介護施設の運営において、さまざまな課題を抱えている方も多いでしょう。介護施設が直面する問題は「人材不足による業務過多」「離職率の高さ」「業務効率化」など多岐にわたります。
そのような場合、介護施設に特化したコンサルティングを受けるのがおすすめです。コンサルティングを受けることで、第三者的立場から課題を見える化して、具体的な改善案を提示してくれます。
今回の記事では、介護施設におけるコンサルティングの具体的な仕事内容や料金相場の目安、コンサルティングを受けるメリット・デメリットについて詳しく解説します。
記事をお読みいただき、介護施設のコンサルティングを依頼するイメージを掴み、経営改善にお役立てください。
介護施設のコンサルティングとは?
介護施設のコンサルティングとは、介護施設運営におけるさまざまな課題を見える化し、具体的な改善策を立案・実行して、課題解決に向けたサポートを行う仕事です。
人手不足によるスタッフへの業務負担の増加や経営改善、入居者の満足度向上など多岐にわたる課題を抱えている介護施設にとって、第三者からの支援の重要性は高まっています。
ここでは、介護施設のコンサルティングの基本的な部分について解説します。
介護事務所などの課題解決に取り組む仕事
介護施設におけるコンサルティングとは、経営改善や現場環境の改善など、介護施設が抱えるさまざまな課題を解決に導く仕事です。
例えば、スタッフの離職率が高い場合は現場でのヒアリングを行い、労働環境の見直しや業務内容の見直しを提案します。
利用者の満足度向上を目指す場合は、スタッフのサービス品質の向上のために、研修プログラムを組んだり、直接指導を行ったりする場合もあります。
このような具体的かつ実践的なサポートにより、施設全体の問題点を改善し、利用者だけでなくスタッフも満足できる環境づくりを実現しているのです。
施設内だけでなく、外部からの第三者的立ち位置の視点を取り入れることで、施設内では気づきにくい問題を発見し、根本的な改善が可能になります。
介護施設におけるコンサルティングの導入事例については、厚生労働省の以下の資料をご確認ください。
〈関連資料〉厚生労働省:「Chapter3 事例」
高齢化社会において介護施設のコンサルティング需要は高まっている
日本は世界的に見ても高齢化が急速に進んでおり、社会問題となっているなかで、介護施設のコンサルティング需要は高まっています。
内閣府が調査した世界中の総人口における65歳以上の割合(高齢化)は、1950年時点では5.1%だったのが、2020年時点で9.3%まで上昇しています。
さらに、2060年には17.8%まで上昇するとされており、今後も急速に高齢化が進んでいくと予想されているのです。
日本については、1950年時点では4.9%と比較的下位でしたが、2020年時点で28.6%、2060年になると38.1%と人口の約3分の1を高齢者が占めることになるとされています。
〈出典〉内閣府:「第1章 高齢化の国際的動向(第1節 2)」
しかし、多くの介護施設が人手不足や経営の厳しさ、入居待機者の増加といった課題に直面しているのが現状です。
例えば、介護報酬や介護保険法などの法改正に対応していく必要がある一方で、現場の人材不足や既存のスタッフの負担増などが、介護施設の安定的な運営の妨げになっているケースもあります。
そのような場合に介護施設のコンサルティングを依頼すれば、介護施設運営の見直しや業務効率化に向けた新しい仕組みの導入、スタッフ教育の強化など、多岐にわたる課題解決の手助けを得られます。
今後の高齢化社会において、こうしたサポートは今後ますます需要が増していくでしょう。
介護施設のコンサルタントの主な仕事内容7つ
介護施設におけるコンサルタントの主な仕事内容は以下の7つです。
⚫️介護施設の開業に関する支援
⚫️営業活動の支援
⚫️現場スタッフの研修
⚫️介護施設の経営改善
⚫️介護スタッフの離職率改善
⚫️介護スタッフの人材採用支援
⚫️介護保険法に基づく実地指導
それぞれの仕事内容について解説します。
介護施設の開業に関する支援
介護施設の開業支援とは、開業前の段階での資金の融資計画や開業後の経営計画の立案など、開業して運営を始めるための幅広いサポートを指します。
介護施設の開業には、自治体への届け出や基準を満たした施設設備の設置が必要です。また、開業を考えている地域周辺で競合施設があるのか、介護施設に求めているサービスなどのニーズ把握なども行ってくれます。
営業活動の支援
介護施設の営業活動支援もコンサルティング業務の一つです。例えば、利用者を集めるための広告の打ち出しやチラシなどを使ったマーケティング、施設見学会などの具体的な施策を実施して、地域住民への認知拡大を目指します。
また、競合施設との明確な差別化のアドバイスも行い、地域の利用者から選ばれる介護施設づくりを支援してくれます。
現場スタッフの研修
介護施設のコンサルティングでは、現場スタッフのサービス品質向上のために、研修プログラムを通じた支援も行ってくれます。
例えば、新人研修やリーダーシップ研修など、スタッフの経験や役職に応じた内容を検討して、即戦力の育成を目指します。
さらに、利用者に対する対応マナーといったソフトスキル面での研修も行われるため、結果的に利用者の満足度向上につなげることが可能です。
介護施設の経営改善
介護施設の経営改善は、主に収益性の向上やコスト削減などを目的とした提案を行います。具体的には、施設の収支状況を分析し、現状の経営で課題となっている部分を洗い出したうえで、必要な対策を立案してくれます。
例えば、施設の稼働率を向上させるために、広告やインターネットを使った認知拡大による利用者増加を狙ったり、無駄な経費を見直してコスト削減したりするなどが代表的な例です。
また、介護報酬改定に対応するための計画も行い、万が一介護報酬引き下げになったとしても経営が安定するように取り組みます。
具体的には、提供しているサービスはそもそも採算が取れているのか、赤字になっている要素がないのか分析したり、人員配置の最適化や消耗品などの仕入れ先を変えてコストを削減したりするなどが挙げられます。
介護スタッフの離職率改善
介護スタッフの離職率改善も介護施設のコンサルティング業務として重要な内容です。介護スタッフが働きやすい環境を作るために、アンケート調査を行い、不満に感じていることや悩みを把握し、具体的な改善策を検討します。
具体的には、シフト調整によるスタッフ一人ひとりにかかる負担の改善、職場内のコミュニケーション強化などが挙げられます。
さらに、キャリアアップ支援のための研修や福利厚生の充実などの新たな取組を立案し、介護スタッフの満足度を向上させることで、離職率低下を図るのです。
介護スタッフの人材採用支援
介護施設のコンサルティングでは、より効果的に人員確保できるような採用支援も行っています。
ただ闇雲に人員を募集しても、定着せず離職してしまい、教育コストが無駄になってしまうでしょう。
長期的に働いてくれる介護スタッフを募集するためにも、適切な採用基準の設定や、求人サイトのような媒体を活用した採用活動などのサポートを実施してもらえます。
適切な方法で人材採用を行えるようになれば、介護施設の人手不足問題を早期解決できる可能性が高まるでしょう。
介護保険法に基づく実地指導
実地指導とは、自治体から派遣される実地指導監督が、介護施設が介護保険法に基づいて正しく運営されているのかチェックすることです。
もし実地指導でルールに違反していることが発覚した場合は、改善報告が必要になったり、最悪の場合自治体からの指定を取り消されたりするなどのペナルティが科されます。
コンサルティングを受けると、介護サービスを行うために適切な人数のスタッフの配置をはじめ、コンプライアンス的な観点でも、ルールを守った運営をするためのサポートをしてくれます。
また、実地指導の結果に基づき、問題点に対しての改善計画の立案や、介護施設運営をスムーズに進められるようアドバイスを受けることが可能です。
適切な運営ができているか不安な施設運営者にとって、介護施設のコンサルティングを受けることは、リスク軽減や長期的に安定した運営を実現することにつながるのです。
介護施設のコンサルティングの料金相場
介護施設のコンサルティングを受ける場合の料金相場を、以下の3つの契約形態で解説します。
◯顧問契約型コンサルティング
◯成果報酬型コンサルティング
◯時間契約型コンサルティング
それぞれの契約形態の料金相場について解説します。
顧問契約型コンサルティング
顧問契約型コンサルティングは、毎月1回〜2回など決まった回数で訪問し、アドバイスや指導を行う契約形態です。経営全般やスタッフのマネジメントの相談に乗るなどのサポートを行います。
顧問契約型コンサルティングの費用相場は、約20万円〜35万円程度です。ただし、サービス内容の充実さやコンサルティングの質、回数などによって費用は変動します。
長期的にコンサルティングを受けられるため、抱えている課題が長引きそうな場合におすすめです。
成果報酬型コンサルティング
成果報酬型コンサルティングは、介護施設経営における特定の課題解決や目標達成を目的に、報酬が支払われる契約形態です。
成果報酬型コンサルティングの料金は「売上に対して◯%」といった形で設定されるため、具体的な料金相場は決まっていません。
結果が出るまでのコストを抑えられる点はメリットですが、結果を出すために無理な人員削減を行い無理やり結果を出すなどの強引な戦略を進めるコンサルタントも存在するため、信頼できるコンサルタント選びが大切です。
時間契約型コンサルティング
時間契約型コンサルティングは、1時間単位や1日単位での作業時間に応じた料金を払ってコンサルティングを受ける契約形態です。
定期的なコンサルティングではなく、必要なときだけスポット的に相談や支援を受けたい場合におすすめです。
時間契約型コンサルティングの料金相場や1時間5,000円〜10万円程度と幅があり、コンサルタントの経験や解決したい課題によって変動します。
コンサルティングを受けたい頻度が多くなってくると、時間契約型コンサルティングの場合はコストが高くなる可能性があります。
その場合は顧問契約型コンサルティングの契約形態に切り替えるなどの方法を取りましょう。
介護施設でコンサルティングを受けるメリット
介護施設のコンサルティングを受ける最大のメリットは、専門的な知見を活かして介護施設経営の課題を解決に導くサポートが受けられる点です。
例えば、介護スタッフの人員不足や離職率の改善、業務効率化に向けた具体的なアドバイスを受けられます。
第三者の観点で分析してもらうことで、今まで経営陣が気づかなかった問題点をピックアップできる可能性があります。
介護現場では、独自の風習やルールが根付いている場合があり、問題を複雑化させていることも少なくありません。
コンサルティングに依頼すれば、これらの問題も整理して、適切な改善策を立案してくれるため、運営の正常化が図れます。
介護施設でコンサルティングを受けるデメリット
介護施設でコンサルティングを受けるとメリットもありますが、デメリットについても理解しておく必要があります。
まず、外部のコンサルタントによる指導に対して、スタッフの反発がある可能性も考慮しておきましょう。
さらに、現場で急にさまざまな業務に対して指導をすることで、外部からの意見に対して「現場を理解していない」と捉えられる可能性があります。
コンサルティングを受ける際にはいきなり導入するのではなく、スタッフへの周知と理解を得ることが大切です。
コンサルティングの適切な利用は、介護施設を長期的に安定して運営するための心強い味方となるため、現場のスタッフと一緒になって問題解決していく意識が重要です。
まとめ
介護施設におけるコンサルティングは、介護施設運営で発生するさまざまな問題解決に対して有効な方法です。
経営陣だけでは思い浮かばなかった経営改善のアイデアも、第三者の観点で分析すれば、新しい解決方法が見つかるでしょう。
その結果、業務効率化やスタッフの質向上が図れて、結果として利用者の満足度向上につながります。
タカオでも、土地活用を中心とした福祉施設の開業支援にも力を入れており、創業45年以上の経験と実績から、地域ニーズに応じた具体的なアドバイスが可能です。
これから施設運営や開業を目指している方は、ぜひ一度タカオまでご相談ください。