福祉施設の建設を検討している方の中には、必要なコストや設計手順について把握できていない方も多いのではないでしょうか。
福祉施設を建設するためには、提供するサービスに適した建設条件を理解しておく必要があります。また、実績を持つ業者に依頼することで、金利面など有利な条件で資金を調達できるケースもあるのです。
この記事を読めば、建設手順や業者選定におけるポイントが分かります。ぜひ最後までご覧いただき、建設に必要なコストや資金調達について理解を深めましょう。
福祉施設の建設で把握しておくべき特徴
福祉施設の建設で把握しておくべき代表的な特徴について3点をまとめました。
●立地
●規模
●設備基準
ここからは各特徴について詳しく解説していきます。
立地の選定
福祉施設の立地選定は、アクセスの良さ、環境の安全性、および周辺施設の利便性を考慮しましょう。
利用者や家族が施設を気軽に訪れられて、緊急時にも素早く対応できるからです。
また、自然災害が頻発する日本においては、ハザードマップに基づいたリスク評価も必要です。
立地の選定は、利用者の利便性と安全性を考慮して進めましょう。
規模の設定
福祉施設の建設は、建築基準法に加えて、法令にも従う必要があります。なぜなら、利用者が安心して過ごせるスペースを確保しなければならないからです。
例えばデイサービスでは、利用者一人あたりの合計面積が3㎡以上確保されていなければなりません。また、利用定員数の2倍の坪数が設計の目安とされています。
10名定員では20坪、20名定員なら40坪のスペースが必要です。これらの規定を遵守することで、安全かつ快適な環境を利用者に提供できます。
設備基準の確認
福祉施設を節気する際には、設備基準を事前に確認しておきましょう。福祉施設は公共性の高さや利用者の安全性が求められるためです。
例えば、厚生労働省の出す「社会福祉住居施設の設備基準」では、居室の面積や定員などの基準が定められています。
設備基準は法令で定められており、基準を満たしていなければ運営を認められないので、各自治体のホームページなどを確認してください。
福祉施設の種類について
介護施設には多くの種類があり、特徴や提供するサービスは様々です。以下に、主要な介護施設の種類と、それぞれの特徴や目的を解説します。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、民間の企業が運営しており、入居要件は施設によって様々です。自宅のようにプライバシーが保たれた生活空間で、日常生活の支援や健康管理を受けられます。主に「介護付」「住宅型」「健康型」の3タイプがあり、独自のサービスや充実した医療を受けられるでしょう。
ケアハウス
ケアハウスとは、自宅での生活が困難な方が食事や見守りなどのサポートを受けながら生活する施設です。軽費老人ホームC型とも呼ばれ、自治体の助成を受けて運営しているので比較的安価に入居できるでしょう。
ケアハウスには一般型と介護型があります。それぞれの入居要件は以下の通りです。
◯一般型:60歳以上(夫婦の場合は、どちらかが60歳以上であること)
◯介護型:65歳以上かつ要介護度1以上
特別養護老人ホーム(特養)
常時介護が必要な高齢者を対象にした公的な施設で、24時間体制で介護サービスが提供されます。入所基準は、原則として要介護3以上の高齢者です。費用は比較的安めであり、入所希望者が多い傾向にあります。待機者も多く、入所までに数年間かかることも珍しくありません。
介護老人保健施設(老健)
病院からの退院後、自宅に戻るまでのリハビリテーションを主な目的とする施設です。病院と自宅の中間的な施設であり、自宅復帰に必要なリハビリテーションを提供しながら、日常生活の支援も提供します。
サービス付き高齢者住宅(サ高住)
サ高住とは、安否確認などの見守りサービスを受けられるバリアフリーの賃貸住宅です。一般型と介護型の2種類があり、それぞれ特徴は異なります。
一般型 | 自立した高齢者が対象。必要な介護サービスは個別に契約する必要がある。介護度が高くなると、退去しなければならないことも。 |
介護型 | 介護サービスの提供を受けられる。高い介護度の方でも利用できる。 |
認知症グループホーム
認知症グループホームは、認知症の高齢者が少人数グループで共同生活を送る施設です。利用者の最大定員は9名で、落ち着いた空間で過ごせます。利用者は、洗濯干しや食器洗いなど、自分のできることを行うのが特徴です。
福祉施設の建設手順3ステップ
福祉施設を建設する場合、どのような手順を踏むかについて、3つのステップに分けて紹介していきます。
①事業内容と利用者像をイメージする
福祉施設の建設では、事業内容と利用者像をイメージしましょう。事業内容によって、建築基準の要件なども変化します。高齢者を対象にする場合と障害者を対象にする場合とでは、必要な設備も異なるのです。
例えば、転倒リスクの高い利用者を対象とする場合は、衝撃を吸収する床材を採用するなど工夫できることは多くあります。利用者のニーズを早期に満たすことで、集客効果が高まるでしょう。
②立地を選定する
立地選定は、集客やスタッフ募集についても大きく影響します。特に、以下の点については配慮が必要です。
●公共交通などアクセスが良好かどうか
●周辺環境が静かかどうか
●医療機関や商業施設が近隣にあるかどうか
●浸水や土砂崩れなどの自然災害を受けにくいかどうか
特に自然災害については、直接的な被害だけでなく、スタッフの通勤や物資輸送が滞らないかについてリサーチしておくと良いでしょう。
③資金計画を立てる
資金計画には、建設費用の算出と資金調達が必要です。福祉施設では、バリアフリー設計や衝撃を吸収する床材など、特殊な設備の導入が求められる場合があります。そのため、一般の建物と比べてコストアップの要因となりやすいのです。
計画初期から費用を考慮に入れ、必要な設備や機能を優先的に組み込むようにしましょう。
コスト削減のテクニック
福祉施設の建築コストを削減するために、その施設に適した構造を選択しましょう。複雑な形状よりも、シンプルな方が使い勝手もよく、建設コストを抑えられる場合があります。建設の「どの部分にどのくらいのコストが必要なのか」を早期に把握し、取捨選択を検討することが大切です。
また、福祉施設としてコストダウンをするべきではない部分を把握することも忘れてはいけません。例えば、毎日利用する設備や水回りなどには必要な費用をかけるべきです。耐久性をおろそかにすると、短期間での修理が必要となり、かえってコスト高になってしまう恐れがあるからです。
利用可能な補助金や助成金
社会福祉施設は、高齢者や障害のある方々に日常生活の支援や技術指導を提供することを目的としています。施設の整備には、国や地方公共団体からの補助金や特別な助成制度が利用できます。
2005年からは「地域介護・福祉空間整備等交付金」や「次世代育成支援対策施設整備費交付金」などの助成が創設されました。社会福祉法人が施設を整備する際には、独立行政法人福祉医療機構からの融資も受けられます。
業者を選ぶ際のポイント
業者を選ぶ際には、押さえておくべきポイントがあります。
1.実績が豊富か
2.経験と専門知識が豊富か
3.総合的なサポートがあるか
4.資金調達に強いかどうか
それぞれ詳しく解説します。
実績が豊富か
建設業者を選ぶ際には、実績が豊富かどうかが重要です。介護施設には、バリアフリー設計や安全基準などの高度な技術が求められます。実績が豊富であるのは、建設業者として厳しい基準に対応できる技術力を持っている証明です。
また、実績豊富な業者が建設した施設は、信頼性の高さから利用者に好まれます。そのため、運営や安全面の観点から実績の豊富な建設業者を選ぶのが良いでしょう。
経験と専門知識が豊富か
業者の経験と専門知識は、福祉施設の建設において非常に重要です。福祉施設はその種類によって、提供するサービスに合わせた特定の構造や建築基準が求められます。
例えば、高齢者向けの施設と障害者支援施設では、設計要件が異なるため、それぞれのニーズを理解していることが必要です。多様な施設の建設経験と適切な専門知識を持つ業者を選定することで、プロジェクトの成功につながるでしょう。
総合的なサポートがあるか
業者選定に際しては、プロジェクトの計画立案から実施、アフターフォローまで、総合的なサポートを提供できる業者を選びましょう。また、予算や工期に関して気軽に相談できる柔軟性や施設の長期的なメンテナンスを任せられる業者を選ぶことが必須です。
資金調達に強いかどうか
福祉施設の建設は多くの場合、金融機関から融資を受けて進められます。実績が豊富な建設業者は、複数の金融機関と取引があるため、融資の打診時に条件の良い融資先を紹介してもらえます。
個人が直接問い合わせるよりも、より有利な金利条件で融資を受けられる可能性があるため。資金調達に強い業者を選ぶようにしましょう。
まとめ
今回は、福祉施設の建設に関するコストや設計、資金調達の詳細について解説しました。
建設には立地選定や規模設定、適切な設計基準を確認しておくことが重要です。また、施設の種類は多様であり、それぞれの特徴や提供できるサービスについても把握しておきましょう。
施設の建設には、資金計画やコスト削減のテクニックなども必要です。資金調達においても、実績がある業者であれば、個人で問い合わせをするより有利な条件を引き出せる可能性があります。建設後に適切なサポートを受けられることも、持続的な施設運営に欠かせません。
タカオでは、豊富な実績からご要望にあった物件情報の提案をいたします。福祉施設の建設で困ったことがあれば、建設のプロであるタカオに是非ご相談ください。