段から職員同士が円滑にコミュニケーションを取れる環境を作り、適切な対策や対応が必要になるでしょう。
出産・育児
介護業界での離職理由の第2位は出産・妊娠・育児のためになります。
女性の場合は結婚後に出産や育児をしながら夜勤や変則的なシフトで仕事をするのは難しいため、離職してしまう方が多いです。
女性を現場に定着させるためには、柔軟な勤務時間や保育施設の提供、育児休暇の充実など働きやすい環境を整える必要があるでしょう。
キャリアアップの見込みが少ない
介護業界での離職理由の第3位がキャリアアップの見込みが少ないことが理由です。
規模の小さな事業所では、役職へのキャリアアップが難しいことも退職を検討する理由の一つになります。教育体制が整っていないという理由から、仕事を続けることに不安を感じてしまう人も多いです。
将来のキャリアアップのビジョンを明確にすることで、働いている方の不安を取り除く必要があるでしょう。
収入が少ないため
介護業界での離職理由の第4位は、他の業種と比べて収入が少ないことが挙げられます。
厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果 P.152」によると、介護職員の平均給与は31万6,610円になります。「2021 年6月度「定期賃金調査結果の概要 P.2」に示されている全産業の平均給与額は39万1,408円で介護職員の平均給与額は8万円程少ないです。
介護保険制度では介護報酬の上限が決まっており、利用者の人数によって介護事業所の職員数も定められています。
このため人件費を削減して一人当たりの給料をあげることは難しいため、資格手当等を支給することで、給料のベースを上げるなどの取り組みが必要になるでしょう。
介護人材確保に向けた国の取り組み
介護人材を量と質の両面から確保するため、国は様々な取り組みを行っています。
3つの取り組み
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それぞれ詳しく解説します。
研修
厚生労働省では多様な人材の確保に向けて、介護分野への介護未経験者の参入を促進するために研修実施を推進しています。
介護未経験者に対して業務の不安を払拭するため、基本的な知識の研修を行い、介護分野への参入を促進することが目的です。実施する日数によって実施時間も異なります。
3つの実施例
1日で実施する場合 | 3時間で研修を実施 |
3日程度で実施する場合 | 1日7時間で研修を実施 |
6日程度で実施する場合 | 1日3〜4時間で研修を実施 |
出典:「厚生労働省 入門研修の概要」
評価制度
「人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度」は、一定の水準を満たした事業者に対して認証を付与する制度です。
職員の人材育成や就労環境等の改善について、都道府県が基準に基づく評価を行います。介護事業者の人材育成や人材確保に向けた取組の「見える化」を図ることにより、働きやすい環境の整備を進め、介護職を志す方の参入や介護職員の離職防止、定着を促進することが目的です。
普及活動
介護人材確保の取り組みとして「11月11日」を介護の日としています。
また介護の日の前後2週間である11月4日から11月17日は福祉人材確保重点期間です。関係機関と連携して、福祉介護サービスの意義の理解を一層深めるための普及啓発および福祉人材確保・定着を促進するための取組に努めることと定義づけています。
介護人材確保ためのポイント
介護人材を安定して確保するためには、今までの採用方針を変えていく必要があるでしょう。ここでは具体的な介護人材確保のためのポイントを解説します。
採用対象者の範囲を広げる
人手不足の事業所ほど即戦力を欲するものですが、介護業界は売り手市場のため、経験者を募集してもなかなか採用できないのが現実です。
介護現場では業界未経験者の方でも活躍できる場面が多くあり、経験やスキルにこだわりすぎず採用対象者の範囲を広げることがポイントになります。資格取得支援制度や教育研修制度があることをアピールできれば、未経験者の応募ハードルが下がり人材を確保しやすくなるでしょう。
また、時短勤務や独自の休暇制度を導入して働きやすい環境を整えると、優位性をアピールできるとともに離職率の低下にも繋がります。
採用基準を統一させる
採用基準を統一させなければ、面接する人の好みや判断軸によって、採用の可否が決まる可能性が出てきます。
また面接担当者と現場で採用基準の統一ができておらず、現場の要求と全く違う人が入ってくるという状況も人材不足の業界ではよくある課題です。
採用の基準や目的を明確にしたうえで、現場がどういった人材を求めているのかを事前に把握しておくことが重要になるでしょう。
介護人材確保のための具体的な方法
実際に介護人材確保のためにどのような方法を取ればいいか知りたい方も多いのではないでしょうか。ここでは代表的な5つの方法を紹介します。
5つの方法
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それぞれの特徴を解説します。
求人サイト
介護職の求人サイトはWebサイトに求人情報を掲載する方法です。
求職者が求人サイトを利用するためには会員登録が必要なため、働く意欲の高い人に求人をアピールできます。
また介護業界特化型の求人サイトを利用すれば、介護福祉関連の求職者にピンポイントでアピールすることが可能です。
求人サイトは競合他社の掲載件数も多いので、タイトルを工夫したり上位表示されるオプションを付帯したりするなど、施策を講じる必要があるでしょう。
人材紹介会社(転職エージェント)
転職エージェントとは、転職を検討している方と採用を考えている企業の間に立ち、転職成功を支援してくれるサービスです。
求人動向や転職ノウハウに長けているキャリアアドバイザーが、求職者の転職活動をサポートしてくれます。
また面接の手配や交渉も人材紹介会社が行ってくれるため、採用に悩んでいる企業は適切な人材募集を行うことができ、採用成功を可能にしてくれるのです。
人材派遣
人材派遣は派遣会社が雇用しているスタッフを派遣してもらう方法です。
必要な経験やスキルを持った人材を必要な人数や期間だけ確保が可能になり、期間限定で雇いたいときや求人の反響が少なく人材が集まらないときにおすすめと言えます。
希望する人材を派遣会社に伝えるだけで、ニーズに合致した人材を用意してもらえるため、
面接などの手間を省くことが可能です。
介護の資格や実務経験を持つ人が多く登録している人材派遣を利用すれば、即戦力の採用も見込めるでしょう。
ハローワーク
ハローワークとは厚生労働省が運営する公共職業安定所のことです。職業紹介サービスに求人情報を掲載する方法で、費用は一切掛かりません。
求職者は施設内の求人検索機やインターネットサービスから求人を検索することが可能です。
ただしハローワークの求人票に掲載できる情報は限定的になり、職場の魅力をアピールしづらいため、他の採用手法と併用するようにしましょう。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社の社員に友人・知人を採用候補者として紹介してもらう採用手法です。「リファラル・リクルーティング」とも呼ばれ、今注目を集めている採用方法になります。
自社の社員が、知人に対して職場の雰囲気や会社の魅力を伝えてアプローチするため、勧誘された側も転職後のイメージがつきやすく、離職率が低いというメリットがあります。
しかし、必要なときに必要な人材を紹介してもらえるわけではなく、職場環境や労働環境が整っていなければ自分の知人・友人に紹介されることもありません。
そのため働く環境を整えたうえで、他の採用方法とあわせて組み合わせることをおすすめします。
自社サイト
自社サイトでの募集は採用特設ページや、採用サイト内で求人募集する方法です。
職場の仕事に関する詳細な情報を掲載することで、求職者の理解が深まり、自社求人への応募が促進されます。
また自社サイトで募集する際は文字制限などもないため、写真や動画を使ってさまざまな情報を掲載でき、事業所の魅力や仕事のやりがいをアピールすることが可能です。
最近では応募率を高めるために、SNSやブログなどのWeb媒体と連携させておくことが採用率を高めるポイントになります。
介護人材を職場に定着させる方法
介護人材を職場に定着させるためには、職場内での人間関係の改善や手厚い研修制度が必要になります。
介護現場での人間関係(18.8%)での離職率は一番高いため、新人の職員には教育担当の先輩をつけるなどの工夫が必要です。
個々のスキルによって必要な研修も異なるので、各階層ごとにプログラムを組み、少人数で行うことで1人1人のスキルを向上させることが可能です。
普段からわからないことを気軽に聞くことができる現場の雰囲気作りも、人材を定着させるための重要な要素になるでしょう。
介護人材を確保する取り組みを行って経営を成功させよう
今回は介護人材確保の取り組みについて解説しました。
介護人材の確保を円滑に進めるには、人材確保のためのポイントを把握し、複数の人材活用方法を組み合わせて募集する必要があります。
また採用後に職場定着させることも重要になり、研修制度の充実も求められます。
タカオでは創業45年以上の経験とノウハウにより、これまで多くの介護施設の出店やサポートを行ってきました。介護人材確保でお悩みの方は、タカオへぜひご相談してみてはいかがでしょうか。