介護施設の中には、「特定施設入居者生活介護」と呼ばれる施設があります。
サービス付き高齢者住宅(以下、サ高住)の中にも特定施設は存在し、サ高住全体の7%を占めています。
このように割合は少ないですが、一般的なサ高住と比べて介護体制が充実しているなどの特徴があります。
本記事では、「特定施設入居者生活介護 サ高住」を一般的なサ高住と比較して解説します。
サ高住の運営を検討している方はもちろん、サ高住を利用したい方にも役立つ情報が載っていますのでぜひ参考にしてください。
特定施設とは
そもそも、特定施設とはどのようなものなのでしょうか?
正式名称は「特定施設入居者生活介護」ですが、一般的に「特定施設」と略称されます。
特定施設は、介護保険法に基づき、厚生労働省の定めた基準を満たしている施設です。
入居者に対するサービス内容は、以下の通りです。
⚫️ケアプラン(介護サービス計画書)の作成 ⚫️ケアプランに基づいた、食事・入浴・排泄などの身体介助 ⚫️その他の日常生活に関わる身体介助 ⚫️機能訓練(リハビリテーション) |
施設の種類
特定施設の種類は、大きく分けて4つあります。
⚫️有料老人ホーム ⚫️サービス付き高齢者向け住宅(一部のみ) ⚫️ケアハウス(軽費老人ホーム) ⚫️養護老人ホーム(原則、要介護高齢者は対象ではありません) |
有料老人ホームの場合、自治体から「特定施設」の指定を受けると「介護付」の言葉を使用できます。
ホームページやパンフレットなどに「介護付」の記載がある有料老人ホームは、一目で「特定施設」だと判断できるのです。
また、特定施設の指定は、基本的に自治体の判断で制限されます。
そのため、特定施設の基準を満たす施設を開設しても、自治体から「特定施設」の指定を受けられない施設は無数に存在します。
施設の基準
この章では、「特定施設サ高住」と「一般的なサ高住」の基準の違いについてお伝えします。
人員基準、設備基準、運営基準の3つの観点から解説しますので、ぜひ参考にしてください。
特定施設のサ高住 | 一般的なサ高住 | |
人員基準 | ・要介護の入居者3名に対して介護職員、もしくは看護職員が1名以上配置 ・介護スタッフが24時間365日常駐 | ・ケアの専門家(※)のいずれかが少なくとも日中施設に常駐 ・常駐しない時間帯は、緊急通報システムにより対応 |
設備基準 | ・介護居室は原則個室 ・地下ではない ・一時介護室、適切な浴室、トイレ、食堂、機能訓練室などが必要 ・入居者が車椅子で円滑に移動することが可能な空間と構造 | ・居室は25㎡ ・バリアフリー構造(廊下幅の確保、段差解消、手すり設置)など ・各専用部分に、原則台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備える |
運営基準 | ・入居者に合わせたケアプランを作成 | ・具体的な運営基準はないが、安否確認と生活支援のサービス提供は義務 ・介護サービスの提供は行わない |
※社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業所等の職員、医師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、介護職員初任者研修課程修了者
特定施設入居者生活介護 サ高住とは
特定施設入居者生活介護 サ高住とは、介護保険法に基づき、厚生労働省の定めた基準を満たしている施設を指します。
一般的なサ高住よりも、厳しい基準を満たしており、介護職員による手厚いサポートを受けられるのが特徴です。
一般的なサ高住との違い
ここからは、特定施設入居者生活介護 サ高住と一般的なサ高住との違いを、サービス内容、費用、職員の観点から紹介いたします。
どのような違いがあるかを把握して、サ高住運営やサ高住利用の際の参考にしましょう。
サービス内容
サービス内容の違いは、以下の通りです。
⚫️一般的なサ高住は、安否確認と生活相談のみ
⚫️一般的なサ高住は、介護サービス利用の際、個別に介護事業者との契約が必要
⚫️特定施設サ高住は、施設が介護保険サービスを24時間提供
特定施設サ高住には、介護職員または看護職員が、夜間も含めて24時間常駐しているため安心して生活できます。
費用
費用の違いは、以下の通りです。
⚫️一般的なサ高住は、個別に契約した介護サービスを利用分支払う
⚫️特定施設サ高住は、介護度ごとの定額制
特定施設サ高住では、介護サービスの料金が毎月定額のため大幅な料金変動がありません。
職員
職員の違いは、以下の通りです。
⚫️一般的なサ高住の介護職員は、施設外部の訪問介護事業所の職員
⚫️特定施設サ高住の介護職員は、施設の職員
特定施設サ高住では、顔なじみの施設職員が介護サービスを提供するため、入居者は安心してサービスを受けられます。
特定施設サ高住のメリット
続いては、特定施設サ高住のメリットをお伝えします。
⚫️介護サービス利用料の定額化
⚫️介護体制が充実している
⚫️居住空間が安全で快適
⚫️介護度が上がっても退去の必要がない
1つずつ見ていきましょう。
介護サービス利用料の定額化
介護サービス利用料の定額化は、利用者にとってメリットの1つです。
1ヶ月ごとの定額制のため、介護度が高い方は安心して介護サービスを利用できるでしょう。
定額制で大幅な料金変動がないため、入居後にかかる費用感を具体的にイメージしやすくなります。
介護体制が充実している
職員体制が手厚く、介護体制が充実していることも大きなメリットです。
特定施設サ高住では、介護スタッフが24時間365日常駐し、医療機関と連携しています。
そのため、入居者に異変が見られた際でもスムーズな処置ができ安心です。
居住空間が安全で快適
特定施設サ高住の居住空間は、安全で快適です。
バリアフリーの充実や車椅子でも移動しやすい広さが確保されているなど、安全な生活環境が整っています。
介護度が上がっても退去の必要がない
介護度が上がっても退去の必要がないのは、特定施設サ高住のメリットです。
一般的なサ高住の場合は、介護度が上がったり認知症を発症したりすると、退去を要求されるかもしれません。
一方、特定施設サ高住であれば、重度要介護者や認知症の場合でも、そのまま住み続けられます。
特定施設サ高住のデメリット
特定施設サ高住のデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?
⚫️利用者が生活に不満を感じる場合がある
⚫️介護事業者を選べない
⚫️介護度とサービスがミスマッチの可能性がある
1つずつ解説していきます。
利用者が生活に不満を感じる場合がある
特定施設サ高住では、利用者が生活に不満を感じる場合があります。
重度要介護者や認知症の方も入居しているため、全体的にセキュリティや管理の問題があるからです。
例えば、利用者の安全を守るため自由に外出できなかったり、外部の介護事業者を自由に選べなかったりします。
そのため、特定施設サ高住は一般型なサ高住に比べて、生活する上で不自由を感じる方もいるでしょう。
介護事業者を選べない
基本的に、特定施設サ高住では施設で提供している介護サービスしか受けられません。
今まで利用していた介護サービスの継続利用ができないため、提供される介護サービスに不満を持つこともあるでしょう。
介護度とサービスがミスマッチの可能性がある
人によっては、介護度とサービスにミスマッチが起こる可能性があります。
特定施設サ高住では、介護保険の満額を支払い介護サービスを受けます。そのため、介護度が低い方は入居費用を割高に感じることもあるでしょう。
介護サービスをそれほど必要としない場合は、住宅型や一般型のサ高住など他の施設利用の検討をおすすめします。
特定施設入居者生活介護の指定を受けるには
ここからは、特定施設入居者生活介護の指定を受ける手順をお伝えします。
正しい手順を踏まなければ、特定施設の指定を受けられないため注意しましょう。
まず、開設予定の市区町村と都道府県での事前相談が必須です。高齢者保健福祉計画との整合性を確認する必要があるため、自治体の公式サイトを確認してください。
「指定可能」の通知を受領した後は、事業開始予定日の前々月の末日までに特定施設入居者生活介護の指定申請をします。
その後、現地確認が行われ、翌月の1日に特定施設の指定を受けられます。
この手順は、都道府県ごとに異なるため、指定を受ける前に必ず詳細を確認しましょう。
特定施設のサ高住に指定されたときの注意点
最後に、特定施設のサ高住に指定されたときの注意点を解説します。
特定施設の指定を受けると、行政からのチェックが厳しくなるので、施設管理者は必ず確認しましょう。
主な注意点は、以下の通りです。
⚫️人員基準や設備基準、運営基準の維持 ⚫️必要書類の適切な管理 ⚫️定期的な職員研修の開催 |
1つずつ解説していきます。
人員基準や設備基準、運営基準の維持
特定施設の指定を受けたあとも、人員基準や設備基準、運営基準を維持しなければいけません。
これらの基準を維持できないと、特定施設の指定が取り消されるため、定期的に確認しましょう。
必要書類の適切な管理
施設管理者は、サービス提供に関する全ての書類を適切に管理します。
必要書類が、常に最新の状態に保たれていないと特定施設として運営できなくなってしまいます。
厚生労働省のウェブサイトを確認して、常に書類を最新の状態に保ちましょう。
また、必要書類は自治体ごとに異なるため、各自治体に直接問い合わせることをおすすめします。
定期的な職員研修の開催
職員が質の高いサービスを提供できるよう、定期的な職員研修を開催してください。
介護技術や知識の向上を図り、特定施設として利用者に安全で快適な生活を提供しましょう。
<参考>介護サービス情報公開総合サイト
まとめ
本記事では、「特定施設入居者生活介護 サ高住」を一般的なサ高住と比較して解説しました。
一般的なサ高住と比べて、特定施設サ高住には厳しい基準が設けられています。
しかし、細かな基準を1人で全て把握するのは困難です。
福祉施設の新規開設には、不動産(土地)取得から施設建築等のハード面と、資金調達や行政機関への指定申請、スタッフ募集等のソフト面の両面での準備が不可欠です。
タカオでは、建築・開設準備を総合的に確認できるようスケジュール表を作成し、開設までの全ての工程で様々なサポートをさせていただきます。
興味のある方はぜひご相談ください。