土地活用を検討されている方の中には、介護施設の建設を考えている方もいるでしょう。
介護施設の中でも特別養護老人ホーム(特養)の経営は、土地活用の1つの選択肢となります。
この記事では、特別養護老人ホームの建設にかかる具体的な費用について解説していきます。昨今の情勢も踏まえ、わかりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
特別養護老人ホームとは
特別養護老人ホームは足腰が不安定である高齢者や、トイレ・入浴で介助が必要な要介護3以上の高齢者を対象に介護サービスを提供する施設です。
要介護3の方は基本的に24時間介護を必要とする状態のため、在宅での生活が難しくなった方が特別養護老人ホームへと入居する形となります。
入居者の看取りにも対応可能なため、重度の要介護状態になったとしても、そのまま住み続けられる点が特別養護老人ホームの特徴です。
福祉医療施設の建設費は上昇傾向にある
福祉医療機構のレポートによると、福祉医療施設の建設費は調査を開始した2008年以降で最高値となりました。昨今の世界情勢などさまざまな要因が重なった結果、各種施設の建設費は上昇傾向にあります。
建設費上昇の主な要因は以下の3点です。
- 原因1 平米単価の上昇
- 原因2 建築資材の値上がり
- 原因3 原油高や物価高騰
それぞれの項目について詳しく解説していきます。
原因1 平米単価の上昇
土地価格の上昇により、1㎡あたりの建設単価は全国的に上昇中です。
特に首都圏において土地価格の上昇が建設費用に大きく影響を及ぼしています。首都圏は建設用地の確保が難しく、土地があまり広くない場所に施設を建設しなければいけない場合もあり、建設費が相場より高くなる傾向にあります。
原因2 建築資材の値上がり
ロシア・ウクライナ情勢の悪化によって、世界規模でサプライチェーンへ大きな影響を及ぼしました。
建築資材の不足が世界的な課題となり、建築資材価格は大きく値上がりした状態が続いています。
福祉医療施設の建設においても建築資材値上がりの影響は大きく、全体的な建設費の増加に繋がっています。
原因3 原油高や物価高騰
建築資材の値上がり同様、ロシア・ウクライナ情勢の影響により原油高が大きく進みました。
円安が重なったことで原油価格はさらに上昇し、資材運搬費などに影響を及ぼしています。原油高にともなって、石油を使用した製品の価格が上昇し、施設に配備する物品の購入費用増加につながっています。
特別養護老人ホームにかかる建築費
実際に特別養護老人ホームを建設するためには、どの程度の費用がかかるのでしょうか。
建設費を大きく左右する項目は次の3つです。
- 土地購入費
- 建物の建築費
- 設備、備品購入費
それぞれの項目について、詳しく解説していきます。
土地購入費
特別養護老人ホームを建設するためには、まずは土地の購入が必要です。
建設には300~400坪ほどの土地面積が必要とされています。土地の取得価格は首都圏や地方都市などによって価格の変動幅が大きいですが、土地の取得には数百万~数千万円かかると見込んでおいた方がよいでしょう。
建物の建築費
最も大きな費用を占める可能性が高いのは、建物の建設費です。
特別養護老人ホームの建設には「設備基準」と呼ばれる、国が定めた要件が存在しています。居室における必要面積の基準や火災予防のための設備、食堂、浴室、洗面設備をはじめさまざまな設備基準を満たす必要があります。
介護を行うための専用設備も多数備え付けが必要となることから、建設費は最低でも数千万円以上は見込んでおく必要があります。
設備、備品購入費
施設の開業のためには、入居者が使用するベッドや職員が待機する部屋で使用するテーブルやイス、事務用品など多くの備品の購入が必要です。
また、入居者は要介護者であることから、入浴設備をはじめ専用の設備の導入も必要となるでしょう。場合によっては、事故や生命を守るための身体拘束用備品の購入が必要になるケースもあります。
特養の経営を始めるために必要な費用
施設の建設が完了したら、経営をはじめるための準備を進めていく必要があります。施設開業のためには人員配置でクリアすべき要件もあり、施設の建設と並んでとても重要です。
ここからは、経営開始前に必要な費用を3点解説します。
- 販促費
- 求人費
いずれも重要な項目となりますので、必ず頭に入れておきましょう。
販促費
施設開業前後は入居者を集めるため、ホームページやパンフレットのような施設の広報を行うための資料を整備しておく必要があります。
入居者の家族は、インターネットから特別養護老人ホームをはじめとする介護施設の情報を得ることも増えてきているため、ホームページの構築は必ず行いましょう。
パンフレットは訪問営業の際や、入居時の施設説明にて使用します。
ホームページやパンフレットは施設集客に大きな影響を与えるため、構成や記載項目などを入念に検討し、開業前の完成を目指しましょう。
また、集客のためにネット広告を活用したり、インターネット上での検索上位を狙う施策などを実施することにより、費用が大きく変動する点は覚えておく必要があります。
求人費
特別養護老人ホームには介護保険法で定められた「人員基準」が存在しています。人員基準を満たさなければ、施設は開業できません。
施設で働いてくれるスタッフを集めるために、各種採用プラットフォームへの掲載を行うなど、求人活動を行う必要があります。
必要となる人員は以下のとおりです。
・施設長
・医師
・介護職員または看護職員
・生活相談員
・栄養士
・機能訓練指導師
・介護支援専門員
特別養護老人ホームの建設で注意すべきこと
特別養護老人ホームの建設にあたっては、定められた要件を満たす他に、近年ではコロナウイルス対策といったポイントも注意が必要です。国の設備基準とコロナウイルス対策について詳しく解説していきます。
国の設備基準を満たす必要がある
特別養護老人ホームを建設する際の基準は法律で明確に定められているため、必ず目を通しておきましょう。
資料には日照、採光、換気などの保健衛生面をはじめ、居住空間の面積や必要な設備について記されています。設備面においては、居室や静養室、食堂、浴室をはじめとした設置が必要な設備が16項目あります。
さらに、それぞれの空間において入居者1人あたりの床面積が定められているため、あらかじめ施設のキャパシティを定めておきましょう。
また、静養室は介護職員室または看護職員室と近接させるといった施設レイアウトについても決まりがあるため、設備基準における資料は漏れなく確認することが非常に重要です。
近年はコロナウイルス対策も必要
コロナウイルスの流行により、介護施設でも入念な感染対策が必要となりました。特に特別養護老人ホームの入居者は、要介護3以上の方がほとんどのため、自身で手指の消毒などを行えないケースも考えられます。
そのため入居者が集まるエリアでは、定期的な消毒の実施やパーテーションの設置をはじめとした感染予防対策を講じ、施設内での集団感染の予防を行いましょう。
特養を建設するための資金調達方法
特別養護老人ホームの建設には多額の費用を要するため、自己資金だけで開業が難しい時には、資金調達を行う必要があります。代表的な資金調達の方法を3点解説していきます。
- 融資
- 補助金や助成金の活用
- ファクタリング
それぞれの特徴を把握し、開業時にうまく活用できるようにしましょう。
融資
資金調達方法として最も有力なのは、日本政策金融公庫や銀行からの融資です。
ただし融資の審査の基準として、自己資金の額が重要となってきます。自己資金の額により融資の金額も決まるため、融資を前提に開業を検討している場合には、まとまった自己資金の準備が必要なことを覚えておきましょう。
助成金の活用
融資を受ける以外に、国や自治体による助成金を活用するという方法もあります。
助成金は条件を満たし、審査を通過した事業者に対して支給される給付金のことで、返済が不要な点が特徴です。
介護事業者の開業を進める事業者向けに、さまざまな助成金制度が整備されています。特別養護老人ホームの開業を考えている場合には、一度自治体へ問い合わせてみましょう。
ファクタリング
特別養護老人ホームを安定して運営するためには、ファクタリングというサービスがあることを頭に入れておきましょう。ファクタリングとは、売掛債権を用いて資金を調達する方法です。
入居者からの売上や国からの介護報酬は、発生から入金まで約2か月ほどかかる場合があります。一方でスタッフの給与、家賃、水道光熱費、通信費といった支出項目は毎月支払いが必要です。
運転資金が十分でなく資金繰りに苦慮するケースでは、ファクタリングサービスを利用すれば、売上が通常の入金サイクルよりも早く着金して資金繰りが安定します。
ただしファクタリングサービスの利用には、ファクタリング会社への手数料が発生するので注意が必要です。
建築費をおさえるためには
特別養護老人ホームの建築には多額の費用を要するため、建設費用を適切に抑えていく工夫が必要になります。建設費用削減のための工夫を解説していきます。
土地の値段をおさえる
一般的な住宅や賃貸設備を建設する場合と異なり、特別養護老人ホームでは土地の利便性を多少落としても、施設運営に大きな影響を及ぼさないケースがあるのです。
特別養護老人ホームは利便性よりも周辺が静かな環境かどうかや、駐車場などを確保できる余裕があるかといった点が重要となります。
そのため、山間部などを除いた安価な土地の取得を目指すことで、土地の購入費用をおさえることが可能です。
不要な設備を導入しない
施設の利便性を高めようとすると、費用は際限なく上昇します。
施設利用者の快適性を優先しながらある程度のメリハリをつけ、どのような設備や備品の導入が必要かを見極めましょう。
例えば、職員が過ごすエリアのオフィス家具の費用をおさえたり、車両は中古車を選んだりするなど、工夫次第で設備の費用を削減することが可能となります。
特別養護老人ホーム建設の際は専門家に相談を!
特別養護老人ホームの建設の際には、多くの要件をクリアする必要があるため、初めて介護事業に参入を検討している方にとって最初のハードルとなりがちです。
株式会社タカオは多くの介護施設運営の実績を持ち合わせており、土地活用から施設運営まで一貫したサポートが可能です。特別養護老人ホームの建設を検討されている方は、ぜひお問い合わせください。