障害者施設立ち上げには高額な設備資金・運転資金が必要です。施設の種類によりますが、100万円程度から高額なケースだと3,000万円程度かかるものまであります。
この記事では、障害者施設立ち上げを検討している方に向けて、具体的な資金と内訳について解説します。また、資金を調達する方法や立ち上げの流れも紹介します。
本記事を参考に、障害者施設をスムーズかつ安全に立ち上げられるようにしてください。
障害者施設の立ち上げに必要な資金
障害者施設の立ち上げにかかる設備資金・運転資金は、入所施設や通所施設であれば1,000〜3,000万円程度、訪問系であれば100〜300万円程度が目安です。
施設のタイプによって立ち上げ資金が異なるのは、利用者のスペースが必要なケースがあるためです。例えば、訪問系の場合はスタッフ用の事務所のみが必要で、利用者のスペースが不要なため費用を抑えられます。
一方で、入所・通所施設は利用者用のスペースと設備の設置も行うため、コストがかかります。
費用項目の内訳
障害者施設立ち上げに必要な資金の主な内訳は、以下の通りです。
⚫️法人設立費
⚫️物件取得費
⚫️内装費
⚫️備品購入費
⚫️消防設備費
⚫️人件費
⚫️開業直後の運転資金
障害者施設は法人として設立しなければならないため、法人設立費用が発生します。また、施設の種類に関係なく物件も必要です。物件取得費は敷金、礼金、仲介手数料、各種保険の加入料などが含まれます。
さらに、備品購入費用は事務作業などで使用する机や椅子、パソコンなどの購入費用です。職員1人に対してパソコン1台を支給する場合コストが高くなるため、必要に応じて中古のものを使用しましょう。
障害者施設の場合、サービスの提供から報酬が入るまでにタイムラグがあるため、開業から2〜3ヶ月先までの運転資金を用意しましょう。
障害者施設立ち上げに必要な資金を調達する方法
障害者施設立ち上げにかかる設備資金・運転資金はさまざまな方法で調達できます。ここでは具体的な立ち上げ資金の調達方法を解説します。自分にどの方法が向いているのか、ぜひ参考にしてください。
個人調達
個人調達には、個人の資産を資金としたり、親族や友人、知人から借り入れる方法などが挙げられます。
ただし、他者からの借り入れは後々のトラブルに発展するケースもあるため、事前に返済条件などを明確にしましょう。
条件が明確であれば、個人調達は資金集めに役立つ方法の1つです。
融資を受ける
金融機関からの融資は、資金調達の中でも一般的な方法です。銀行や信用金庫といった民間の金融機関のほか、日本政策金融公庫のような政府系金融機関からも融資を受けられます。
金融機関から融資を受ける場合、事業の実現可能性を示す必要があります。しかし、事業計画が曖昧では、金融機関は融資してくれません。そのため、確実に融資を受けられるように、事業計画を入念に作り込みましょう。
日本政策金融公庫も活用できる
政府系金融機関である日本政策金融公庫は、主に中小企業や小規模事業者向けの融資を行っています。これから障害者施設を立ち上げようとしている人にもおすすめです。
日本政策金融公庫は、民間の金融機関よりも金利が低く、無担保・無保証で利用できるため、創業初期でも融資の審査に通る可能性は十分あるでしょう。
出資してもらう
株式を譲渡して他の企業から出資してもらう方法もあります。株式譲渡は、譲渡契約を結び、譲渡に伴う対価を支払うだけのため、比較的手続きが簡単です。
ただし、譲渡比率が過半数を超えると経営権を出資者が握るため、どのくらい譲渡するのか慎重に検討してください。
補助金を活用する
国や自治体では補助金を支給しているケースもあります。自治体独自の補助金制度を展開しているケースもあるため、詳しくは施設を立ち上げようとしている自治体に確認してください。
提出書類が多く、申し込み期間も限られているため、時間には余裕を持って申請しましょう。
障害者施設の立ち上げ費用を抑えるポイント
障害者施設立ち上げにかかる資金を少しでも抑えたい場合、以下のポイントが重要です。
⚫️手続きは自分で行う
⚫️業務によっては兼務する
法人の指定申請や建物の用意など、施設の立ち上げにはさまざまな事務手続きが発生します。手続きの外注も可能ですが、費用を抑えるのであればできるだけ自分で行いましょう。
また、サービス管理責任者と管理者のように、兼務できる業務もあります。兼務できれば人件費も抑えられるでしょう。
障害者施設立ち上げまでの流れ
障害者施設立ち上げまでの具体的な流れは以下の通りです。
1.立ち上げる施設の種類を決める
2.事業計画の立案
3.資金調達
4.法人の設立
5.施設の用意
6.人材採用
7.自治体への申請
施設を立ち上げたいものの、何から始めればいいのかわからない方はぜひ参考にしてください
1.立ち上げる施設の種類を決める
障害者施設といってもその種類はさまざまであるため、最初に施設の種類を決めなければなりません。
⚫️居宅介護
⚫️重度訪問介護
⚫️療養介護
⚫️就労移行支援
⚫️共同生活援助
⚫️障害児相談支援
⚫️児童発達支援
⚫️放課後等デイサービス
種類を決める際には、どういったニーズがあるのか、立地条件は悪くないかといった視点で、施設を立ち上げる予定のエリアをリサーチしましょう。また、競合となる施設の有無も種類を決めるうえでは大切です。
2.事業計画の立案
種類を決めたら事業計画を立てます。事業計画は、融資を受ける際などの説明資料にもなるため、読んだ人が疑問点を持たないよう、入念に作り込みましょう。
事業計画書に決められたフォーマットはありませんが、一般的には組織図や経営戦略・目標・方針、具体的な事業内容、運営方法、予算などを記載します。
3.資金調達
事業計画が定まったら、次は資金調達です。資金調達方法は自己資産などの個人調達や融資、出資、補助金などさまざまな方法があります。
また、自己資産を頭金にして融資を受ける、融資で足りない分を補助金と自己資金でカバーするなど、複数の調達方法の組み合わせも可能です。
4.法人の設立
障害者施設立ち上げには、法人格の取得が必須です。株式会社や合同会社、NPO法人、一般社団法人、社会福祉法人など、さまざまな種類の法人形態があるため、自分にあったものを選んでください。法人の種類を決めたら法務局で法人登記を行いましょう。
5.施設の用意
サービスを提供するための施設を用意します。訪問型のサービスの場合、スタッフが作業をする事務所のみで構いませんが、入所・通所型の施設の場合は、利用者用のスペースも必要です。
また、提供するサービスによって施設の設立条件が各自治体で定められているため、事前に確認しましょう。
建物の内装工事が必要な場合は、工事に時間がかかる可能性を考慮して時間に余裕を持って立ち上げ準備を進めてください。
6.人材採用
障害者施設の運営には実務を行うスタッフが必要です。人材の採用ができていないと、次に行う指定申請ができないため注意してください。
また、管理者やサービス管理責任者など、人員に関しても各自治体が配置基準を設けているため、確認したうえで必要な人材を採用しましょう。
7.自治体への申請
最後に自治体に指定申請を行います。指定申請とは事業を始める際に自治体から法律に基づいた事業者であると指定を受けるための手続きです。
指定を受けなければ事業を始められないため、各自治体に確認してください。
障害者施設立ち上げにあたって考慮したいポイント
これから障害者施設を立ち上げようとしている方にむけて、考慮するべきポイントを紹介します。
基本的なポイントですが、リスクを管理し、利益をあげるためには欠かせないものであるため参考にしてください。
利用者の確保
利益を上げるためには、まず利用者を確保しなければなりません。利用者を呼び込む場合、以下のような方法があります。
⚫️チラシ・パンフレット
⚫️ポスティング
⚫️ホームページ
⚫️ポータルサイト
特にインターネットで情報を収集する人が多いため、ホームページやポータルサイトの活用は重要です。
また、チラシを地域の掲示板に貼っておけば、利用を検討している人の目に止まる可能性もあります。
人材の確保
障害者施設を立ち上げる際は、人材の確保も必須事項です。しかし、障害者施設をはじめとした、介護・福祉業界に対してネガティブなイメージを持っている人は少なくありません。
また、飲食業など人出不足に悩む業界の存在も考慮しなければなりません。
優れた人材を確保するためにも、研修制度の充実や時短勤務への対応など、働きやすい環境を整えましょう。必要に応じて、対象年齢の引き上げも検討してください。
経営者は資格はなくても問題ない
人材確保にあたって木になるのが資格の有無ですが、経営者本人は事業に関する資格を持っていなくても問題ありません。
ただし、施設の責任者となる管理者など、現場で働く人に対する資格の条件はあるため事前に確認しておきましょう。
障害者支援サービスの種類の違い
障害者を支援するサービスの種類はさまざまであるため、それぞれの違いを押さえておきましょう。
障がい者総合支援法に基づいたサービス | ・居宅介護 ・重度訪問介護 ・施設入所支援 ・就労移行支援 |
児童福祉法に基づいたサービス | ・児童発達支援 ・放課後等デイサービス ・保育所等訪問支援 ・障害児相談支援 |
提供するサービスも異なるため、リソース等を考慮して選びましょう。
障害者施設立ち上げで失敗しないためのポイント
障害者施設の立ち上げに失敗する原因
障害者施設の立ち上げで失敗する原因の1つが、事前調査が不十分なことです。周囲に既に就労移行支援施設があるにも関わらず、同じ種類の施設を立ち上げると、利用者数が伸び悩む可能性があります。
施設を建てようとしているエリアにどういった競合がいるのか、どのようなニーズがあるのかを把握できれば、差別化を図りやすくなります。
また、介護・福祉業界は、法制度の改正が頻繁に行われるため、業界の最新動向を追えていない人も失敗する可能性が高いでしょう。
法改正への対応は事業者に求められるものであるため、常に動向を把握する必要があります。
障害者施設の立ち上げに失敗しないためのコツ
失敗しないために重要なのが、事業計画書の入念な作り込みです。事業計画書は、施設立ち上げにあたっての指針となるものであり、資金調達や指定申請の際にも欠かせません。
計画書が曖昧だと、立ち上げまでの準備も行き当たりばったりになる可能性があります。そのような事態を回避するためにも、立ち上げを検討しているエリアのリサーチが重要です。
まとめ
今回は、障害者施設立ち上げにかかる設備資金・運転資金について開設しました。障害者施設の立ち上げには入所や通所を伴う施設であれば、1,000〜3,000万円程度、訪問系であれば100〜300万円程度が目安です。
高額な資金をカバーするために、融資や補助金の活用を検討しましょう。しかし、融資や補助金を確実に受け取るためには、入念なリサーチや事業計画書の作成が不可欠です。
本記事を参考に、障害者施設の立ち上げ準備をスムーズで安全に進めてください。
とはいえ、初めての施設立ち上げや、土地活用などは専門的な知識が求められるため、難しいと感じるかもしれません。
福祉施設の新規開設には、不動産(土地)取得から施設建築等のハード面と、資金調達や行政機関への指定申請、スタッフ募集等のソフト面の両面での準備が不可欠です。タカオでは、建築・開設準備を総合的に確認できるようスケジュール表を作成し、開設までの全ての工程で様々なサポートをさせていただきます。
障害者施設の立ち上げを検討している方は、ぜひご相談ください。