介護業界にて開業を検討するも、今後の介護業界がどのようになっていくのか分からないことも多いでしょう。
少子高齢化社会とはいえ、現状の課題や今後の見通しを理解しないと計画が立てられません。
この記事では、介護業界の将来性について現状の課題を抑えながら介護業界の今後について解説します。今後の介護業界の将来性について理解し、事業成功のためのポイントを掴み安定的な事業運営にを実現しましょう。
介護業界の現状と抱える課題
現在介護業界が抱える課題について以下3つの項目で解説します。
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現状と課題を事前に把握しておくことで、安定した事業運営に近づくことが可能です。
倒産の増加
福祉施設の倒産数は増加傾向にあります。老人福祉・介護事業において2022年には倒産件数が143件となりました。この倒産件数は前年比76%増加しており過去最多です。
出典:株式会社東京商工リサーチ
少子高齢化社会に伴って需要が増加していると見られますが、入居者の獲得競争が激化したことによって倒産企業は増加しているのが現状です。
また、近年ではコロナウイルス感染症まん延による売り上げの減少や感染対策に要する経費の増加、水道光熱費の上昇、物価高などこれまでとは異なる複合的な要因によって倒産に至るケースもあります。
人手不足
人手不足は介護業界の深刻な問題としてあげられます。2022年の介護労働実態調査では63%の事業所が人材不足と感じていると回答しました。
また、日本は少子高齢化に歯止めがかからないことも人手不足に陥る大きな要因です。今後も高齢者が増え出生率が下がる傾向は続き、介護を必要とする高齢者が増える一方で、介護を担う若い介護者が減る悪循環になるでしょう。
人手が足りず人材不足が続くと、経験や能力のあるスタッフへの負荷が増加することが考えられます。その結果、経験のある一部のスタッフが過労になり離職へ繋がるリスクが発生してしまいます。
介護職員の高齢化
高齢化社会が進行するなか、介護業界で働く職員の高齢化も問題となっているのです。介護業務は身体的な業務も多く、高齢になるにつれ介護職員への負担が大きくなります。
60歳以上の介護職員は平成28年で全体の19.9%となり令和2年は23.8%と年々増加傾向にあります。
介護業界での2025年問題
2025年は「団塊の世代」と呼ばれる、1947〜1949年生まれが75歳以上になる年です。
「2025年問題」とは、約800万人の人口を有するこの世代が後期高齢者になることで、日本社会にさまざまな影響が生じることを指します。
以下に、2025年問題で影響のある3つの項目を解説します。
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それぞれの課題について解説します。
介護難民の増加
2005年に1340万世帯であった高齢者世帯が1840万世帯へと大幅に増えると予測されています。大幅に増加することで介護難民の増加が懸念されているのです。
少子高齢化が一層進み、介護の需要と供給のバランスが悪くなってしまい、介護施設や介護事業所で必要なときに介護サービスが受けられないケースも出てくるでしょう。
介護財源の逼迫
現在、介護保険サービスを利用した場合、利用者は介護サービスにかかった費用の1割(現役並みの所得がある高齢者は2~3割)を支払います。残りは公費と介護保険料が負担をしています。
しかし要介護高齢者が増えることで、介護保険の財源不足から介護保険サービスの利用料や介護保険料の増額も懸念されるでしょう。
2040年の更なる課題
2040年には「団塊の世代の子供」が後期高齢者になる年とされています。2025年よりもさらに高齢化が進むとされ、2040年には高齢者1人を1.5人の現役世代が支えなければならないのです。
厚生労働省の試算によると、2040年に必要な介護人材は280万人です。2019年の職員数よりも、約69万人増やす必要があると指摘されてます。介護業界では、より多くの高齢者を受け入れるための環境整備が課題です。
介護業界の将来性
介護業界の将来性について以下4つの項目を解説します。
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それぞれの項目について解説します。
介護業界の需要増加
令和3年版高齢者白書より、現在日本の高齢者が占める割合は28.8%と公表されました。令和18年には33.3%、令和47年には38.4%となる見込みで、日本の少子高齢化社会は今後も進む傾向です。
高齢者が占める割合が増加するということは、福祉施設の需要が増えることを表します。高齢者の割合が増加し、需要が増えるため介護業界の将来性はありますが、高齢者の需要が増えすぎてしまう懸念があります。
需要が大きすぎると、介護士不足などの問題が発生してしまうので、課題解消のために業界全体での協力が必要不可欠です。
労働環境の改善
人手不足による負担を軽減するために、介護用ロボットの投入や外国人の採用などが進められています。夜間の見守りロボットや職員の身体的負担を軽減するための技術が導入され、今後介護職員の負担は軽減すると考えられるでしょう。
また、育児・介護休業法では子育てや介護と仕事の両立をサポートするために、1日あたりの労働時間を原則6時間以下とすることが可能となっています。
時短勤務に対応できるようになると、出産や育児をしながらでも介護業界で働き続けることができるので、離職してキャリアが中断してしまう心配もなくなります。
処遇の改善
介護需要が将来的に増える見込みにあるのに対して、労働環境や処遇などに関する課題が多いのが現状です。
これらの課題を解決する方法の一つとして、政府は介護業界の待遇改善を進めています。
賃上げの実施では、2022年2月より介護職員の給与を3%の引き上げ(平均9000円)が決定しました。あわせて継続的な賃金引き上げを目的として3%の引き上げ(平均9000円)も決まり、月給で合わせて平均18,000円の引上げとなります。今回は一時的なものとなっていますが、今後も賃上げの検討がされていくようです。
離職率の減少
介護職の離職率は年々減少の傾向にあります。労働環境や処遇改善がされ始めた効果が出てきているでしょう。
しかし離職率の減少に比べて、採用率の下がり幅のほうが大きい状況です。離職率は緩やかな減少なので、今後も人材不足が続くと予測されます。
出典:介護労働実態調査
介護業界での事業を成功するためのポイント
介護業界での事業を成功させるためのポイントを以下3つの項目で解説します。
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それぞれの成功するためのポイントを解説します。
人材教育、待遇面の改善
人材育成を充実させるには、社内教育制度の見直しと優秀な人材の確保が必要になります。社内教育制度を見直し、研修やOJTを通して社員の技術力、モチベーションを向上させましょう。その結果施設のサービスが向上し、集客も増え利益の向上に繋がります。
また、待遇面では処遇改善のため「介護処遇手当」を活用しましょう。介護職員処遇改善加算とは介護職員の賃金改善を目的としたものです。
職員のキャリアアップの仕組み作りや、職場改善を行った事業所へ介護職員の給与アップ分の介護報酬が支給されます。加算制度は届け出を行えば給与加算されます。
IT, ICT技術を導入し業務改善
介護業界では、IT、ICT技術を導入して業務効率の向上が進んでいます。
導入の背景には人材不足や、2025年には団塊の世代が後期高齢者に突入するため、社会保障費の増加が課題となるのです。IT、ICT技術の導入によって効率的かつ高水準のサービス提供を行えます。
以下に導入事例を紹介します。
導入例は勤務シフトの作成サポートシステムです。以前は、勤務シフトの作成はリーダーに一任の状況でした。Excelでの作成に時間がかかり、作成後の修正も度々発生しリーダーに負担がかかっていたのです。また、パソコンに精通していないスタッフもいたため引継ぎが行えない状態となっていました。
導入後は、最小の労力で公開的な勤務シフトの作成が容易になり、作業時間が大幅に短縮できました。さらには、システム導入により、客観的で公平なシフトが誰でも作成できるようになり業務の引継ぎが容易になっています。
人材の確保
人材確保においては労働環境や処遇の改善等があげられますが、近年では外国人やワークシェアリングを導入するなど別観点での人材確保も必要でしょう。
ワークシェアリングは特定の業務を切り分けて働きたい人と施設それぞれの要望とマッチングするため、人材を集めやすいという点が特徴です。ワークシェアリングにより、一人ひとりが担当する業務はシンプルになります。
介護現場としては介護の担い手が増えることで人材不足が補え、介護職員の負担を軽減することができるでしょう。
また、ワークシェアリングにより介護現場を体験したことで介護職のネガティブイメージが払しょくされ、介護人材の確保につながる可能性があります。
介護業界の将来性を考慮した、介護事業の運営をしよう
介護業界は需要もあり、今後伸びていく業界となります。
現状課題もあり撤退・倒産してしまう事業が多いですが、どんどん改善されていき期待できるでしょう。課題の原因やポイントを理解しながら適切な解決策を検討し、経営を成功させるためポイントをおさえれば、大きな収益を生み出せ、健全な経営が期待できます。
介護事業を検討し、事業立ち上げをされたい方は、介護福祉事業のプロへぜひご相談ください。