高齢化社会の進展に伴い、デイサービスの需要は増える一方で、赤字の事業所も増えています。
デイサービスを運営している方の中には、黒字化するための方法に頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。
この記事ではデイサービスを黒字化するための方法や、利用者を増やすための戦略について解説しています。
ぜひ最後までご覧いただき、黒字化するための具体的な方法について理解を深めましょう。
デイサービスとは
デイサービス(通所介護)とは利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護負担軽減などを目的として実施されているサービスです。
デイサービスの基準
デイサービスを開設し運営していくためには、厚生労働省が定めている「通所介護の指定基準」を満たす必要があります。
指定基準には人員基準と設備基準の2つがあります。
人員基準
生活相談員 | 事業所ごとにサービス提供時間に応じて専従で1以上 |
看護職員 | 単位ごとに専従で1以上 |
介護職員 | ・利用者の数が15人まで:1以上 ・利用者の数が15人を超す場合:利用者の数が1増すごとに0.2を加えた数以上 |
機能訓練指導員 | 1以上(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師) |
生活相談員または介護職員のうち1人以上は常勤が必須です。
設備基準
食堂 | それぞれ必要な面積を有するものとし、その合計した面積が利用定員×3.0㎡以上 |
機能訓練室 | |
相談室 | 相談の内容が漏えいしないよう配慮されている |
デイサービスの市場規模
デイサービスの市場規模(介護費用額)は、厚生労働省の「介護給付費等実態統計 P.11」によると、2020年度が1兆2,851億円で、ここ数年横ばいです。
出典:厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」
福祉医療機構の調査「2020 年度(令和 2 年度)通所介護の経営状況について」を見ると、デイサービス業界は利用率の低下によりサービス活動増減差額比率が低下し、事業規模が大きいほど低下幅が大きくなっています。
出典:「2020 年度(令和 2 年度)通所介護の経営状況について」
介護保険対象サービスの収入源は、ほぼ介護報酬に依存しています。
デイサービスの収入は介護保険収入と保険外収入に分けられ、そのほとんどが介護保険収入によるものです。
原則として介護報酬の9割を保険者(市町村)から受け取り、残りの1割を利用者から受け取る形になります。
デイサービス事業者は、施設の稼働率を上げることが収益のカギを握っていると言えるでしょう。
デイサービス業界の現状
高齢者人口の増加により、デイサービスの需要は右肩上がりで増加しています。
高齢者がご家族と同居している場合は「施設に入所させることには戸惑いを感じるが、日中家族が家を空ける際は本人の様子が気になる」という心理が働く傾向にあります。
デイサービスは施設に入所することなく日中の利用ができるため、家族が仕事を続けながら介護負担を軽減できます。
そのニーズに応えたデイサービスは、今後も需要が高まると言われているサービスです。
出典:令和5年版高齢社会白書
デイサービスの経営状況
デイサービスのニーズは高まる一方、経営は厳しい状況にあります。
2021年度介護報酬改定により基本報酬が引き上げられたものの、2020 年度と比べ利用者 1人の1日当たりサービス活動収益は低下しています。
赤字の事業所は利用率が低いことから人員配置が過大となっている傾向にあり、利用率の改善と適正な人員配置への取組みが急務です。
出典:2021 年度(令和 3 年度)通所介護の経営状況について
デイサービスの倒産件数
2022年のデイサービスの倒産件数は69件になり、前年の17件から約4倍に増加しています。
介護業界全体でも倒産企業が増加しており、老人福祉・介護事業において2022年には倒産件数が143件になります。
この倒産件数は前年比76%増加しており、過去最多です。
出典:株式会社東京商工リサーチ
赤字になるデイサービスの特徴
2021年度通所介護の経営状況についてのレポートによると、デイサービスは46.5%が赤字です。
デイサービスが赤字になる原因は、大きく2つの理由が挙げられます。
赤字になる2つの理由
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詳しく解説します。
稼働率の低下
デイサービスは利用者が少なくなれば、稼働率が低くなり事業所の売上が下がります。
デイサービスの稼働率は事業所が利用できる最大人数に対する利用割合のことで、1日の稼働率を計算式で表すと、1日の利用者数÷1日の利用定員数となります。
例えば、1日の利用定員数が40名のデイサービスにおいて、1日の利用者数が30名であれば、その日の稼働率は30÷40=75%です。
このような稼働率が低い状態が長期化することで、経営状況が赤字の原因になります。
人件費が高い
介護・看護職員、機能訓練指導員などのスタッフが増えれば、事業所の人件費が高くなり経営を圧迫します。
人手が必要な業務に、必ずしも適切な人材配置ができているとは限りません。
介護の現場からは「人手が足りない」「現場がまわらない」といった声が聞こえてきますが、利用者に十分なケアをおこなえないのは、業務の煩雑さや効率の低さといったことに原因があるケースも多いです。
現場の問題点を把握し、人材が適切に配置されているか検証が必要になるでしょう。
デイサービスを黒字化するための方法
デイサービスを黒字化するためには、戦略的な施策を取ることが重要です。
黒字化するための3つの方法
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上記の内容を実践することで、黒字化への一歩を踏み出せるでしょう。
業務の効率化
業務を効率化するうえで欠かせないのが、IT技術の活用になります。
クラウドサービスを活用した勤怠管理の実施や、システムを利用し職員間で利用者のデータをリアルタイムで共有することが可能です。
IT技術を活用すれば人的労力を削減でき、より少ない労力・時間で一定の成果を出せるようになるため、費用の削減や職員の負担軽減といった効果が期待できるでしょう。
労働環境の改善
デイサービスを黒字化するうえで、人材不足の解決は必須になります。
無駄な会議や朝礼、研修や残業を削減し、ITツールを導入して職員の負担を減らすことが効果的です。
労働環境を改善できれば、確保した職員の離職を減らすことが期待できます。
また「働きやすい職場」というイメージが広まれば、安定的に職員を採用できるようになるでしょう。
増加する需要にも対応でき、収益を安定的に得ることも可能です。
人材育成
デイサービスを黒字化するためには、介護人材を職場に定着させる必要があります。
職員が足りなければ受け入れる人数の制限につながり、収益が悪化しかねません。
高齢者の増加に伴い、今後のデイサービスには認知症のケアや機能訓練(身体機能の改善や悪化防止を目的とした訓練)の充実が求められます。
人材を確保するだけでなく人材育成にも重点をおけば、利用者の満足度も上がり、競合に顧客を奪われることを防げるでしょう。
デイサービスの利用者を増やすための営業戦略
デイサービスの利用者を増やすためには、事業所のコンセプト・強みを明確にし、営業戦略を考える必要があります。
利用者を増やすための営業戦略
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どのような効果があるのか詳しく解説します。
差別化
デイサービスの利用者を増やすためには、事業所のコンセプトを差別化をすることが必要です。
軽度から重度までの全ての利用者を受け入れるのではなく、ターゲットを明確にすることが大事なポイントになるでしょう。
デイサービスの差別化を図る方法の一つに、リハビリ特化型の介護サービスを提供することが挙げられます。
リハビリ特化型のデイサービスは、運動プログラムが充実しており、比較的介護度が低い高齢者が適応とされています。
まだデイサービスは早いと感じている高齢者も、シニアスポーツクラブのような感覚で通所することが可能です。
営業ツールの拡充
品質の高い営業ツールがあれば施設のイメージが良くなり、デイサービスの集客につながります。
準備しておきたい営業ツール
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インターネットの普及により、ブログやホームページなどは集客をするうえで、有効な手段の一つとなっています。
利用者様の家族がインターネットで地域のデイサービスの検索をするケースが増えているため、事業所の特徴をわかりやすく表示することが必要です。
またチラシ・パンフレットを作成する際は、誰がみてもわかるように専門用語が含まれていないか(機能訓練→リハビリ)確認しましょう。
またチラシ・パンフレットの作成方法には自身での制作と制作会社に依頼する方法があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
チラシ作成のメリット・デメリット
メリット | デメリット | |
自身で作成 | ・簡単に最新の情報に修正できる。 ・必要な時に、必要な部数をすぐに用意できる。 | ・デザインや印刷の品質が良くない。 ・印刷する枚数によっては費用が高くなる。 |
制作会社で作成 | ・デザインや印刷の品質が高い。 ・印刷している間の立ち合い(インク交換、用紙の補給など)が必要ない。 印刷する枚数によっては費用を抑えられる。 | ・印刷する枚数によっては費用が高くなる。 ・足りない時にすぐに用意できない。 ・記載内容に変更等が生じた場合、印刷済みのパンフレット等のロスがでる。 |
それぞれのメリット・デメリットを把握し、事業所にあった方法を選択しましょう。
デイサービスの営業先
営業活動は、デイサービスの集客アップや稼働率アップをするために重要な要素になり、事業所の安定的な運営のためにも欠かせない活動です。
稼働率や集客をアップさせるためにはデイサービスの「強み」を可視化し、営業先にどのように伝えるかを考える必要があります。
今回はデイサービスの代表的な営業先を紹介します。
デイサービスの営業先4選
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詳しく解説します。
ケアマネージャー
デイサービスを運営していくうえで、ケアマネージャーの信頼を得ることは重要です。
ケアマネージャーはケアプラン(サービス計画書)の作成やサービス事業者との調整を行う、介護保険に関するスペシャリストです。
多くの顧客を抱えているため、すぐに利用者を紹介してもらえる可能性があるでしょう。
またケアマネージャーは「集中減算」制度があり、複数の事業所を使う必要があります。
自社の法人以外にも信頼して依頼できる事業所を探しているため、コミュニケーションを取り、信頼関係を構築しておけば、利用者に対してサービスを紹介してもらいやすくなるでしょう。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、その地域に住む高齢者の方に向けてサービスを提供する公的機関の施設です。
担当エリア内の全戸訪問しているところもあり、その地域に住んでいる高齢者の状況を把握しています。
地域包括支援センターへ営業することで「要支援」の利用者を獲得できるでしょう。
医療機関(病院)
医療機関・病院への営業は、主にメディカルソーシャルワーカー(MSW)やリハビリスタッフに営業をする必要があります。
回復期リハビリテーション病院の地域連携室に属しているのがMSWです。
医療依存度の高い患者様を抱えることが多い病院のため、そのニーズに対応できるデイサービスであれば、有効な営業先になるでしょう。
地域住民
地域で暮らす人々への営業は、まず知ってもらうことが目的になります。
介護の相談や、勉強会や老人クラブとの交流、ボランティアの受け入れなど、地域との接点を多く持てるよう活動する必要があります。
接点を増やし、信頼を得られれば潜在的な顧客を獲得できるでしょう。
デイサービスを黒字化する方法を理解し実践しよう
今回はデイサービスを黒字化させるための営業戦略や営業先について解説しました。
デイサービスを黒字化させるためには、赤字になる理由を把握し、黒字化するための方法を実践する必要があります。
また利用者を増やすための営業戦略も重要なポイントです。
タカオでは創業45年以上の経験とノウハウにより、これまで多くの介護施設の出店やサポートを行ってきました。
デイサービスの黒字化でお悩みの方は、タカオへぜひ相談してみてはいかがでしょうか。