この記事を読んでいる方は、「自分で障害者施設を開業したい!」という思いを抱いているのではないでしょうか。
しかし、「実際にどのような手順を踏んで、開業すべきか分からない」と悩んでいるかもしれません。
そこでこの記事では、失敗しない障害者施設の開業8ステップを解説します。
必要資金や開業のポイントも併せて紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
障害者施設の種類とは?
障害者施設は、「障害者総合支援法」と「児童福祉法」にもとづくものの2種類があります。
具体的な障害者施設は、以下の通りです。
障害者総合支援法にもとづく障害者施設 |
・ 居宅介護(ホームヘルプ) ・ 重度訪問介護 ・ 同行援護 ・ 行動援護 ・ 療養介護 ・ 生活介護 ・ 短期入所(ショートステイ) ・ 重度障害者等包括支援 ・ 施設入所支援 ・ 自立訓練(機能訓練) ・ 自立訓練(生活訓練) ・ 就労移行支援 ・ 就労継続支援A型 ・ 就労継続支援B型 ・ 就労定着支援 ・ 自立生活援助 ・ 共同生活援助 |
児童福祉法にもとづく障害者施設 |
・ 障害児相談支援 ・ 児童発達支援 ・ 医療型児童発達支援 ・ 放課後等デイサービス ・ 居宅訪問型児童発達支援 ・ 保育所等訪問支援 ・ 福祉型障害児入所施設 ・ 医療型障害児入所施設 |
これらは、1つだけではなく複数併設することもできます。
開業する施設によって適用される法律が異なるため、開業の際は「障害者総合支援法」「児童福祉法」のどちらにも目を通しておきましょう。
障害者施設の開業8ステップ
障害者施設は、正しい手順を踏んで開業しなければなりません。
手順を間違うと開業できなくなるため、この章でしっかりと理解しましょう。
1|情報収集をする 2|事業計画を作成する 3|法人を設立する 4|設備基準を満たす 5|人員基準を満たす 6|運営基準を満たす 7|指定申請をする 8|営業を開始する |
以上の8ステップについて解説していきます。
①情報収集をする
まずは、情報収集をしましょう。
障害者施設に限らず開業する際は、じっくりと時間をかけて準備しなければいけません。
具体的には、開業したい障害者施設の情報に関して公的な機関に問い合わせたり、開業支援サービスを利用したりするのがおすすめです。
また、収集の時期により情報が更新されていない場合もあります。
そのため、情報収集する際は、常に最新のものを確認しましょう。
②事業計画を作成する
次に、事業計画を作成しましょう。
事業計画には、具体的な支援内容や目標、運営方針などが含まれます。
事業計画の作成は必須ではありません。
しかし、障害者施設を開業する際の申請で提出する場合があったり、融資を受ける際に必要になったりするため、事前に作成するのがおすすめです。
また、複数人で障害者施設を開業するのであれば、事業計画を通して関係者全員で共通認識を持っておきましょう。
③法人を設立する
障害者施設の開業申請は、法人しかできないため、必ず法人を設立しましょう。
株式会社、合同会社、社会福祉法人や特定非営利活動法人(NPO法人)など、事業に合った法人を設立してください。
それぞれの法人の特徴は、以下の通りです。
法人 | 特徴 |
株式会社 | ・株式を発行して資金調達し、そのお金で事業をする。 ・出資した人は「株主」となり、会社の利益に応じて配当を受け取れる。 ・株主は株主総会に出席し、経営に参加可能。 |
合同会社 | ・経営者と出資者は原則同じ。 ・株式会社よりも会社設立費用が安く、利益配分の自由度が高い。 |
社会福祉法人 | ・主に、社会福祉事業を目的としている。 ・公益性の高い非営利法人。 |
特定非営利活動法人 (NPO法人) | ・主に、社会貢献活動を目的としている。 ・NPO法人の設立には、役員(監事1名、理事3名)を含めた10名の社員が必要。 |
開業する法人が決定したあとは、書類作成をして法務局に法人登記します。
法人登記に関しては、法務省のホームページを確認してください。
<参考>法務省 商業・法人登記申請手続
④設備基準を満たす
障害者施設を開業するには、法律上定められた広さや設備を備えなければなりません。
場合により内装をリフォームする必要があるため、開業までの準備期間に余裕を持っておきましょう。
設備基準に関しては、以下の記事を参考にしてください。
<関連記事>介護施設の建物の特徴とは?基準や構造を完全解説!
⑤人員基準を満たす
開業する障害者施設の種類により、人員基準は異なります。
保有する資格や、業務の経験年数が厳しく定められている場合があるため、厚生労働省のホームページなどで必ず確認してください。
<関連記事>介護施設経営にはどんなスタッフが必要?業務内容や確保するためのポイントを解説
⑥運営基準を満たす
設備基準、人員基準とともに重要なのが、運営基準です。
利用定員やサービス内容はもちろん、緊急時における体制の整備などをしなければいけません。
運営基準は事業形態ごとに定められているため、厚生労働省のホームページを確認しておきましょう。
⑦指定申請をする
次に行なうのが、都道府県や市町村に対する指定申請です。
障害者施設は、自由に開業してはなりません。必ず、指定申請の手続きをしましょう。
指定申請に必要となる書類例は、以下の通りです。
1|指定申請書 2|指定に係る記載事項【付表】 3|位置図、住宅地図 4|配置図 5|平面図 6|建物の外観および内部の写真 7|他法令遵守の確認票 8|設備、備品等一覧表 9|管理者経歴書やサービス管理責任者経歴書 10|事業計画書 |
提出すべき指定申請書類は、各自治体のホームページで確認してください。
基本的に、申請手続きは事前に予約してから、都道府県や市町村の担当者に提出します。
指定申請書類の提出後、審査に必要な期間は約1ヶ月です。
ただし、提出書類の内容や必要となる資料等の提出状況により変動する場合があるのを把握しておきましょう。
⑧営業を開始する
無事に申請が通れば、指定通知書が発行されます。
ただし、指定された日付になるまで開業してはなりません。
指定日まで営業はできませんが、契約書・利用規約の作成やスタッフの育成、障害者施設の情報公開などは可能です。
ただ何もせずに待っているのではなく、時間を効率的に使いましょう。
障害者施設を開業する際のポイント
ここからは、障害者施設を開業する際のポイントをお伝えします。
ローカルルールに気をつける 補助金・助成金を活用する |
どちらも大切なポイントになるため、しっかり確認しましょう。
ローカルルールに気をつける
障害者施設は、管轄する市役所により、同じ県内であっても定められている要件が異なるかもしれません。
設備基準を例にすると、相談室は個室を準備することが条件となっているエリアもあれば、パーテーションで仕切るだけで良いというエリアもあります。
また、都道府県が変われば、求められる要件が大きく異なる可能性が高いです。
障害者施設をスムーズに開業するためにも、事前に正しい要件について把握しておきましょう。
補助金・助成金を活用する
補助金・助成金を活用すれば、事業の財政的な負担が軽減されます。
補助金・助成金の具体例は以下の通りです。
●社会福祉施設整備補助金
●雇用関係助成金
●地域介護・福祉空間整備等交付金
●次世代育成支援対策施設整備費交付金
それぞれの内容を表でまとめました。
名称 | 内容 |
社会福祉施設整備補助金 | ・社会福祉施設にて、日常生活の支援や技術の指導といった整備をすることで支援される。 ・国は整備費の1/2を補助。 ・都道府県(指定都市・中核市を含む)は、整備費の1/4を補助。 |
雇用関係助成金 | ・複数の助成金をまとめて呼称したもの。 ・従業員の雇用や人材育成に関する取り組みにおいて利用できる。 ・トライアル雇用助成金、人材確保等支援助成金、通年雇用助成金、キャリアアップ助成金、両立支援等助成金、人材開発支援助成金などが雇用関係助成金に当てはまる。 |
地域介護・福祉空間整備等交付金 | ・地方自治体が主体となり、介護施設などの防災・減災対策を推進するのが目的。 ・交付金の対象例は、「非常用自家発電の設備・給水設備の整備」「水害対策における施設の改修」 |
次世代育成支援対策施設整備費交付金 | ・児童福祉施設などの新設や修理、改造、拡張、整備が目的。 ・交付金の補助対象は、社会福祉法人、医療法人、NPO法人などを含む法人格を有する団体。 ・交付金の対象例は、「既存施設における建物の耐震化を図るための改築・補強工事」「既存施設の定員の増員を図るための整備や改築」「防犯対策の強化のための整備」「スプリンクラーの導入」など。 |
国や自治体は、障害者施設の設備投資や運営に活用できる助成金・補助金を複数用意しています。適切な助成金・補助金を活用し、財政負担を減らしながら事業体制を強化しましょう。
障害者施設の開業に関するよくある質問
最後に、障害者施設の開業に関するよくある質問を紹介します。
●障害者施設を開業するために必要な資金は? ●障害者施設を開業するために資格は必要? |
ぜひ、開業の際の参考にしてください。
障害者施設を開業するために必要な資金は?
開業する施設により、必要資金は大きく異なります。
たとえば、訪問系のサービスの場合、一般的な開業資金は約100万円から300万円です。
一方、通所・入所系の施設の必要資金は、約1,000万円から1,500万円ほどになるでしょう。
また、物件やエリアより、さらに費用がかかることもめずらしくありません。
さらに、開業資金とは別に運営資金もかかります。
目安として、3ヶ月から6ヶ月程度は収入なしでも運営できる資金を確保しておきましょう。
障害者施設を開業するために資格は必要?
人員基準を満たしているスタッフを確保していれば、障害者施設を開業するための資格は必要ありません。
しかし、有資格者のスタッフが退職した場合、すぐに新たな人材を確保できるとは限らないため、オーナー自身もいくつかの資格を持っていた方が良いでしょう。
おすすめな資格は、以下の通りです。
■精神保健福祉士
■社会福祉士
■看護師
■准看護師
■理学療法士
■柔道整復師
■介護福祉経営士
これらの資格は持っていて損はないため、ぜひ参考にしてください。
まとめ
この記事では、失敗しない障害者施設の開業8ステップや必要資金、開業のポイントを解説しました。
障害者施設の開業に必要なステップやシステムを理解したうえで、障害者施設を開業しましょう。
土地活用として障害者施設の開業を検討している方は、創業45年以上の経験とノウハウをもつ「タカオ」にぜひご相談ください。