土地活用を検討していく中で、介護事業を営むことを視野に入れている方もいるのではないでしょうか。
介護施設経営のイメージには「お金がかかる」「離職率が高い」などのイメージを抱いている方もいるでしょう。
この記事では介護施設の運営を検討する方に向けて、土地活用で介護施設を営むデメリットをはじめに解説します。デメリットを乗り越えて収益をあげるために意識すべきポイントも解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
土地活用で介護事業を営むデメリットとは?
土地活用において介護施設を選択する場合、デメリットについては必ず理解しておく必要があります。
特に、国の制度改定の影響を強く受ける点については、制度の内容を含めてしっかりとポイントを押さえておきましょう。
各項目について詳しく解説していきます。
参入に多額の資金を必要とする
土地活用で介護施設を選択した場合は、土地のオーナーが施設を建設し、介護事業者へ貸し出すことで収益を得る形が一般的です。
そのため、施設を建築するためには、多額の資金を用意しなければいけません。介護施設の建築には少なくとも数千万円~数億円かかることが多いため、参入ハードルは比較的高い事業です。
建物や用地の転用性が低い
介護施設は居室やトイレ、浴室などに専用の設備を導入したり、特殊な間取りを必要としたりするケースが多く、建物を他の施設に転用することが難しいとされています。
介護事業から撤退し、建物を他の事業へ転用する際に、設備や間取りをそのまま利用できない可能性がある点はデメリットとなり得るでしょう。
アパートなどの不動産賃貸業と比べると収益性が低い
介護施設はアパートなどの不動産賃貸業と比べると収益性が低い傾向にあります。
介護施設においては、間取りや設備でクリアしなければいけない基準があり、収益性を優先した間取りを設計しにくい点がその要因です。
しかしアパートなどでは収益を上げにくい立地でも、介護施設では収益が上がることもあります。立地条件によっては介護施設を選択した方がいいケースもあるのです。
事業者撤退のリスクがある
建物を貸している介護事業者が撤退し、介護事業者からの収益を得られなくなるリスクもあります。
介護事業者と長期の利用契約を結び、撤退リスクを少なくすることは可能ですが、収益悪化などやむを得ない理由で事業者が撤退する可能性がある点は理解しておきましょう。
事業者が撤退する主な原因は次の3つです。
国の制度改定
介護施設の収益源には、自治体からの介護報酬というものがあります。介護報酬は3年ごとに改定されます。
直近は介護報酬が引き下げられるケースも多く、介護報酬を収益源として見込みにくくなっていく可能性があるという点は必ず理解しておきましょう。
【介護報酬の改定率の推移】
年度 | 改定率 |
平成15年度 | ▲2.3% |
平成18年度 | ▲2.4% |
平成21年度 | 3.0% |
平成24年度 | 1.2% |
平成27年度 | ▲2.27% |
平成30年度 | 0.54% |
令和3年度 | 0.70% |
厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」をもとに作成
競合の参入
国内では、高齢化により介護事業の需要が高まってきています。
しかし事業者の参入が増加し、利用者を取り合うという可能性も少なくありません。土地活用で介護施設の運営を行う場合は、開業した地域に競合が参入する可能性も検討して、エリアや建設地の選定を行いましょう。
介護人材の不足
介護業界は現在深刻な人材不足に陥っています。2022年の介護労働実態調査では63%の事業所が人材不足と感じていると回答しました。
高齢化に伴って介護を必要とする方が増えていく一方、若者が減り続けると他の業界と人材の取り合いが激しくなります。その結果、介護業界全体で人材不足がより深刻化するという悪循環に陥る可能性も高いといえます。
人材不足が続くと、勤務している少数の介護スタッフへ業務が集中することも考えられます。業務過多になると、スタッフが不満を感じて離職する可能性が大きくなるため注意が必要です。
介護事業者を見極めるポイント
土地活用で介護施設の運営を行ううえで、介護事業者の選定は非常に重要です。介護施設を貸し出す際には事業者撤退が発生しないよう、契約内容や契約期間に注意が必要です。
また、契約を結んでいたとしても介護事業者が契約に反して撤退してしまう可能性もあるため、施設を貸し出す事業者は慎重に選択しましょう。
撤退しにくい事業者の主な特徴について紹介します。
介護報酬に頼りすぎない施設運営を目指す
介護施設の収益源の1つに介護報酬があります。介護報酬は近年減少傾向が続いており、介護報酬制度を収入の柱として考えていると、制度の改定によって収益が減少する可能性が高くなるでしょう。
そのため、介護報酬に頼りすぎないサービス設計を行う必要があります。例えば独自のプログラムを用いたリハビリテーションを提供するなど、介護とは異なる付加価値を加えたサービス提供を行うことで、介護報酬に頼りすぎない施設運営が行えます。
独自の強みを持ち、競合に対して優位性を持つ
介護施設の開業を行う際には、施設の強みを明確にし、競合に対して優位に立てるポイントを明確にしておくことが大切です。
施設の利用を検討している方から契約を獲得したり、現在の利用者が継続的に施設を利用したりしてくれるよう、自社の強みとなる部分を発見しましょう。
しかし、介護保険内のサービスは内容や料金に違いが出にくいため、強みを発見するのが難しいことも多いです。
そこで切り口を変え、他の事業者と異なる強みを作ることが大切です。食事の提供内容に工夫を行ったり、レクリエーションに独自性を加えたりするなど、自社独自の強みを開業前に慎重に設計しましょう。
介護業界の現状とは?
日本では高齢化が進行中ですが、介護業界の現状や将来の需要はどのように変化していく見込みなのかについて、人口統計などの情報をもとに詳しく解説していきます。
高齢者の数は益々増加していく
令和3年版高齢者白書によると、65歳以上の人口は3,619万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も28.8%となりました。(P1)
2040年には、65歳以上の高齢者の人口は3,921万人となる見込みです。
その一方、出生率の低下と人口減少はどんどん進行していくため、働く世代の負担が増えることが懸念されます。
介護人材は2040年には280万人必要になる見込み
高齢者が占める割合が増加するということは、介護施設の需要が増えることを表します。
需要が増えるため介護業界の全体の将来性はありますが、現在介護業界は深刻な人材不足が起こっています。
厚生労働省の試算によると、2040年に必要な介護人材は約280万人です。
これは2019年の介護人材の数から約69万人多いため、業界全体でより多くの人材を育成し、多くの高齢者を受け入れるための環境整備が急務となっています。
介護事業に参入してくる事業者も増えてくる可能性がある
介護に対する需要が高まっていることから、介護施設経営に参入してくる事業者が増える可能性もゼロではありません。
事業者の参入が増えるということは、ライバルが増えることにつながります。今後事業に参入する際には、介護業界全体の需要が高まりライバルが増える中でも収益をあげる工夫が必要となります。
土地活用で介護事業を行うメリットとは?
土地活用で介護施設経営を行うことは、デメリットだけでなく次のようなメリットもあります。
- 郊外の土地でも運営ができる
- 補助金などの優遇制度がある
- 収益が安定している
- 需要が大きい
- 節税効果
介護施設ならではのメリットも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
郊外の土地でも運営ができる
集合住宅や商業施設等の経営が難しいとされる市街地から離れた土地でも、土地活用の候補地として考えられる点が介護施設で土地活用を行うメリットです。
高齢者施設の場合、市街地よりも閑静な住宅街など、静かな環境が好まれる傾向にあります。
主要な駅から離れている土地の場合は、バス停が徒歩圏内にある場所が良いでしょう。車での送り迎えが多い介護施設は、閑静な住宅街でも、あまりに通いにくい場所では利用者が集まりにくい可能性があります。
補助金などの優遇制度がある
現在は介護施設の建設や運営にあたり、国や自治体がさまざまな補助金・助成金などの
制度を設けています。
しかし、今後高齢者の増加に伴い高齢者施設の数も増加した場合は、補助金・税税優遇の制度が変更になる可能性もあるので注意が必要です。
設立する法人が社会福祉法人なのか営利法人なのかでも、受給できる補助金・助成金の種類が異なりますので、開業を行う際は近くの市区町村役場へ相談に行くのがオススメです。
収益が安定している
介護施設運営は、土地と建物を介護事業者に対して貸し出すという形が多いため、収益の安定性が高い事業となっています。
収益化を安定させるためには、介護事業者と可能な限り長期の契約を結べるかどうかがポイントになっています。
契約を行う介護事業者選びは非常に重要なため、専門家へ相談することも視野にいれておきましょう。
需要が大きい
先述のとおり、介護事業は今後の需要増加が見込まれる産業の1つです。一部の施設では入居待ちが発生している施設も見られることから、需要を的確に捉えて良好なサービスを提供する施設であれば、安定的な施設運営が行えるでしょう。
節税効果
土地活用で介護施設を経営する場合、固定資産税や都市計画税、所得税の節税を行える可能性があります。
更地の上に建物が建つ場合、固定資産税は住宅用地で住宅1戸について200㎡までの部分が最大6分の1に減額され、節税効果は高くなります。
所得税については、土地活用で発生するローンや減価償却費などを活用することで調整を行うことができます。
土地活用で介護施設経営を行うことは有力な選択肢の1つ
土地活用で介護施設の経営を行うにあたっては、当然デメリットも多く存在しています。しかし事前にデメリットを把握してしっかりと対処を行えば、介護施設の収益化は可能となります。
介護施設の立上げで不明な点があれば、まずは専門家にヒアリングを実施し、収益化が可能かどうかヒアリングを行うことが大切です。
お悩みの方は、さまざまな土地活用の実績のある株式会社タカオにお気軽にご相談ください。