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介護施設の立ち上げ前に知っておくべきことは?行政手続き、資金調達、人員の準備方法を紹介

介護施設の立ち上げ前に知っておくべきことは?行政手続き、資金調達、人員の準備方法を紹介

介護施設を立ち上げる際には、行政機関への指定申請、補助金などを利用した資金調達、適切な職員の採用方法などを正しく理解する必要があります。準備することが多くて大変ですね。この記事ではこれらの手続きについて具体的な方法をご紹介します。

介護施設開業の重要なステップとは?

介護施設を開業するには、事業計画の立案、行政手続き、職員の採用など多岐にわたる準備が求められ、開業の予定日までにすべての準備が完了するよう計画的に進めていく必要があります。ここでは、介護施設開業のための基本的なステップを順を追って解説します。

開業準備の全体像を理解しよう

まず、開業までに必要なステップを時系列で整理します。
①事業計画の立案(事業計画書の作成、法人設立、サービス種別)
②行政手続き(介護保険事業者の指定申請)
③資金調達(融資、助成金の活用、ファクタリング)
④職員の採用(有資格者の採用、法定で定められた人員計画)
上記①〜④は並行して進めることが多く、対応が煩雑になりがちです。最初に全体像を把握し、先を見通した開業スケジュールを立てていきましょう。

事業計画の立案(事業計画書の作成、法人設立、サービス種別、開業場所の決定)

介護事業を始めるには、事前に以下3つの準備が必須になります。

・事業計画書の作成
・法人の設立
・サービス種別の決定

一つずつ確認していきましょう。

事業計画書の作成

事業計画書は指定申請、融資を受ける際に必要な書類です。介護施設を「いつ」「どこに」「どのような目的で」設立するのかなど、審査に必要な内容を記入します。
事業計画書を作成するための要素としては「マーケティング」「サービス内容」「資金計画(融資)」が重要です。

法人の設立

介護事業の指定を受けるためには、法人格の取得が必要です。個人事業主では開業ができないため、ご注意ください。社会福祉法人・NPO法人などの非営利法人のほか、株式会社などの営利法人でも開業が可能です。次に、各法人ごとの特徴を見ていきましょう。

画像:法人形態の比較一覧表(地方創生推進事務局)

株式会社

株式を発行して出資者からお金を集め、その資本を用いて営利事業を行う法人形態。最も一般的な法人格。

合同会社

出資者自身が会社執行権限を有し会社の業務を行う、所有と経営が一致している法人形態。

一般社団法人

「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づき設立された、営利を目的としない法人形態。

特定非営利法人(NPO法人)

ボランティア活動をはじめとする市民の自由な社会貢献活動として、特定非営利活動の健全な発展を促進する目的で作られた法人形態。

法人形態ごとのメリット、デメリットについては下記の表でご確認ください。

〈法人形態ごとのメリット、デメリット〉

法人格は目的に応じた選択が重要

たとえば、できるだけ多くの資金を集めたい場合は「株式会社」、株式会社よりも自由な経営を目指したい場合は「合同会社」、非営利で社会問題の解決が目的であれば「NPO法人」など目的に応じた法人格を選択すると良いでしょう。

尚、すでに法人格を持っている事業者が新規事業として介護事業を始める場合は、定款の「事業目的」を変更する必要があるのでご注意ください。

厚生労働省に資料によると、介護保険施設の場合、介護老人福祉施設は社会福祉法人(社会福祉協議会を除く)が9割を超えており、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設では医療法人が7割~8割を占めています。

出典:令和5年介護サービス施設・事業所調査の概況(厚生労働省)P.5

サービス種別の決定

介護保険で利用できるサービス

介護保険で利用できるサービスには、介護給付と予防給付の2つがあります。

大きく分けると次のサービスを受けることが可能です。

出典:公表されている介護サービスについて(厚生労働省)

全国の介護事業所数

2023年の全国の介護事業所数は以下の通りです。訪問看護など「居宅サービス事業所」の需要が高く、事業所数も多い傾向です。各サービスの詳細は公表されている介護サービスについて(厚生労働省)でご確認ください。


出典:令和5年介護サービス施設・事業所調査の概況(厚生労働省)P.5

行政手続き(介護保険事業者の指定申請)

介護事業を始めるには、法律で決められた指定基準を満たし、国(申請窓口は都道府県、市町村)から介護保険事業者として指定を受ける必要があります。尚、サービス種別によって基準が異なりますので必ず事前に確認しておきましょう。指定基準は大きく分けると以下の3つがあります。

・人員基準
・運営基準
・設備基準

上記3つの基準をすべて満たさないと開業は認められず、開業後に指定基準を満たせていない場合は、指定を取り消され施設運営ができなくなる可能性もあるため、開業後も基準を満たすよう注意が必要です。

介護施設開業に必要な書類は?

介護事業所を開業するために必要な書類は約30種類あります。他にもサービス種別によって提出が必要な書類がありますので、厚生労働大臣が定める様式等(令和6年3月15日告示分)でご確認ください。

提出期限に合わせて必要書類を揃え、漏れなく提出することが肝心です。個人でも対応は可能ですが手続きに慣れている専門家のサポートを受けられるとスムーズに準備をすることができます。

申請手続きの流れと注意点

指定申請はWebでの提出が可能です。申請の流れと概要は下図をご参照ください。指定申請を行うために、事前相談や事前協議が必要な指定権者もあります。事前に電話などで来庁日時を予約する必要がある場合もありますので、予め指定権者へのご確認をおすすめします。

介護事業所の指定申請等のウェブ⼊⼒・電⼦申請の導⼊、文書標準化(厚生労働省)

資金調達(融資、助成金の活用)

介護施設開業には多額の資金が必要です。自己資金の準備に加えて、融資や助成金、補助金など外部資金を活用する方法も考える必要があります。綿密な資金計画を立て、どのタイミングでどのような資金調達が必要なのか検討しておきましょう。

自己資金と外部資金のバランス

自己資金が不足している場合、融資や補助金を活用することが一般的です。自己資金の割合をしっかりと考え、外部資金とのバランスを取ることが大切になります。特に融資を受ける際には返済計画をしっかり立て、運転資金が不足しないように注意しましょう。
h3:融資や助成金を上手に活用する方法
融資を利用する際は、利用条件を把握し、施設に最適な資金調達方法を選択しましょう。金融機関からの融資は以下2つの方法があります。
・日本政策金融公庫 国民生活事業
・信用保証協会
日本政策金融公庫国民生活事業では、無担保・無保証人を希望する方向けに、併用できる融資制度も用意されています。融資利率は条件によって異なるので事前によく確認しましょう。
一方、信用保証協会は自治体を介した融資となります。信用保証協会が保証人となり、金融機関から融資を受けることができます。いずれの場合も、自己資金の金額が融資額を決定する材料のひとつとなります。
助成金や補助金は申請手続きが複雑な場合もありますが、正確な情報を集めて申請することが大切です。

資金計画の立て方と予算管理

資金計画を立てる際には、開業前後の支出を細かく見積もることが大切です。特に、初期投資と運転資金のバランスを考慮し、予算オーバーを避けるための適切な管理方法を検討しましょう。

初期費用と経営計画の立て方

事前に無理のない初期費用を用意し、綿密な経営計画を策定することにより、開業後の安定した施設運営に繋がります。更には持続的な事業の成長について見通しを立てることにもなりますので長期的な視点を持って準備を進めましょう。

助成金・補助金の活用法

介護施設を開業する際には助成金や補助金を活用することができます。地域福祉に貢献する施設に対して支給される助成金や、開業支援金などがあり、これらを活用することで資金面での負担を軽減することが可能です。

職員の採用と教育

介護施設の運営にはサービス種別ごとに必要な人員が決まっているため、必ず人員要件を確認しておく必要があります。

必要な資格、経験

下記、厚生労働省の人員配置基準で定められている職員の配置が必要です。たとえば訪問看護サービスでは「サービス提供責任者」の配置が必須となります。
一般的に有資格者の確保は難しい傾向があるため、余裕をもった採用スケジュールが必要です。人員の確保が整わない状態で、次のスケジュールに進むことはリスクがあるということを理解しておきましょう。

出典:人員配置基準等(厚生労働省)P.4

運営に必要な人数

利用者へ良質なサービスを提供するため、前述の有資格者を含め、施設運営に必要とされる人数も法律で細かく定められています。
一例として介護老人福祉施設の場合は利用者3名に対して介護職員を「1名分」配置しなければなりません。
開業後、配置している人員が不足した場合には行政処分(介護報酬の減算、指定取り消しなど)を受けることがありますので、余裕を持った採用計画を立てましょう。

研修とモチベーション管理

職員のモチベーションを高めるためには、継続的な研修やフィードバックが欠かせません。職場環境を改善し、職員が働きやすい状況を作ることが、長期的な職員定着にも繋がります。モチベーション管理をしっかり行うことで、施設のサービスがより質の高いものになります。

地域との連携と地域ニーズの把握

地域との連携を深め、地域のニーズを把握することが介護施設の安定運営には欠かせません。地域密着型のサービスを提供することで、利用者との信頼関係を築き、施設の信頼度を上げることができます。

地域ニーズ調査の方法

地域住民や施設周辺のニーズを調査することは、施設が提供するサービスの質を高めるために重要です。アンケート調査の実施や地域イベントに参加することで、地域住民の意見を直接聞くことができます。

地域とのネットワーク作り

地域との連携を強化するためには、地域住民や他の福祉施設とネットワークを作ることが大切です。地域の行事に参加したり地域住民向けのイベントを開催することで、施設の存在をアピールすることができます。

地域貢献を目指したサービス提供

地域貢献を意識したサービス提供を行うことで、地域との信頼関係を築けます。例えば、地域住民向けに健康教室を開催する、保育園、小学校と交流を行うなど、地域の人々に直接的なメリットを提供することが重要です。

開業後の運営と管理のポイント

開業後は、施設管理や売上管理、職員の管理など様々な業務運営が求められます。これらの管理を効率的に行うことにより長期的に事業を運営することができます。

施設運営に必要な日常管理

開業後は、施設の設備管理が日々求められます。施設の清掃や設備の維持管理、消耗品の管理など、日常的な業務を効率的に行うための仕組み、体制を整えることが大切です。

売上管理と経営分析

売上の管理や経営分析を定期的に行うことは、経営の安定に繋がります。月次報告や年度計画を作成し、目標達成に向けた進捗を管理しましょう。これにより、収支のバランスを保ちながら運営を続けることができます。

クレーム対応とサービス改善

利用者からのクレームに迅速に対応しサービスの改善を図ることが、施設の信頼性向上に繋がります。クレームを受けた際には、原因を確認して再発防止策を講じることが重要です。

まとめ

介護施設の開業には多くのステップがあり、それぞれに準備が必要です。事業計画の作成から開業まで綿密な計画を立てて実行することが成功の鍵になります。必要に応じて専門家の協力を得ながら最短のスケジュールで適切な準備を進めていきましょう。

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