サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)の建設費用は2億円程度で高額です。
しかし、日本の高齢化が進みサ高住の需要が高まっているため、建設に対する待遇は手厚くなっています。
本記事では、サ高住の建設で使える補助金制度と収支シミュレーションについて解説いたします。
土地活用でサ高住の建設を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
そもそもサ高住とは?
サ高住の正式名称は、「サービス付き高齢者向け住宅」です。
比較的要介護度が低い高齢者を対象とした、バリアフリー対応の賃貸住宅を指します。
サ高住は、一般型と介護型の2種類に大きく分けられるのが特徴です。
一般型 | 外部の事業所の訪問介護スタッフが介護サービスを提供 |
介護型(特定施設) | 施設内のスタッフが介護サービスを提供 |
一般型と介護型の大きな違いは、介護サービスを施設内で提供しているか外部事業所の訪問スタッフが提供しているかです。
ここで、サ高住の現在の登録状況を見てみましょう。
<出典>サービス付き高齢者向け住宅の登録状況(R6.3末時点)
サ高住の登録状況は右肩上がりで、今後も需要が高まっていくと予想されます。
需要のあるサ高住は土地活用で建設する施設として、ふさわしいと言えるでしょう。
サ高住の建設費用
サ高住の建設には、最低でも2億円はかかるでしょう。
なぜなら、サ高住は、居室の広さや設備、バリアフリーなどの登録条件を満たす必要があるからです。
200〜300坪クラスのサ高住の建設費用を、表でまとめました。
建築費用 | 1億4,000万〜2億1,000万 |
土地の購入費 | 5,000万〜7,500万(1坪25万で計算) |
設備・備品費用 | 1,500万円 |
合計 | 2億500万〜2億9,000万 |
このように、サ高住の建設には、最低2億はかかることが分かります。
居抜き物件を取得した場合でも、サ高住の基準を満たす大規模なリフォームが必要です。また、ベットやテーブル、椅子などの什器が必要になるため、1億程度のまとまった費用が必要になるでしょう。
リフォーム代の目安は、以下の通りです。
リフォーム代 | 3,000万〜7,000万 ※坪単価15万〜35万、200坪を想定 |
上記のリフォーム代は、あくまでも目安です。
詳細な見積もりは、専門業者に相談しましょう。
<関連記事>:介護施設に必要な設備とは?他の介護施設と差別化するポイントについても解説
サ高住の税制優遇
ここからは、サ高住の税制優遇について紹介いたします。
サ高住を新設すると、固定資産税や不動産取得税などの税制優遇を受けられます。
税制優遇は、運営コストを削減して収益性を高められるため、経営者にとって大きなメリットです。
固定資産税
サ高住の新築後5年間は、固定資産税額の3分の2が軽減されます。
減税率は、市町村の条例により異なりますが、税額の1/2〜5/6の範囲で軽減されるのが一般的です。
また、対象となるのは賃借部分のみで、上限は1戸あたり120㎡相当分となります。
不動産取得税
一般住宅を新築する際と同じように、サ高住も不動産取得税の優遇を受けられます。
家屋については1戸あたり1,200万円が課税標準から控除されます。
また、土地については4万5,000円または土地の評価額の一定割合が税額控除の対象です。
<参考>サービス付き高齢者向け住宅における税制優遇の概要(国土交通省)
サ高住の補助金制度
サ高住の建設では、税制優遇だけではなく補助金制度も活用しましょう。
補助金制度を利用するためには、定められた要件を満たさなければいけません。
実際にどのような要件があるのか、解説いたします。
補助金を受けるための要件
補助金を受けるための要件は、「サ高住の登録基準」と「補助金申請に必要な要件」の2種類があります。
1つずつ見ていきましょう。
サ高住の登録基準
サ高住の登録基準は、以下の通りです。
⚫️床面積が原則25㎡以上であること
⚫️バリアフリー構造であること
⚫️トイレ・浴室・洗面所の設置など一定の基準を満たしていること
⚫️安否確認サービスと生活相談サービスを提供すること
⚫️長期的な高齢者の居住の安定が図られた契約を交わしていること
⚫️家賃や敷金、サービス対価以外の金銭を徴収しないこと
補助金申請に必要な要件
補助金申請に必要な要件を一部抽出しました。
⚫️サ高住として登録された住宅であること
⚫️高齢者住まい法に基づくサ高住として10年以上登録・運営するものであること
⚫️入居者が支払う家賃が近傍同種の住宅の家賃相場を逸していないこと
⚫️事業に要する資金調達が確実であること
⚫️入居者からの家賃徴収を前払いに限定していないこと
⚫️市町村のまちづくり方針に支障を及ぼさないと認められこと
⚫️入居者が任意の事業者による介護サービスを選択、利用できること
⚫️介護サービス等の運営情報を開示し情報の更新をすること
⚫️家賃限度額は、各所在市区町村に応じた設定額とすること(11.2~24.0万円/月)
⚫️新築のサ高住は原則として省エネ基準に合わせること
⚫️市町村地域防災計画に位置づけられたサ高住について、避難計画を作成し、避難訓練を行うこと
以下の要件に当てはまる場合は、補助金の対象外となります。
⚫️家賃が月30万円以上/戸
⚫️事業目的の達成に不必要な資金、またはサ高住に関係のない設備投資
市区町村により要件は異なるため、詳細は「国土交通省の公式サイト」または「各自治体のホームページ」で確認してください。
<参考>令和4年度サービス付き高齢者向け住宅整備事業 交付申請要領(国土交通省)
実際にもらえる補助金額
実際にもらえる補助金額は、新築と改修工事の場合で異なります。
それぞれ、どのような特徴があるのか見ていきましょう。
新築の場合
新築の補助金上限額は、建築費の10分の1です。
新築の補助金額上限 | |
床面積30㎡以上 | 135万円/戸 |
床面積25㎡以上 | 120万円/戸 |
床面積25㎡未満 | 70万円/戸 |
135万円/戸の限度額の適用は、補助申請する住戸数の2割以内の戸数と定められています。
2割を超える場合は、120万円/戸となるため注意しましょう。
改修工事の場合
改修工事の補助金上限額は、建築費の3分の1で限度額は195万円/戸となります。
あくまでも、補助金はサ高住の共有部分およびバリアフリー化に関する工事や、用途変更のため建築基準法などの法令に適合させるための工事が対象です。
サ高住の事業目的とは関係のない、外観に設置する装飾などは対象外になるので注意しましょう。
サ高住の補助金を受け取るまでの5ステップ
続いて、サ高住の補助金を受け取るまでの5ステップをお伝えします。
①都道府県へサ高住の登録申請をする
②サ高住事務局に交付申請書を提出する
③事業を開始する
④サ高住事務局に完了実績報告書を提出する
⑤補助金を受け取る
正しい手順を踏み、補助金をスムーズに受け取りましょう。
①都道府県へサ高住の登録申請をする
まずは、都道府県へサ高住の登録申請をします。
各自治体で異なる基準を設けている場合もあるため、事前に登録窓口で確認しましょう。
②サ高住事務局に交付申請書を提出する
登録申請のあとは、サ高住事務局に交付申請書を提出します。
補助金申請に必要な書類は、以下の通りです。
⚫️サ高住登録通知の写し(登録申請書の写し)
⚫️委任状
⚫️印鑑証明書
⚫️工事内訳書
⚫️申請建物の平面図・配置図・案内図
⚫️住戸タイプ別の平面詳細図
⚫️用途別求積図・面積表
⚫️按分面積表
⚫️建設工事発注先の妥当性説明書
⚫️事業費統括表
⚫️需要予測書
⚫️地域との連携計画書
⚫️意見聴取における回答書の写し
⚫️既存物件の運営情報公開報告書
⚫️ローン審査に通過したことの証明書類 など
融資を受ける場合は、交付申請書の提出時に金融機関からの内諾を得ているか申告しなければいけません。
計画性を持ち、必要書類を揃えましょう。
③事業を開始する
交付決定通知書が届いたら、事業を開始できます。
こちらの記事で、サ高住の経営のコツや注意点を紹介しているので、参考にして下さい。
<関連記事>サービス付き高齢者向け住宅を経営するコツは?注意点もあわせて解説
④サ高住事務局に完了実績報告書を提出する
工事終了後は、サ高住事務局に完了実績報告書を提出しましょう。
事務局は、完了実績報告書をもとに最終的な補助金額を決定します。
⑤補助金を受け取る
補助金額の確定通知後に補助金を受け取ります。
実際に支払われるタイミングは、確定通知から約2ヶ月後です。
補助金を受け取った場合、その後10年間にわたり事務局に対して運営状況などの報告をする義務があるので、しっかりと把握しておきましょう。
サ高住運営で得られる収入
最後に、サ高住運営で得られる収入を紹介いたします。
⚫️サービス料金
⚫️敷金・礼金・家賃
それぞれ解説していきます。
サービス料金
サ高住運営では、サービス料金を収入として得られます。
サ高住は、「高齢者が安心して自立できる暮らし」を実現するためにサービス提供している施設です。
そのため、提供するサービス内容は、入居者により異なります。
サービス内容の例は、以下の通りです。
食事の提供
夜間の見回り
買い物付き添いの生活支援
どのようなサービスを提供するかは、入居者の経済面や収益面などをバランスよく考慮して決定しましょう。
敷金・礼金・家賃
敷金・礼金・家賃が、サ高住の収入源です。
サ高住は一般的なマンションやアパートと同じ「賃貸借契約」を利用者と結びます。
入居時に支払われる敷金・礼金と、毎月支払われる家賃が主な収入です。
<参考>サービス付き高齢者向け住宅の参考とすべき入居契約書の概要
まとめ
本記事では、サ高住の建設で使える補助金制度と収支シミュレーションを解説しました。
サ高住の建設費用は約2億円かかりますが、補助金や税制優遇を活用して費用を抑えられます。
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