土地の生前贈与をする際には贈与税がかかりますが、それ以外にもいくつかの税金や書類の取得費用なども必要です。さらに、司法書士や税理士に依頼すると、代行手数料もかかります。
生前贈与の際には、できる限り贈与税を抑えたいと考える方も多いでしょう。そこで本記事では、土地を生前贈与する際にかかる税金の種類や贈与税を抑える方法、生前贈与の流れについて詳しく解説します。
記事をお読みいただければ、土地の生前贈与の流れや贈与税の抑え方が分かり、負担を少なくしながら次の世代へ土地を譲れます。
ぜひ最後までお読みください。
土地の生前贈与にかかる税金や費用とは?
生前贈与の手続きを行う際には、贈与税以外にも多くの種類の税金や手数料がかかります。主に以下の費用が発生するため、覚えておきましょう。
◯贈与税
◯登録免許税
◯不動産取得税
◯各種必要書類の取得費用
◯専門家への代行手数料(司法書士や税理士へ依頼する場合)
それぞれの費用について解説します。
贈与税
土地の生前贈与で中心となる税金は「贈与税」です。贈与税には「暦年課税」「相続時精算課税」の2種類があります。
贈与税は、1月1日から12月31日までの一年間に贈与された財産の合計額に、基礎控除額の110万円を差し引いた残りの金額に対して発生します。
※暦年課税の場合
〈参考〉:国税庁:「No.4402 贈与税がかかる場合」
例えば、土地の評価額が600万円で、暦年課税制度を使った場合、基礎控除110万円を差し引いた490万円が課税対象です。そこに税率をかけて、贈与税を算出します。
【贈与税のシミュレーション例】
仮に評価額600万円の土地を一度に生前贈与したとします。
基礎控除:110万円
課税対象:600万円 - 110万円 = 490万円
次に、国税庁が公表している税率表を参照します。
〈出典〉:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
490万円だと、「400万円超〜600万円以下」の区分に該当します。例えば、その区分で税率が20%(控除額25万円)だとすると、以下の計算になります。
490万円(課税対象)×20%(税率)=98万円 98万円-25万円(控除金額)=73万円 |
このように、贈与税が73万円ほどになる可能性があります。
あくまでも仮の例ですが、評価額が高いほど税額が大きくなるため、後述する「相続時精算課税制度」や「配偶者控除制度」の活用をした方が、税額を抑えられる場合があります。
また、誰に贈与するのかによって上記早見表の税率は変わるため、実際の税率が知りたい場合は、国税庁のホームページをご覧ください。
登録免許税
贈与によって不動産の名義を変える際には、法務局で所有権移転登記を行います。このときに納めるのが登録免許税です。
登記をする目的によって税率は変わりますが、贈与の場合は1,000分の20、つまり2%です。土地の課税標準額については、原則市区町村役場で管理している固定資産課税台帳に登録されている金額になります。
〈参考〉:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
例えば、1,000万円の土地を生前贈与した場合は、「1,000万円(課税標準額)×2%(税率)=40万円(登録免許税)」となります。
不動産取得税
不動産取得税は、所有している不動産がある都道府県が課す地方税で、不動産を取得したときに支払う仕組みになっています。不動産を取得した方が納税義務者となります。
不動産を贈与された場合でも原則課税対象です。
不動産取得税は何の種類の不動産を取得したのかによって税率が異なります。基本的には4%ですが、土地と住宅については軽減税率が適用されて3%となります。
〈参考〉:総務省「不動産取得税」
例えば、1,000万円の土地の贈与を受けた場合は「1,000万円(課税標準額)×3%(税率)30万円(不動産取得税)」となります。
それぞれの不動産の課税標準額は、各市区町村役場にある固定資産課税台帳に記載されています。
各種必要書類の取得費用
土地の生前贈与に必要な書類は多岐にわたります。主に以下が生前贈与に必要な書類です。
【贈与者の必要な書類】
⚫️登記済権利証
⚫️印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
【受贈者の必要な書類】
⚫️住民票
【その他に必要な書類】
⚫️固定資産評価証明書(名義変更する年度のもの)
⚫️贈与契約書(贈与があったことが分かる書類)
どの書類も数百円で取得できますが、種類が多いため数千円以上はかかる想定で考えましょう。
また、印鑑証明書については発行から3ヶ月以内のものが求められます。3ヶ月を過ぎると再発行が必要になるので注意しましょう。
書類を揃える順番を整理して動けば、生前贈与をスムーズに進められます。
専門家への代行手数料(司法書士や税理士へ依頼する場合)
土地の名義変更(登記)を司法書士へ依頼したり、贈与税の申告を税理士へ依頼したりする場合は、代行手数料が別途かかります。
生前贈与の手続きを司法書士へ依頼した場合の費用は、司法書士事務所によって異なりますが、約5万円〜10万円といわれています。
贈与する不動産が多い場合などは高額になることも考えられるため、正式に依頼する前に見積もりを作成してもらうとよいでしょう。
また、贈与税の申告を税理士に依頼する場合にも別途費用がかかります。こちらも税理士事務所や取得する財産の総額によって報酬が変動します。
さらに、相続時精算課税や配偶者控除などの節税対策を行う場合は加算報酬が加わる場合があるため、登記の依頼を司法書士事務所に確認するのと併せて、確認しておきましょう。
土地の生前贈与にかかる税金を抑える方法と注意点
贈与税を少しでも抑えたいと考えるのは当然のことです。生前贈与にかかる税金を抑える方法として、以下の2つが挙げられます。
⚫️配偶者控除
⚫️相続時精算課税精度
それぞれの制度について詳しく解説します。
配偶者控除
配偶者控除は、夫婦間の贈与において大きな非課税枠を使える制度です。
夫婦の婚姻期間が20年以上で、居住用不動産を贈与または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合に、贈与税の申告をすれば、基礎控除110万円に加えて最高2,000万円まで控除されます。
配偶者控除の制度は贈与税対策としてかなり有効ですが、適用は一度きりになります。また、実際に配偶者が居住用として使用することが条件です。
〈参考〉:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、60歳以上の両親や祖父母が18歳以上の子や孫へ贈与する際に選択できる制度です。
1年間に贈与を受けた相続時精算課税適用財産の価額の合計(課税価格)から、基礎控除額110万円を控除した後、特別控除額(限度額2,500万円)を控除した残りの金額に一律20%の税率をかけて計算します。
しかし、この制度を使うと、将来の相続時にその贈与分を相続財産に合算する必要があります。
もし相続税が発生するほどの財産総額であれば、結果的に相続時に多めの税金を払う展開になるかもしれません。
一度選択すると暦年課税制度へ戻れないルールもあるため、相続税の見込み額などを考慮したうえで使うかどうか判断してください。
〈参考〉:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
土地の生前贈与を行う3つのメリット
土地の生前贈与を行うと主に以下の3つのメリットが得られます。
⚫️希望する相手に確実に土地を贈与できる
⚫️相続税対策ができる可能性がある
⚫️認知症対策になる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
希望する相手に確実に土地を贈与できる
相続の場合は、相続人全員に遺産分割の権利が生じます。思っていた通りの分配にならないこともあり、遺産分割協議が長引けば家族間のトラブルに発展する可能性もあるでしょう。
生前贈与なら、贈与者が元気なうちに名義を変更できるので、確実に指定の相手へ渡せます。
相続税対策できる可能性がある
生前贈与することで、土地を相続するよりも税金対策できる可能性があります。
例として、現在1,000万円の土地を持っており、将来的に2倍、3倍と上がっていくようなケースが挙げられます。
贈与税と相続税ではかかる税率が異なりますが、値上がりした後に相続税を払うよりも、先に生前贈与して贈与税を支払ってしまった方が税負担を下げられる可能性もあるでしょう。
認知症対策になる
認知症になると、判断能力が低下して財産管理が簡単にできなくなるだけでなく、遺言書の作成も難しくなるため、誰が土地を相続するかでトラブルになる可能性が生じます。
そのため、土地の所有者が元気なうちに生前贈与で先に名義を変えておけば、認知症になっても財産移転に苦労しない安心感があります。
土地の生前贈与を行う2つのデメリット
土地の生前贈与は、自分が希望する相手に確実に土地を譲り渡せるなどのメリットがあります。しかし一方で、いくつかのデメリットが存在するため、詳しく解説します。
納税資金がかかる
相続と違って、生前贈与のタイミングで手続きにかかる諸費用や贈与税を支払う必要があります。高額な土地ほど贈与税や登録免許税、不動産取得税などで数十万円単位の出費になるでしょう。
贈与税の申告と納税のタイミングは、財産をもらった翌年の2月1日〜3月15日までに行う必要があります。もし納税期日を過ぎてしまうと延滞金が加算されるため、忘れないようにしましょう。
相続の方が税金がかからない場合がある
財産総額が相続税の基礎控除以下の場合、もともと相続税がかからなかった可能性もあります。さらに、生前贈与すると、相続税における特例制度が使えなくなります。
例えば「小規模宅地等の特例」のような、相続税額が大幅に減額できるケースにおいて、生前贈与してしまうと損をする可能性があるのです。
小規模宅地等の特例とは、土地を所有していた人が使っていた土地を、配偶者や同居していた親族が相続した場合に、土地の評価額を減額してもらえる制度です。最大で80%が相続税から減額されます。
〈参考〉:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
税金対策で生前贈与を考えている方は、専門家に相談して贈与と相続どちらの方法が税負担が少なく済む可能性があるのか、シミュレーションしてもらうとよいでしょう。
土地の生前贈与を行う流れ
生前贈与の手続きをスムーズに済ませるためにも、手続きの流れについて知っておきましょう。
具体的な手続きの流れを知らないまま動くと、書類に不備が出たり、次にどうしたらいいのか分からなくなったりして、二度手間になる可能性もあるからです。
主に3つのステップに分けて解説します。
贈与契約書を作成する
土地を生前贈与する場合は、「贈与契約書」を作成しましょう。贈与契約書とは、財産贈与の際に作成する契約書です。贈与する財産の内容を記録したり、贈与が行われたことを証明したりするために使用します。
民法第549条で「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」とあるように、贈与契約自体は口頭でも成立します。
〈引用〉:e-gov法令検索「民法」
しかし口頭だけの合意だと、後から急に撤回されたり、贈与について書類を残していないことが理由で、相続時に不公平な遺産分割になったりするなどのトラブルが起きる可能性もゼロではありません。
また、口約束だけで書面を残していないと、相続などをきっかけに税務調査が入った際に贈与を受けた証明もできず、贈与者本人は既に亡くなっているため確認もできないといった状況になります。
そのため、生前贈与の際には必ず贈与契約書を作って贈与の内容を明確にしましょう。具体的には、贈与する財産の内容や贈与契約書に記載した日付、贈与の実行日などを記載し、贈与者と受贈者がそれぞれ署名捺印します。
完成した贈与契約書はお互いが保管することになりますが、心配であれば公正証書にする方法もおすすめです。
必要書類を揃える
贈与契約書を作成した後は、生前贈与の必要書類を揃えます。
【贈与者の必要な書類】
⚫️登記済権利証
⚫️印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
【受贈者の必要な書類】
⚫️住民票
【その他に必要な書類】
⚫️固定資産評価証明書(名義変更する年度のもの)
登記済権利証は法務局で取得可能です。印鑑証明書や住民票、固定資産評価証明書はそれぞれの市区町村役場で取得可能です。
種類が多いため、抜け漏れがないようにしましょう。
法務局で手続きを行う
必要書類が揃ったら法務局に行き登記をする必要があります。以下のサイトに登記申請書と記入例が掲載されているのでご確認ください。
法務局:「不動産登記の申請書様式について」
登記申請書に記載する内容は、贈与する土地の登記事項証明書に記載されています。「課税価格」については「固定資産評価証明書」を参照してください。
「登録免許税」の項目には、課税価格に2%をかけた金額を記入します。登記申請書が完成したら、必要書類と併せて法務局へ提出してください。管轄の法務局については法務省のホームページにて確認できます。
法務局:「管轄のご案内」
登記が完了するまでには約1週間〜2週間かかります。登記が完了すれば、「登記識別情報・登記完了証」を受け取って一連の手続きは完了です。
登記完了後は税務署に行き、贈与税の申告をする流れが一般的です。2月1日から3月15日の間に前年度分の贈与について申告する決まりなので、期限を守って行動してください。
まとめ
土地の生前贈与を行うには、贈与税以外にも登録免許税や不動産取得税など多くの費用がかかります。その分、相続税対策につながったり、生前贈与せずに後々家族間でトラブルになることを防げたりします。
しかし、資産状況によっては相続した方が税負担を軽減できる場合もあるため、一度財産状況や相続税にいくらかかる見込みなのか試算してみるとよいでしょう。
もし、自分たちでは生前贈与の手続きが難しいとお悩みの方は司法書士や税理士のような専門家に相談してください。
また、生前贈与後の土地の使い道に悩んだ際は、タカオのような土地活用のプロに相談するのがおすすめです。
タカオでは、土地活用に悩む地主の方を対象に、それぞれの土地に合った最適な活用方法をご提案いたします。
創業40年以上の経験と実績を元に、生前贈与された後の土地を上手く活用していけるようお手伝いいたしますので、土地活用にお悩みの方はぜひ一度タカオまでご相談ください。