日本は超高齢社会を迎えたことで、介護に対する需要が高まっており、それに伴い新規参入企業も増えています。
この記事では、介護施設の経営に興味のある方に向けて、経営の実態や介護施設を経営するメリット・デメリット、初期費用などを紹介しています。
おすすめの資格や介護施設経営初心者が抑えておくべき経営のポイントなどについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
介護施設経営は儲かる?収益構造を解説
介護施設の主な収入源は、利用者が支払う利用料と介護給付費からなる介護報酬です。利用者が負担する費用はサービス提供の翌月に、介護給付費は翌々月に入金される仕組みとなっています。
そのため、介護施設の経営にこれから取り組もうとしている人は、サービス提供から入金までにタイムラグがあると理解して資金を準備しておきましょう。
介護経営者の平均年収
介護施設では、施設のトップのことを施設長と呼びます。公益財団法人 介護労働安定センターの介護労働実態調査によると施設長の平均月収は383,228円でした。年収にすると450万円以上です。
また、事業所別に見ると、介護サービスを提供する施設の上地、入所型の施設の管理者は、556,755円/月でした。施設の規模が大きくなると月給も高くなる傾向にあります。
介護施設は提供するサービスが似たようなものになりがちで、差別化が難しいこともあって利益を上げにくい仕組みです。しかし、利用者を確保し、差別化につながる付加価値を提供することで高年収も不可能ではありません。
出典:令和4年度 介護労働実態調査結果
介護施設経営の実態
「介護施設の経営は儲かる」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、介護施設の倒産は少なくありません。ここでは介護施設経営の実態を倒産件数から解説します。
介護施設の倒産は少なくない
介護施設は、人手不足や競合の増加、物価高などの影響から倒産件数が増えています。東京商工リサーチの調査によると、2023年には「老人福祉・介護事業」で122件の倒産を記録しており、過去2番目の数値です。中でも訪問介護事業者の倒産件数は、過去最多を記録する67件でした。
日本が超高齢社会を迎えており、2024年度の介護報酬は1.59%のプラス改定となるなど、介護施設の経営に好影響を与えそうな要素は多くあります。
しかし、決して安心できる状況とはいえません。
出典:東京商工リサーチ
倒産につながりやすいケース
介護施設の経営で倒産につながりやすいケースとしては、人手不足があげられます。超高齢社会を迎え介護に対する需要が高まる一方で、介護職員の人手不足に悩む施設は少なくありません。
介護の仕事にネガティブなイメージを持っている人が多く、飲食業など同じ人材不足に悩む他業界との人材獲得競争も激化しています。
そのため、ただ募集を出すだけでは人材が集まらず、経営を圧迫する可能性があります。
また、介護業界に新たに参入してくる企業もいるなど、競合の増加も倒産を引き起こす要因の1つです。近隣に同じタイプの介護施設が複数あるケースも少なくありません。競合を回避するためには、地域のニーズを把握して付加価値を提供する差別化が求められます。
介護施設経営のメリット・デメリット
介護施設の経営には、メリットとデメリットの双方があります。そこでここでは具体的にどういったメリット・デメリットがあるのか解説します。
メリット・デメリットを把握しておくことで経営時のリスク管理をしやすくなるほか、利益を上げるために何をすればいいのか考えやすくなります。
これから介護施設の経営を始めようとしている人や興味のある人はぜひ参考にしてください。
メリット
介護施設経営のメリットの1つが、介護に対する需要の高さです。日本は超高齢社会を迎えており、今後ますます高齢者が増えていくことが予想され、介護施設に対する需要も高まると考えられます。
介護事業を新たに始める場合には、助成金も用意されているため、資金面でのハードルが低くなります。
また、税制面で有利になる点も介護施設経営の メリットです。住居系の介護施設であれば、固定資産税の減免が適用されます。
このように、需要の高さや助成金の活用など、経営者にとってのメリットは多いため、大きな利益を上げられる可能性は十分にあります。
具体的な助成金については、以下の記事を参考にしてください。
介護施設を開業するときに利用できる助成金!有効活用して資金繰りを楽にしよう
デメリット
介護施設経営のデメリットの1つが、競合の増加です。介護施設に対する需要の高さから、新規参入企業が増えています。競合が増えると利用者が分散し、利益をあげにくい状況になるため、注意しなければなりません。
また介護施設は間取りや設備の特殊性もあって、転用しにくい点もデメリットです。例えば土地を活用するために介護施設を建て、事業者に運営を任せていたものの、事業者が撤退してしまう可能性があります。
次の事業者がすぐに見つかれば問題ありませんが、見つからなければ、建物だけが残ってしまいます。事業者が見つからない期間も税金やローンは発生するため、負担は大きくなるでしょう。
介護施設を経営するための初期費用
新たに介護施設を建設し、開業するためには約200〜2,000万円がかかるとされています。費用に幅があるのは、訪問介護や通所介護などの小規模で比較的コストを抑えて始められる施設もあるためです。
一方で通所介護など、施設にある程度の広さが求められる場合は、初期費用も高額になります。
さらに、開業直後は、ランニングコストとして一定期間の人件費や水道光熱費、食材費、車両費、消耗品費などを確保しなければなりません。施設の規模にもよりますが、1カ月で200~300万円程度かかると考えておきましょう。
資金の調達方法
介護施設を経営する場合、資金を調達してから開業するのが基本です。資金の調達方法には、以下のようなものがあります。
●金融機関からの融資
●自己資金
●家族や知人からの借入
●助成金
融資を依頼する際は、事業計画を詳細に説明する必要があるほか、提出書類も多いため、事前に何が必要なのか確認しておきましょう。
また、規模の小さい介護事業の場合は、自己資金での開業も可能です。
家族や知人からお金を借り入れる場合、トラブルに発展するケースもあるため、返済条件などは明確にしておかなければなりません。
国や各自治体などが提供する助成金で全ての費用をカバーすることはできませんが、費用負担を抑えることが可能です。
初期費用を抑えるコツ
介護施設の経営にかかる高額な初期費用を抑えたい場合、設備コストの削減を検討してください。サービスの質を重視するあまり、最新の高額な設備を次々に導入してコストがかさむ恐れがあるためです。
導入に当たっては、施設の利用者像を明確にし、使用が想定されるかどうかが大切です。ただし、設備投資を最小限に抑えてしまうと、競合との差別化が難しくなるため、バランスを考慮しましょう。
介護施設経営者が持っておきたい資格
介護施設の開業・経営は、管理者を対象とした指定前研修を受けなければなりません。研修を受けたうえで、自治体に指定申請をすることで介護施設を開業できます。
そのほかにも、経営者であれば介護福祉経営士の資格がおすすめです。介護福祉経営士は、一般社団法人日本介護福祉経営人材教育協会が運営する認定資格です。介護福祉経営に関する法律や財務会計、リスク管理、人材育成などの知識の習得、およびそれらの知識を実務で活用できる人材の育成を目的としています。
介護施設経営初心者が押さえておきたいポイント
ここでは介護施設経営をこれから始めようとしている初心者に向けて、経営にあたってのポイントを紹介します。基本的なポイントですが、非常に重要なものであるため、ぜひ参考にしてください。
法制度改正に対応する
介護に関する法律は毎年のように改正されるため、法改正に常に対応できるようにしなければなりません。例えば、公的介護保険は3年ごとに制度を見直します。法改正や制度変更に対応できずに倒産するケースもあるため、動向を常に追うようにしましょう。
地域のニーズを把握する
施設を建てようとしている地域では、どのようなニーズがあるのか入念にリサーチを行いましょう。介護は有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、訪問介護など、施設やサービスの種類は多岐に渡ります。
建設予定の地域ではどういった施設がすでにあるのか、他の施設が提供していないサービスはあるのかを把握すると競合と差別化が図れるでしょう。
事業者を慎重に選ぶ
土地を活用して介護施設を経営する場合、事業者選びは慎重に行う必要があります。事業者の希望を確認しつつ施設を建設するため、先に建物を建てないように注意してください。また、事業者が撤退すると、別の事業者を探さなければならないため、契約は長期で結ぶことを前提とし、途中解約にはペナルティをつけるなどの対策も必要です。
事業者選びのポイント
事業者を選ぶ場合、提供しているサービス内容をチェックしましょう。介護施設で提供するサービスはどこも似たようなものになりがちですが、他の施設にはないサービスを提供している事業者であれば、サービスに魅力を感じ利用を検討する人も出てくるでしょう。
また、介護報酬に頼り切った施設経営になっていないかもチェックするべきポイントです。介護報酬は定期的に見直しがされるため、将来も安定した利益を上げられるとは限りません。例えば、独自プログラムによるリハビリを提供するなど、介護の枠を超えた付加価値を提供できる事業者であれば、介護報酬頼りの経営とはならないでしょう。
まとめ
超高齢社会となったことで介護に対する需要は高い状態にありますが、介護事業に参入する企業も多いため、倒産件数も多くなっています。
経営にあたっては入念にリサーチを行い、利用者のニーズを把握するなどの徹底した準備が必要不可欠です。また、助成金を活用するなどして、費用負担を軽くすることも大切です。
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