相続で土地を引き受けたけど、活用方法が分からず放置してしまっているケースがあります。。
効果的な活用方法が分からないからといって放置していても、手間とコストがかかっていくだけです。
しかし、相続や贈与で引き継いだ大事な土地を有効活用できると、毎月の収益に繋がるかもしれません。
そこで今回は、「遊休地の活用方法と貸し方」について解説していきます。
手つかずの土地があるオーナー様のための記事となっていますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
遊休地(ゆうきゅうち)とは?
遊休地とは、所有者に活用されずに放置されている土地のことです。
日本では、相続や贈与によって親から子に土地が引き継がれても、活用されずに放置されるケースが多く社会問題になっています。
土地を持っていても活用しないのは、以下のような理由が考えられます。
◯どう利用したらいいか分からない ◯草刈りや清掃などの管理に手間がかかる ◯親の家を引き継いでも有効活用できない ◯そもそも所有者が分からない |
国としても、遊休地が増えている状況に対して、相続登記の義務化や「空家等対策特別措置法」を制定して動いているものの、目立った効果は得られていないのが現状です。
そうはいっても、オーナー様視点でも、遊休地を所有していると、「固定資産税や都市計画税などの税金がかかる」、「草刈りや清掃などの土地の管理」といった手間やコストが発生してしまいます。
そのため、活用や売却、貸し出をして利益を生むような使い方を検討していくべきなのです。
遊休地と似た言葉で「遊休土地」がありますが、その内容は別物です。
遊休土地の条件
一定規模以上の面積を有している |
取得後2年以上経過している |
遊休土地は、都道府県知事が早急に利用促進する必要があると判断した土地のため、対応する優先度が高く通知書が届きます。
通知後6週間以内に、何らかの用途で活用したり売却する計画書を提出しなければなりません。
遊休地の種類と活用事例
遊休地の活用方法は、法律や自治体の条例によって異なり、3つの種類に分類可能です。
1宅地 2農地 3商業地 |
土地の所有者は、指定された活用方法の中からどの用途で土地を活用するかを決める必要があります。
それぞれの種類でどのような活用方法ができるのかを見ていきます。
宅地
遊休地の種類の1つ目は、住宅や店舗を建てられる「宅地」です。
宅地だからと言って、住宅や店舗のどの建物でも建てられるわけではなく、建築可能な建物は都市計画法や条例によって制限されています。
住宅 | 戸建て住宅 2~3階建てのアパート |
店舗 | 飲食店 小売店 事務所 |
どのような活用方法が可能なのかは、不動産登記簿に記載されている用途地域を確認すれば分かるので、一度確認してみると良いでしょう。
農地
遊休地の種類の2つ目は、田や畑などで農作物を育てるための「農地」です。
農地のまま使用する場合は問題ありませんが、住宅用地や工業用地に転用するためには、行政の許可をとらなければなりません。
必ず転用できるわけではなく、行政の判断によっては住宅用地や工業用地として転用できないケースもあります。
農地を住宅用地や工業用地に転用するための条件
農地法に基づく許可が必要 | 農地法4条・5条どちらかを満たす必要があります。 |
立地基準 | 農業に適した土地は転用が難しく、市街化が進んでいる土地は転用許可を得やすい。 |
一般基準 | ①転用事業の実施が確実なこと ②一時転用の場合、最終的に農地へ原状回復すると認められていること ③転用が周辺の農地に影響を与えないことなど |
引用元:産業労働局
転用の手続きには1か月〜2か月ほど時間がかかると言われています。
農地の転用に必要な手続き |
農業委員会へ相談 必要書類の準備 申請書と必要書類を提出 農業委員会による審査 許可の通知 転用許可証の受領 |
すぐに転用できるわけではないので、余裕をもって手続きを進められるようにスケジュールを組む必要があります。
商工業地
遊休地の種類の3つ目は、「商工業地」です。
商工業地は、工場や倉庫を建てる地域であり、産業推進のために税金の優遇措置や補助金の支給をしている自治体もあります。
商工業地でも、工業専用地域以外の「近隣商業地域」「商業地域」「準工業地域」「工業地域」の用途地域であれば住宅を建てることもできます。
ただし、工場や倉庫から出る騒音や大気汚染が住宅に影響を与えることが考えられるので、住環境が恵まれているとは言えないでしょう。
遊休地は「活用」「売却」「貸し出し」どれにすべき?
遊休地をそのまま放置しておくと、税金が発生するだけでなく管理の手間もかかってしまいます。
遊休地を有効活用できると、管理の手間も省けて利益にもつながるかもしれません。
そこで「活用」と「売却」、「賃貸」の3つの方法を紹介します。
入居需要が見込める遊休地を所有しているなら活用
遊休地を効果的に活用できると、第2の収入源に繋がるかもしれません。
遊休地の活用には、以下の方法が挙げられます。
駐車場 賃貸住宅経営 トランクルーム 太陽光発電 |
「駐車場」と「賃貸住宅経営」について、より詳細に解説していきます。
遊休地と駐車場として活用するケース
遊休地の活用方法として、比較的手軽に始められるのは駐車場としての活用です。
コインパーキングのような青空駐車場の場合、整地してアスファルトやコンクリートで舗装すれば運営できます。
このように、駐車場運営を始めるための手間がかからない上に、整地と舗装しているので別の用途にも転用しやすいのが駐車場運営のメリットです。
一方で、駐車場経営は立地次第で収益に大きく影響が出てしまいます。
都市部では需要も大きく時間当たりの貸出費用も高く取れますが、地方では時間当たりの利用料を抑えなければならず、収益が小さくなる傾向にあります。
遊休地と賃貸住宅として活用するケース
「賃貸住宅の経営」も遊休地の活用方法として挙げられます。
賃貸住宅を運営するメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
・毎月の安定収入が見込める ・固定資産税や相続税の節税になる ・資産として次の世代に引き渡しできる | ・初期費用が大きい ・空室リスクがある ・維持管理に費用がかかる |
賃貸住宅として活用して、入居者が付けば1戸当たり毎月数万円の収入が安定して入ってきますし、税金対策にもなります。
一方で、1棟のアパートやマンションを建てるためには、数千万円以上の初期費用が必要です。
賃貸住宅を建てても入居者がつかなければ、家賃収入は入ってこないうえに、毎月の支払いだけが発生するので、人口が少ない地方では特に慎重に計画した方がいいでしょう。
現金化したいなら売却
遊休地を売却して現金化する選択肢もあります。
もともと活用していなかった遊休地のため、売却して数百万円の収入になる可能性があるのは魅力的ですが、もちろんメリットばかりではありません。
以下の表にメリットとデメリットをまとめました。
メリット | デメリット |
・現金化できる ・土地保有に関する税金の支払いがなくなる ・土地管理の手間がなくなる | ・購入希望者が現れず、現金化に時間がかかる ・売却損が出る可能性がある ・売却時に、仲介手数料や印紙税などの費用が発生するケースがある ・愛着のある土地を手放す |
遊休地を売却すると、現金が手に入るだけでなく管理手間やコストがなくなります。
一方で、土地の購入希望者は簡単に見つかるものではないので、長期にわたって購入者を探すことになるかもしれません。
思い入れのある土地を売却した割に、売却時の価格が低く売却損が出る可能性もあります。
一度手放してしまうと元に戻せないので、売却が最善の手段なのかを真剣に考えたうえで判断しましょう。
手軽さと安定収入を得たいなら貸し出し
遊休地を貸し出して安定した収入を作ることもできます。
貸し出しは「活用」や「売却」に比べて、比較的手軽に始められるのがメリットです。
メリット | デメリット |
・毎月収入が得られる ・税金の支払いを減額できる可能性がある ・借主が管理するため、管理の手間が省ける | ・不動産所得が生じるため、所得税の課税対象になる ・一度貸し出しすると所有者の意志だけでは、土地の返却はできない |
中長期にわたって遊休地を貸し出しできれば、毎月安定して数万円〜数十万円の収入になります。
土地の管理も借主が行うことが一般的なので、管理の手間も省けます。
ただし注意点としては、借地借家法が適用されるため一度貸し出してしまうと借主の同意がないと土地は返却されません。
「いざ土地を自分で活用したい」と思っても借主に返却を求めることができないため、土地活用の自由度は低いと言えます。
遊休地を活用する際に押さえておきたい3つのポイント
土地を有効活用して、安定した収益を生み出すためには3つのポイントがあります。
土地の用途を確認する 地域のニーズをリサーチする 専門家に相談して最適な計画を立てる |
それぞれ詳しく解説していきます。
土地の用途を確認する
遊休地を活用する前には、「用途地域」を必ず確認しておきましょう。
土地の用途によって、建築できる建物の種類や大きさが異なってくるからです。
用途地域は13種類ありますが、大きく3つに分けられます。
住居系:住宅を建てることを目的としたエリア 商業系:商業施設や百貨店など、利便性が高いエリア 工業系:工場が多く立ち並ぶエリア |
住居系と一言に行っても、一戸建て住宅が立ち並ぶ「第一種低層住居専用地域」やマンションがメインの「第一種中高層住居専用地域」と様々です。
ご自身の土地が、どの用途地域に属しているかは、国土交通省の不動産情報ライブラリーを活用して確認できるので、ぜひ確認してみてください。
参考:不動産情報ライブラリー
地域のニーズをリサーチする
土地活用には、地域のニーズを把握することは欠かせません。
用途地域や土地の広さだけで用途を決めてしまうと、需要のない施設を建築する可能性があるからです。
特に、建物を建てた後に重要がないことに気づいても、簡単に活用方法を変更することはできません。
どれだけ丁寧に事前リサーチができるかが、土地活用の鍵を握っているといっても過言ではありません。
人口数 集まる人の特徴 交通アクセス 周辺地域の特徴 |
これらの情報をリサーチ・分析して地域のニーズを把握していきましょう。
専門家に相談して最適な計画を立てる
土地の用途やニーズを調査し、どんな活用方法がもっとも利益を生み出すのかを土地オーナーが一人で行うのは簡単ではありません。
土地の活用経験があり詳しい方であれば、一人でできるかもしれません。
もしそうでない場合は、地域情報に詳しい不動産会社や土地活用会社に相談することで、土地オーナーの意向を汲み取った上で活用方法のアドバイスをもらえます。
遊休地の貸し方
遊休地を利益が出る形で貸し出すためには、入念な準備が必要で以下の3つのステップで進めていきます。
遊休地活用のプロに相談する 賃料を決めて借主を探す 契約書の作成・締結 |
それぞれ解説していきます。
1.遊休地活用のプロに相談する
遊休地を貸し出そうと考えたら、まず初めに「遊休地活用のプロに相談」しましょう。
相談先は不動産会社や土地活用会社がおすすめです。
地域の賃貸需要を把握しているため複数の活用方法を提案してくれるからです。
2.賃料を決めて借主を探す
次に、貸し出す賃料を決めて借主を探していきます。
毎月の収益に関わってくる賃料の決め方には、以下の方法があります。
取引事例比較法 | 周辺の取引事例を基に賃料を決める |
周辺の賃料を基に設定する | ポータルサイトで周辺の取引価格を確認して賃料を決める。 |
収益還元法 | 将来、その土地から得られる収益をもとに賃料を決める |
賃料は高く設定しすぎると借り手がつかず、安く設定すると毎月得られる収益が小さくなってしまうので、適切に価格を設定しなければなりません。
賃料を設定したら、借主を探していきます。
不動産会社に依頼して効率的に借主を探してもらう 自身でポータルサイトに掲載して借主を見つけると、コストを抑えられる |
借主を見つけるのは簡単ではないため、不動産会社に依頼するケースが多いです。
3.契約書の作成・締結
借り手が見つかったら、最後に賃貸借契約書の作成と締結をしていきます。
契約書は貸主と借主の権利義務を明確にした書類なので、不備があってはいけません。
基本的な要件が正しく記載されており、関連法規に準拠していることを専門家に確認してもらうことでトラブルの防止に繋がります。
まとめ:遊休地活用の相談は専門業者へ
遊休地を活用せず放置し続けると、税金や管理の手間だけがかかり続けてしまいます。
駐車場や賃貸マンションとして「活用」したり、「売却」「貸し出し」をして、土地を有効活用できると遊休地のデメリットを解消し、第2の収入源になるかもしれません。
しかし、「遊休地をどのように活用できるのか?」「どの活用方法が最もニーズに合っているのか」をオーナー様が調査するのは難しく時間もかかります。
また、国や行政の制度や、法律についてもチェックする必要があります。
しっかり検討する場合は専門業者に相談してみるのも良いでしょう。